ストレス発散には辛いもの!
帝国の逃亡貴族連中の相手をして疲れ切った梢。
ストレスがたまりに貯まっていたせいか、辛いものが食べたくなり、レトルトの激辛カレーを食べる事に。
カレーを食べて満足した梢を見た、他の者達は──
「づーがーれーだー」
私はテーブルに突っ伏した。
「コズエ様、大丈夫ですか?」
シルヴィーナが声をかける。
「何であんなに逃亡者がいるのさ、帝国からの」
「まぁ我が手引きしていたブリークヒルト王国の者達に捕まって全員連行されていったがな、貴族の名前が書かれた本と貴族達を一致させたところ、もう逃亡者はいないようだ」
「よっしゃぁ」
私はもうあの確認作業をしなくていいのだとガッツポーズを取る。
「あーストレスマッハだから辛い者食べたい」
カレー、麻婆豆腐、麻婆麺、担々麺etc……
私は調理小屋を一軒開墾して建てた。
カレーライスを取り寄せるからだ、レトルトの。
匂いで子どもや大人達がダメージ喰らったらいけない。
私は生前から激辛には慣れてる。
久しぶりだから不安が無いわけでは無い、だが私は辛いものが食べたい!
鍋にレトルトの袋を入れぐつぐつ煮込む。
その間に別の鍋でご飯を炊き、氷水を入れたボトルと水を補給してくれる妖精と精霊がふんすふんすと出番を待っている。
ご飯が炊けて、レトルトの袋も温まっている。
ご飯を大盛りによそい、レトルトの中身を流す。
「‼」
辛い奴だ、そうこれだ、これを求めてたんだ‼
一口に口にする。
ガツンと脳みそを揺さぶり、口の中に痛みが走る。
そうだ、この辛さだ!
私はにやりと笑って、カレーライスをがっつく。
カレーを食べえた私は水を飲む。
汗がどぱっと流れる。
私は水を飲み干していく。
「ふぅ、すっきりした」
汗だくになりつつも、すっきりとした気分に浸っているとノックする音が聞こえた。
「はーい」
私はドアを開ける。
「コズエ、探し……うっ⁈ 何だこの匂いは」
「どうしたの……何ですこの匂い!」
「あー辛いもの食べてたの、たまーに食べたくなるんだけど今まで我慢してたからねー」
「何故?」
「まぁ、色々ありすぎて日々に追われてたからたまには休んで食べたくなったの。あ、言っとくけど他の人には食べさせないよ、口が焼けるような辛さだから」
嘘は言っていない。
「そんな物を食べて平気なのか?」
「まぁ、私はね。アルトリウスには特にお勧めしないかな、ニンニク入ってることある奴もあるから」
「……そうか」
「ニンニク入って無くても勧めないって言ってますよね」
「うん、辛いの食べて倒れられると困るから」
そう言って私は小屋を出て鍵をかけた。
「あー汗かいたし、ちょっと風呂ってくるからー」
そう言って自宅の風呂場へ向かった。
「辛いものが好きとは意外だった」
その場に残させた二人は話し合いをした。
「そうですね……」
「確かに母から聞いた辛い料理にはニンニクは入っていることが多い、があの料理ならニンニクはつかわんだろう」
「あの料理?」
「ハイエルフ達やドワーフ達から聞いた事はないか? 『エルキャラット・ブース』と呼ばれる香辛料を使った料理だ」
「あの激辛のエルキャラット・ブース……? 一本煮込むだけで料理が激辛に変貌するというあの?」
「知っていたか」
「動けなくなった子ども達が無理矢理食べさせられた料理ですからね。どんな荒れ地でも育成できる食材の一つですし……」
「お前とティリオにはあまりよくない料理だったか、すまん」
「ですが、コズエは好みそうです、勧めてみましょう」
頷きあった二人はその場を立ち去った。
「ふーさっぱりした」
私は風呂から上がり、ジャージ姿で外に出た。
するとクロウがやって来た。
「梢、大分前に話すべきだったが、今話をさせて貰いたい」
「うん、いいよー」
家の中に入れる。
椅子に座ってクロウが口を開くのを待つ。
「で、話って?」
「以前蘇生薬を作っただろう、アレについてだ」
「何か問題でも? 使ってないけどさ、イリスさんの件以降」
「蘇生薬は吸血鬼以外と、寿命で死んだ者には使用が可能だ」
