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新たな生活と、追い返される逃亡者達

宴をやることになり、夜が本番の宴は夜から大盛り上がり。

その宴も酒と肉を飲むだけになった時、ネヴィアが梢に声をかける。

どうやら厚遇に不安になってしまっているようで──





 宴は夜が本番。

 吸血鬼である私の活動時間が夜だから。

 だから宴の日は子ども達はいつもより遅く起きていられるから大はしゃぎ。

 大人は食べ物から飲み物──酒へと移っていく。

「キンキンに冷えたビールは美味いのぉ!」

「この芋焼酎も美味いぞ!」

 ドワーフは酒談義で大騒ぎ、肉を囓りながら酒を飲んでいる。

 吸血鬼とダンピールはブラッドワイン。

 白狐の方々は米酒元い日本酒。

 村の方々はドワーフ同様ごちゃ混ぜ。

 女性陣はワインやフルーツビールを飲んでいる。

 子ども達はジュース。


 鍋はすっかり空になっていたし、米も空、あとは肉を焼いて飲むだけ。


「愛し子様」

 ネヴィアさんが不安げな表情で尋ねてきた。

「ん、何ですかネヴィアさん」

「あの、このような厚遇宜しいのでしょうか?」

「宜しいも何もうちの村じゃ標準ですよ、まぁ毎日宴はやりませんが」

「でも、こんな美味しい食事初めてで……」

「慣れて行けばいいですよ」

「はぁ……」

 ネヴィアさんはなんとも言えない表情を浮かべた。

「あの、私はどうすれば宜しいのですか」

「村でランスロットさんと自活できるように努力してください。それまでは補助しますので」

「はい……」

「愛し子様、私がネヴィア様のお世話を致します」

「ランスロット、それでは駄目よ、私も自立しなくては」

「ですが……」

「そうだよー二人の関係は今は対等なんだから、助け合わなきゃ」

「ですが……」

「ランスロット、お願いよ」

「畏まりました……」

 支え合うと同時に騎士として身の回りを世話してきたのだろう、ランスロットさんは。

 でもそれでは駄目なのだ、二人力を合わせて自活して貰わねば。



 そして宴は夜中になる頃に終わった。



 吸血鬼とダンピール以外は皆床につくため戻って行く。

 吸血鬼とダンピールは夜を謳歌する。

 私は──


「畑の整備相変わらず大変だ」

 そう言いながら鍬などで整備していく。

 雑草は手で抜く。

 田んぼは合鴨農法でシルヴィーナにやって貰っている。

 日中は私寝てるからネ!


