三度目の夏来たりて~王族と婚約者達の来訪~
新しい辛い料理に舌鼓を打つ梢。
その辛さにノックアウトしたアインとアルトリウスの看病に向かう。
会話の中でしんみりしつつ、近いうちにイザベラ達が来ることをクロウから渡された手紙で知らされる。
その手紙から一週間後──
「コズエ様、エルキャラット・ブースのスープにこんな美味い食べ方があるなんて知りませんでした」
「私も『エルキャラット・ブース』っていう辛い料理があるなんて初めてしりました」
ラーメンにして食べたらビンゴだった昨日、同じく辛いのを食べたがっていたレイヴンさんと共に小屋で食べている。
シルヴィーナが水補給係だ。
水を飲むとどぱっと額から汗が流れる。
「よく食べられますね……」
「慣れると美味いんだぞ」
「まぁ、慣れるまでが大変だから無理強いはしないよ」
「助かります」
そう言ってふと思い出した。
「そう言えばアルトリウスさんとアインさんの姿が起きた時見えなかったんだけど?」
「ああ……あの二人もこのスープに挑戦して一口でダウンして医療院でティリオさんに看病されてますよ」
「辛いもんは慣れない人は食わない方が良い」
私の持論だ。
相手に合わせようとして食うのは自殺行為だ。
辛い物に関しては。
「仕方ない、後でシャーベットでも作って三人に持って行くか」
「シャーベットとはアレですか! 夏場に食べたアイスとはまた違ったお菓子ですね!」
この世界では夏場は魔法で凍らせた氷に果実や果実のジュースをかけるかき氷的なのが一般的……というか上層階級の食べ物らしい。
なので、この村では私が夏場にアイスとシャーベットの二つを流行らせた、作り方も教えた。
夏場はハイエルフ達がアイスやシャーベットを作るのが仕事だ。
私はクラフトで作れるので問題はない。
王族の方々元いイザベラちゃんのお母様達にレシピとかを教えたら大層喜ばれた記憶がある。
ブラッドフルーツのシャーベットは吸血鬼やダンピールに好まれている。
夏場に最適だと。
もうじき夏がくる、さて、今年の夏はどんな夏になるのだろうか。
と、今から思いをはせる私だった。
まぁ目下やることは──
「ご馳走様でした」
どんぶりの片付けと──
「じゃあ、シャーベット作ってくる、レイヴンさんとシルヴィーナいる?」
「宜しいのですか? ならレモンのシャーベットが良いですね」
「私はオレンジのシャーベットを!」
「はいなはいな」
そう返事をして自分の家に向かう。
「アイスキャンディーもいいよなぁ、道具さえあれば冷やして何度でも洗えば使い回せるしね」
とふと思いついた事を口にしつつも、私はシャーベット作りに取りかかった。
シャーベットを人数分作り終えると、まずシルヴィーナとレイヴンさんのところへ行く。
小屋を覗いたら居た。
「はい、シャーベットですー」
「有り難う、コズエ様」
「有り難うございます、コズエ様」
「いえいえー」
私は言って手を振り、医療院へと急いだ。
「二人とも、大丈夫……ではないよね」
「久方口にしましたがやはり『エルキャラット・ブース』は嫌いですね……」
「私は初めて口にしたが、こんな地獄のような食い物は初めてだ」
「だから止めましたのに……」
ティリオさんが頭痛そうにしてる。
「そんな二人とティリオさんにこれ」
とシャーベットを渡す。
アインさんとティリオさんはみかんシャーベット。
アルトリウスさんにはブラッドフルーツのシャーベットを。
「すまない……」
「有り難うございます……」
「私も、良いんですか?」
「いいよーそろそろ暑くなってきたし」
「……夏が近いですね、昔は夏と冬が嫌いでしたが、今はとても好きです」
ティリオさんが微笑んだ。
「同感ですね、ティリオ。私もですよ」
アインさんも同意する。
「私もティリオも、帝国では奴隷扱いでしたからね……」
「アインさん……」
「でも、もう良いんです。帝国は滅んだ、私達は開放された。帰る場所はどこか分からないけど、此処に新しくできた」
アインさんは微笑みながら言う。
「私達は幸せ者です、他の皆はもう死んでしまっているから」
「……」
そう言ってシャーベットを口にする、少し解けてしまったオレンジ色のシャーベットを。
「うん、美味しい」
「……ええ、美味しいですね」
「そうだな……」
皆がシャーベットを口にしている。
「コズエ、夏と言うことはそろそろ来るんじゃないか?」
「あーイザベラちゃん達ね」
と話始めるとクロウが入って来た。
「二人とも漸く意識が戻ったか」
「二度と食いません」
「同じく」
「だからティリオが言ってただろう、止めておけと」
「クロウ何の用?」
「これだ」
クロウが手紙を差し出した。
ドミナス王家の印璽がされた手紙を。
封を切って中を読むと──
「……近いうちにイザベラちゃんと、マルス王子とロラン王子、正妃マリア様と側妃クレア様と、ロッズ前公爵、それとマルス王子の婚約者達が来るって」
「相変わらず凄い方々だな」
「まぁ、しゃーないだろうね」
「それにしても婚約者の方々ってどんな方々かな、村でやっていけるかな?」
「さぁ、どうだろうな」
「うーん」
避暑地と思って貰う位しかできないか、うん。
それから一週間が経過し──
『夏ですよー』
『夏ですよー!』
夏の精霊と妖精達が飛び回っているのを見ながら、私は目覚めた。
「ううん、もう夏ねぇ」
季節の妖精と精霊が飛び回っているので春夏秋冬がわかりやすい。
まぁ、妖精と精霊が見える人にとってはね!
