偽物の愛し子
デミトリアス神の話から偽物の愛し子がドミナス王国の王都に現在いると聞いた梢。
クロウに乗り、正妃マリアと共にドミナス王国の王都に向かう。
そこで出会った偽物に梢は──
神様の話を総括するとだ。
吸血鬼の私が愛し子なのが気に入らない下級の神々。
適当に死んだ娘を愛し子もどきにしてこの世界のイブリス聖王国に送り込む。
デミトリアス聖王国の連中がいたので崇められる。
ちなみにその娘の性格は最悪。
このままだと世界が破綻しちまうから愛し子モドキから力全部奪ってくれ。
下級の神々は一人残らず罰した。
との事だ。
いま、愛し子達はドミナス王国に居るらしい。
私は正妃マリア様に事情を話し、マリア様と共に、クロウに乗ってドミナス王国へ向かった。
群衆がざわめいている。
「本当にアレが愛し子か?」
「愛し子様は始祖の森にいるはずじゃあ……」
とかなんとか。
デミトリアス聖王国の紋章が入った輩が叫ぶ。
「始祖の森の吸血鬼の愛し子とかは偽物だ! 本物はここにいる御方よ!」
「そう、アタシこそが愛し子よ、褒め称えなさい!」
「その面でよくもまぁ嘘をつくものだ」
マリア様が睨みつけていう。
「何よアンタはおばさん!」
「私は正妃マリア、この国の妃だ」
「お、お妃様? アンタみたいなのが冗談でしょう⁈」
「そしてここに居るのが真の愛し子コズエだ」
民衆がまたざわめく。
『そして我が愛し子を守る者エンシェントドラゴンよ』
ドラゴンにおびえていた民達が跪いて頭をこすりつける。
「何事だ⁈ マリア⁈ 始祖の森に行ったのでは⁈」
「偽物の愛し子が我が国を穢そうとしていると聞いて来たのだ」
「だから私が本物──」
「五月蠅い黙れ偽物」
『偽物黙れー!』
『黙らせちゃえー!』
「アンタは呪われるだろうよ」
と指を指すと、指から黒いものが現れ偽物を包み込む──
「いだいいだいいだい‼」
偽物の愛し子の全身に黒い茨の紋様が浮かび上がり、地面に転がる。
やがてその黒は紅色に変化した。
「やっぱりあの女は偽物だったんだ、正妃様と共におられる方が本物なんだ!」
「愛し子様万歳!」
『お前は下級の神々に騙されて愛し子を名乗った、それを哀れむが性格の悪さは度しがたい、牢屋の中で死ぬまで反省するがいい。まぁ、わずかな時間だろうがな』
クロウがドラゴンのまま喋る。
兵士達が来て、デミトリアス聖王国の連中と偽物の愛し子を連れて行った。
「クロウ、さっき言ってたわずかな時間って……」
『あの呪いは死の呪い、この世界から追い出し、元の世界でまっさらな魂で生まれ変わらせる呪いだ、どんなにどす黒い魂でもこの呪いを受けたら品行方正な性格で生まれるぞ、出生もまともな場所になるし』
「え、私そんな呪いやったの? というかそれ呪い?」
『お前と神々の呪いが合わさっものだ。まぁ一応呪いだ』
「愛し子様、今エンシェントドラゴン様はなんと?」
「へ?」
マリア様の言葉に私はぽかーんとする。
『今はお前にしか聞こえないように喋ってる、適当に神々の怒り故あの娘は命を近々落とす位に言っておけ』
「えーと、神々の怒りであの偽物の愛し子は近々命を落とすとかなんとか……」
「確かにあの呪いは相当重そうだ、愛し子を名乗った偽りの娘に対しての怒りは凄まじであろう」
「はははは……」
神様達怖っ!