「よし終わった」


 私も夜の時間を謳歌する。

 短い時間だけれども。


 なんか村も拡大、居住区も拡大していってるし、広くなりつつあるな開拓地、とか思いながら朝日が昇るであろう時間帯になったの棺桶にはいってお休みする。


 人間だったときは寝るのに苦労したけど、今は苦労せず熟睡できる。

 これほど嬉しいことはない。





「ランスロット朝食はどう作ればいいのかしら?」

「分かりません、貯蔵庫のものは使って良いとしか……しかしあれだけあるとどれを使えばいいか悩みますね」

 どう生活をしたら良いのか困り果てる二人。

 用意されていたのは今までカビたパンと腐ったスープだったが、それでも料理をするという手段が無かった二人にはかなり切実な問題だった。

「何かお困りですか?」

 シルヴィーナが声をかける。

「シルヴィーナ様、ごきげんよう」

「シルヴィーナ様、実は朝食を作ろうという話になったのですが私共料理をした事がないので……」

 シルヴィーナは事前の二人の情報を梢から聞いていたので微笑み頷いた。

「では私と一緒に作りませんか?」

「宜しいので?」

「ええ」


 貯蔵庫から必要な野菜や肉と焼く前のパン生地を手に取る。

 パンは釜番をしているアインに任せ、シルヴィーナは二人の自宅で二人に料理の仕方を一から教えた。

 切り方、皮のむき方、初歩的なものを二人はすぐに覚えた。

 そしてスープを作った、塩と胡椒で味付けして。

 ランスロットに板を持たせ焼きたてのパンを此処にのせて貰うように言った。

 ランスロットは釜のある場所に戻り、焼きたてのパンを板に乗せて貰い、家に戻る。

「じゃあ、食卓を囲んで、食べましょうか」

 シルヴィーナが椅子に座って言うと、二人も椅子に座った。

「美味しい……」

「ええ、昨日の宴とはまた違いますが……このスープもパンも美味しいです……」

「こんな食事頂いてもいいのかしら?」

「良いのですよ、お二人はもうあの国とは関係ありませんから」

「腐ったスープもカビたパンも食べる必要はないのですな」

「はい」

 シルヴィーナは微笑みつつも、帝国では同胞に対して血も涙もない扱いを平然とできるのだなと怒りを覚えた。


 幽閉されて今までまともな食事を与えられなかった皇女。

 のし上がったが排除され、同じような食事しか与えられなくなった元平民の騎士。


 自分達の都合の良いようにしかできないのがロガリア帝国だったのだろうとシルヴィーナは思った。


 かつて、カインド帝国が身勝手に神々の愛し子を殺したように。

 その身勝手さを継承したロガリア帝国はその身勝手さ故に滅びた。


 帝王の血を引く者はここに居る、だがそれを知る者はこの村と各国の国王など重鎮だけ。

 シルヴィーナが敬愛するコズエが言ったように、今ここから新しい人生が二人を待っているのだ。


 帝国は滅びた。

 ここに居るのは帝王の血を引くだけの娘と、その騎士だった男。


──コズエ様ならそうおっしゃるでしょうね──


 シルヴィーナは淡く微笑んだ。





「ふぁああ、お早う」

「お早うございます、コズエ様」

 シルヴィーナが棺桶に手を添えて屈んでいた。

 私は起き上がり訪ねる。

「二人はどう?」

「教え甲斐があります、ランスロットさんには狩りの手伝いを、ネヴィアさんには畑仕事などを手伝って貰ってます」

「そっか、人手が増えたのは有り難い事だね」

 私は欠伸をする。

「さて、じゃあ起きますか」

 そう言って起き上がり、ブラッドフルーツを囓る。

「コズエ様、もう少し食事にお気遣いを……」

「帝国から逃げた貴族達がこの森に来ないとは限らないからね、貴族連中はお断りしたい、できれば」

「そうでしょうね……」

 半数に逃げられたと行っていたのだ、もうちょっと頑張って欲しかったのが本音だ。


 まぁ、多分包囲網が完成されたの知って逃げる準備して逃げたんだと思うけど。

 何処に逃げても針のむしろだろう、帝国の貴族は。


 大人しく捕まっていた方がまだマシかもしれない。

 処遇はどうあれ。


「梢、起きているか」

 小さくなったブラッドフルーツを口に放り込み租借して返事をする。

「はーい何ー」

 クロウが呼ぶので服をよそ行きの服に着替えながら玄関に向かう。

「貴族の連中が入り口を塞いでる、どうにかしたいがお前の一言が欲しい」

「私鑑定できないよ?」

「良い、悪い程度は区別がつくだろう?」

「まぁ、うん」

「では行くぞ」

 苦労に引っ張られて森の入り口も行く。


 貴族の馬車が沢山、でもどれもこれも黒い薄気味悪い靄がまとわりついてて正直関わりたくない。


『愛し子様、ここには僕らが認めるようなのは居ないよ!』

『全員強欲な連中ばっかり!』


 妖精と精霊の言葉もあり私は行った。


「お帰り下さい、この森は貴方達を受け入れない」

 騒ぎ出す貴族達の前でクロウがドラゴンの姿になった。

『我はエンシェントドラゴン、逆らえば命はないと思うが良い』

 と軽く火を吐き出すと、貴族達はきびす返して馬車を走らせ逃げ去っていった。


『やれやれ、当分は続くだろうよ』

「えーマジで、鬱陶しいなぁ」


 私は嫌そうな顔をして、肩を落とした。







ネヴィアとランスロットはシルヴィーナの手を借りて少しずつ村に馴染んでいくでしょう。


始祖の森から逃げ出したロガリア帝国の貴族達は捕まるか、呪われるかの二択でしょう。

梢の手をあまり煩わせない為、クロウは各国に根回ししています。

実は。


ここまで読んでくださり有り難うございました!

次回も読んでくださると嬉しいです。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

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