「梢、イザベラ達が来たぞ」
「やっべまだパジャマだ!」
私は慌てて夏用のワンピースを探す。
ちょうどレトロガーリィなのとロリータで悩みかけ、ロリータにした。
最近レトロガーリィばっかだったしね!
私ロリータもゴシックロリータも実は大好きなんだ。
貴族風のロリータワンピースを撮りだし、着替え、長いソックスを履き、靴を履き、髪を整え、軽く結う。
すると、クロウに小脇に抱えられ、玄関まで出ると、森の入り口までジャンプした、クロウが。
森の入り口にクロウが着地すると、私も下ろされ、軽く身なりを整えて馬車を見るとイザベラ様がやって来た。
「イザベラ様!」
「コズエ様!」
馬車から飛び降りてイザベラちゃんが私に抱きついてきた。
「会いたかったわコズエ様」
「私もです、イザベラ様」
「今日のお召し物もとっても素敵!」
「有り難うございます」
「相変わらず、素晴らしいデザインだな」
「正妃マリア様、有り難うございます」
「布もいいけど、デザインも良いわ。売りに出せばきっと人気者になると思うのだけれど……」
「済みません、自分よっぽどの事が無い限り森から出ない引きこもりなので」
「そうだな、すまぬ」
「では、案内します」
そう言って馬車に乗った皆さんを案内した。
村入り口付近に馬車を止めてもらい、下りて貰うと、品の良さそうなお嬢様が下りてきた。
「エリザ、此処が始祖の森の村だ」
マルス王子がなんか喋ってる、つまりあのお嬢さんが婚約者で名前はエリザ様?
「ズルいわマルス、貴方私を置いてこの素敵な場所に来てたんでしょう」
「いや、その、イザベラが心配でな」
「ふふふ、分かってるわ。イザベラ様は貴方の可愛い妹君だもの」
あ、こりゃ尻に敷かれてるな。
「エリザさん、マーガレッタさん、マルス様。ここのハイエルフの方からアイスという美味な物を貰いました、食べませんか?」
「ちょっと待て、アンネ! 仮にも側妃なんだからもう少し危機感を……」
「あら、美味しい。マルス様、大丈夫毒なんて入ってませんよ」
「いやそれは分かってるがな……」
「美味しいー!」
「ああもう! マーガレッタはもう少し慎みを!」
マルス王子元いマルス君、将来のお嫁さん達に翻弄されてる。
微笑ましいなぁ。
「あの三人は仲が良いから、私達のような事は起きまい」
マリア様が遠い目をしておられる。
ああ、イザベラちゃんの誘拐&奴隷事件ね……それがきっかけでドミナス王国というか王国の王族様達と交流ができたんだっけ。
「愛し子様、イリスと孫のサフィロはどうしているでしょうか?」
ロッズさんが尋ねてきた。
「元気ですよー二人とも、サフィロ君は大人しい子ですな私達がいると」
「そうですか、そうですか」
「もうそろそろこちらに来るかと、アイスとシャーベット目当てに」
私が微笑んでそう言えばロッズさんは目を細めて笑った。
とても嬉しそうに。
エルキャラット・ブースは凄い辛い料理だと思ってください。
そして慣れない事をしたアルトリウスとアインはダメージを喰らってます。
四人との話の後、ちゃんと梢はシャーベットをレイヴンとシルヴィーナに渡してますよ。
マルスは正式には王太子ですね、国を継ぐ者ですから。
未来の正妃と側妃達に翻弄されるマルスは尻に敷かれるでしょう、良い意味で。
ロッズさんもちゃっかり来ています。
娘と孫目当てで。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。