「吸血鬼は灰になるから?」
「そうだ」
「だからリサは夫の復活を望まなかった」
「な、なるほど……」
「あと、蘇生薬は死した者にのみ有効だ、瀕死の者や仮死状態の者に運悪く使おう者なら劇薬となって即死するぞ、その場合蘇生薬を使っても生き返らない」
「うげー!」
「死んだことを確認するならアイテムボックスに入れるのがいい、生き物は死体ならば入るがそれ以外は入らないからな」
「なるほど……」
「分かったら蘇生薬を持ってる事は秘密にしておけ、いいな」
「はい」
アイテムボックスに二つほど蘇生薬は残っている。
よほどの事が無い限り今後使わないと思う。
「ついでだ、瀕死の者や仮死状態の者に使える薬を教えよう」
「了解!」
と言ってクロウが持ってきた植物を調合するのだが、クラフトでやったが、世界樹の葉が必須な為、貯めておいた分から出して作った。
世界樹の葉っぱって大事だなぁと我ながら思う。
「よし、うまくできたな、使い方は覚えたな」
「勿論ですとも!」
「瀕死の者は?」
「飲ませる!」
「仮死は?」
「嗅がせる!」
「よし、それでいい。仮死の薬は気付けにも使える同じ方法でな」
「うん!」
答え終わった私は疑問をぶつける。
「ところでいつものおじいちゃんのクロウにはならんの?」
「今の我で慣れてしまっている者がいるから、お前の前くらいでしかなれんわ」
「そっかー、エンシェントドラゴンとして威厳ある風に振る舞う必要あるからね」
「そういうことだ」
とか話しているとシルヴィーナが入って来た。
「コズエ様、辛いものがお好きなのですか⁈」
「好きだけど、どうしたの⁇」
あれー?
私シルヴィーナに言ったっけ?
「しかも、口が焼ける程の辛い料理がお好きと‼」
「Hey、シルヴィーナ。それ誰から聞いた?」
「アルトリウスさんとアインさんです」
「あの二人かー」
「辛い料理と言えばアレか、エルキャラット・ブース。」
「えるきゃらっと・ぶーす?」
聞き慣れない言葉に首をかしげる。
「はい、エルキャラット・ブースです! それで料理を作ったので食べてみてください!」
「ちなみに料理は?」
「今回はスープです‼」
「一口味見してから追加したいものがあるんだけど?」
「いいですよ!」
私はシルヴィーナについていく。
私が作った小屋の中にスープはあった。
「なんでこの小屋に?」
「お二人が『コズエが辛いものを食べる為に作った』と思うと仰ってたので」
その通りだよ、鋭いなぁ。
ラーメンが入るようなお椀に真っ赤なスープが半分くらい注がれていた。
私は一口口にする。
あ、これラーメンの麺が合う。
私は急いでアイテムボックスから購入しておいたラーメンの細麺をとりだし、お湯を沸かし、茹でて、湯切りをして、麺を入れる。
そして座って食べ始める。
「~~‼」
これだこれ!
私はそれを食べ始めた。
スープと麺を絡めながら食べていく。
痛みが走るがそれ以上に美味さが濃厚だった。
気がつけばスープも麺も無くなっていた。
「あ゛~~美味しかった」
「……本当にお好きなのですね」
シルヴィーナが目を丸くする。
「ところで先ほど入れたのは?」
「麺だね。合うと思ったんだ。小麦とか使って作るんだけど……」
「なるほど、兄様もより好きになるかもしれません」
「え、レイヴンさんも辛いの好きなの」
「ええ、異常な程に」
「……」
これは辛い物を食べる仲間が増えたかな?
と、思う私であった。
梢は辛いもの好きで、ストレスがたまると辛いものが食べたくなる系です。
そうじゃないときは我慢します。
匂いとか色々あるので。
で、今回出た料理はこの世界の料理と思ってください。
エルキャラット・ブースという調味料を使った料理をエルキャラット・ブースと呼ぶ。
そういう感じです、使うと料理が全部その呼び名になります。
独特の文化の一つです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
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