と心から今回は思う私であった。
「……案外早く案件おわってね? ていうか私ほとんどやってなくね?」
『緊急事態だったから早く終わって良かっただろう』
「まぁ、そうだけどさぁ……ん?」
「愛し子様どうかお助けを!」
「愛し子様、お慈悲を!」
「愛し子様‼」
民衆が押しかけてきた。
「なななな、何⁈」
「落ち着かぬか!」
マリア様の怒声で、びくりとなるが、落ち着く民達。
「も、申し訳ございませぬ。正妃マリア様……」
「お許しを正妃マリア様……」
「一体どうしたのだ、まさか病に伏せているものがいるとでも言うのか?」
「その通りでございます!」
「何? 無料の治療院があるはずだ、そこで病は治せなかったのか?」
「その治療院が閉鎖してしまい……」
「閉鎖だと、誰が?」
「ブルック・ルズタード大司教様です……」
「ルズタード?」
私はそのファミリーネームに聞き覚えがあった。
「愛し子様?」
「それってデミトリアス教の大司教で、親戚にグレッグ・ルズタード? って奴いませんか?」
その言葉に神官が驚いた。
「は、はい。ドミナス王国のデミトリアス教の元大司教のグレッグ・ルズタードと親類です」
『同じ匂いがするな』
「だねぇ」
私はうんざりした顔をする。
「取りあえず買収された貴族と、ブルック・ルズタード本人と、それに従う奴呪っておいで」
『はーい!』
『よーし呪っちゃうぞー!』
と行った直後、王都の各地に雷が落ちた。
「な、なんだぁ⁈」
『どうやら神々の罰が先に下ったようだな、だが治癒院が再開するのはすぐとは行かぬ、今宵だけ、教会を借りて治療しろ』
「普通に治癒でいいの?」
『よい、お前のそれで大概治る、駄目なときはジャムを食わせろ』
「んー分かったー。クロウが言ってるので今宵だけ教会を使わせてください」
「も、勿論です。こちらへ!」
「私は一度王宮へ戻る、エンシェントドラゴン様、ついてきてはくれないか?」
『梢は無事そうだから構わんぞ、ああ梢金は貰うなよ』
「感謝します」
私はクロウとマリア様別れて、少し古びた教会に行き、待っている人達に治癒魔法をかけた。
皆それだけで、病気や怪我が治り、感謝の言葉を貰った。
お金を貰いそうになったけど断った。
だって私お金に困ってないもんね。
クロウにも言われてたし。
「すまない、遅くなった」
「あ、マリア様、クロウ。お疲れ様です」
治療も一段落ついた私はそう頭を下げる。
「ああ、国王──アルフォンスへの対応も済んだ。アルフォンスは仕事が増えたと嘆いていたがな」
「はははは……でしょうね」
「ところで、王宮に泊まるというのはどうだろうか?」
「あ、自分棺桶じゃないと熟睡できないんで無理です」
そこは断る。
棺桶が寝床です自分、だって吸血鬼だから。
「そうか、ではそろそろ始祖の神森へ行くか愛し子様」
「梢帰るぞ」
「うん」
「愛し子様、有り難うございました」
「いえいえー」
王都の広場に戻り、クロウがドラゴンかすると、私とマリア様は背中に乗り、クロウは飛び立った。
「しかし、ずいぶんとあっさり片付いたなぁ」
『神々曰く、下級神から力を取って人の身に堕としたそうだ。奴らは何もできんよ』
「ならいいんだけど」
『まぁ連中が押し寄せてきても神森には入れん、そのようになっている』
「ふーむ……」
「愛し子様、またエンシェントドラゴン様と内緒話ですか?」
「まぁ、そうですね、はい」
クロウの声はいつでも聞こえるから内緒話かどうか判断できないんだよねぇ。
クロウもそこら辺気遣ってくれても良いのに。
残念。
梢初呪い、無自覚ですが偽物の力も全部奪ってます。
また、王都でのトラブルにも巻き込まれましたが、トラブルの元は神様が呪いました。
その一時しのぎを梢はやり、正妃マリアが裏で動いていました、後の事は王様任せ。
クロウは普段は誰にでも伝わる言葉で話しますが、時折梢しか分からない言葉も使います。
聞かれたら厄介な内容とかですね。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。




