世界樹達の祝福
梢が目覚めるとありとあらゆる植物が花を咲かせて居た。
その原因はユグドラシルへの「祝いの花」がである事をクロウから知らされる。
それで世界規模の豊作が決まったとクロウが説明する。
そしてクロウは世界樹ユグドラシルに会いに行くよう梢に言う──
「なんじゃこりゃああああああああああああああ⁈⁈」
村が騒がしいと思って出て来てみればありとあらゆる花が咲き誇っていた。
雑草と言われるような小さな花も、咲き終えた桜の木も、まだ花が咲く時期が先の藤の花も言ってしまえば村中の花々が咲き誇っていたのだ。
「な、なにこれぇ⁈」
「ユグドラシルが世界樹ユグドラシルへと生長した祝いの花だな」
クロウが薔薇の花を撫でていった。
「祝いの花」
「ああ、世界各地で同じ現象が起きているぞ」
「世界規模!」
「世界樹達が木々や草花に花を咲かせよと命じた、結果がこれだ」
「うーん、喜んで良いのか、悪いのか」
私は首をひねる。
「喜べ、今年は世界規模の豊作が決まった、この村では若干関係無いがな」
「うんそれは世界規模なら喜ばしいね」
「数千年に一度あるかないかの大豊作だ」
「ん? ちなみに、今のユグドラシル何代目?」
「三代目だな」
Oh、予想以上にこの世界の歴史は古かった。
「ユグドラシルの元へ行ってみると良い、愛し子のお前しかもらえぬものがもらえるぞ」
「⁇」
言われるがままに、私は世界樹ユグドラシルのある場所に向かった。
『愛し子、来てくれましたか』
「う、うん」
『貴方に渡したいものがあります、手を』
私は手を前に突き出した。
すると輝く、花のような物体がふわりふわりと落ちてきた。
蓮の花のような形の物体に、真珠のようなきらめきの球体が入っているなんとも不思議なものだった。
「ユグドラシル、これは何?」
『これはマナの塊、ユグドラシルの結晶花です』
「マナ?」
『マナは魔法だけではなく、大地の豊かさにも関わります。もし愛し子様が、マナが枯渇した場所を見つけた場合、それに水をかけて雫を垂らせば、その土地のマナは復活します』
「……こんな大切そうなもの私に託していいの?」
『いえ、これは愛し子様にしか託せません。他の方は触れないんですよ』
「そうなの……」
『ただ、使う機会が無いことを私は望みます』
「うん、私も」
『また、来て下さい。愛し子。私の母』
「うん、また来るね。ユグドラシル、私の大切な子ども」
そう言って私は村へと戻った。
クロウの家に寄り──
「無事に貰うことができたか」
「無事って、貰えない場合もあるの?」
クロウはワインを飲みながら言う。
「まぁ、たまにな、世界全体のマナをユグドラシルが担うような事態になるとあげるどころではないからな」
「それって瘴気?」
「よく分かったな」
「当てずっぽうだったんだけど……」
「まぁ、瘴気に完全に汚染された土地は草木も生えん」
「……」
「ロガリア帝国がこれに少々近いな」
「なるほど……」
「助ける気は?」
「今のところないよ、アインさんやティリオさんを苦しめた国だからね」
「だろうな」
「でも、侵略行為とか誘拐行為をしてるんでしょう、そこをどうにかしたい」
「それは妖精と精霊と我がなんとかしてきた」
「え、本当?」
「国全体を呪いの茨で覆っておいた、誘拐されてきたものだけは茨が自動で動き出られることができる」
「隷属の首輪とか指輪とかできるの、私だけなんでしょう?」
「そこは安心せよ、我もできる」
「おい、できるんかーい。なら最初からやってよ!」
「茨の通路を通った際に首輪か指輪が壊れ自由になり、また妖精と精霊の浄化作用で瘴気まみれの体も綺麗になるようにした」
「やれるなら早くやってよ」
私はむくれる。
「其処まで精霊と妖精達の力が貯まっていなかったのだ、だが、世界樹ユグドラシルが前の世界樹ユグドラシルよりも強いマナを持ち妖精と精霊達に分け与えている事で実現した」
「なんなのそれー」
私は机に突っ伏しごろごろする。
「梢、お前がユグドラシルを世界樹ユグドラシルへと生長させたから我らがお前が寝ている間にできたのだ、今頃帝国は孤立、奴隷達も逃亡済みだ。神罰もまた下るだろう」
「ぐおおお、私が寝ている間になんか大きな事が起きていた」
頭を抱える。
「まぁ、お前がすることは──特にないな、いつも通りスローライフ、とやらを堪能しておけ」
「あーい……」
「さて──ん?」
「ねぇークロウ、聞いた話では帝国は孤立なんだよねー……どうして森の入り口に居るの帝国の連中」
森の入り口の光景が私の目には映っていた。
帝国の紋様
「うん良く外に居た連中だろうな、失敗した」
「追い返そう」
クロウと頷きあい、外へ出ると、シルヴィーナとアルトリウスさん達が居た。
「帝国か?」
「そうだ」
「全くこの神森に来て……何をしようと」
「取りあえず、撃退しよう」
森の入り口に六人で向かう。
首に隷属の首輪をつけられた奴隷達と、騎士、兵士、それから偉そうな奴。
私の知識不足だが貴族っぽくはある。
「私はロガリア帝国の貴族グラッツェル・グラウニー侯爵だ! この森にいる愛し子を引き渡し、村の恵みを全て我らに寄越せ」
はい強欲ー!
強欲な連中は碌でもないのが確定している。
「五月蠅い、知るか今すぐくたばれ、帝国に帰れ」
私は中指を立てるが、連中は意味を理解していない、というか誰も理解していない。
私は奴隷の壁に突撃し、首輪を風魔法で破壊して飛び上がり、元の場所に戻る。
奴隷達の浄化も済ませている。
奴隷達は頷き合って逃亡を開始した。
「待て、逃げるな‼」
「グラッツェル・グラウニー侯爵と名乗ったか?」
後ろから声がした、レイドさんとライガさんだ。
「何者だ‼ 貴様等」
「お初にお目にかかる、レイド・エフォドスと言う者だ」
「私はライガ・エスペルト」
「あのエフォドスと、エスペルトだと、皆心の臓を狙え! 討ち取って名を上げよ!」
騎士と兵士達が雄叫びを上げる。
穏便に帰っていただくという選択肢は無くなった。
恨めしく二人を見るが、二人は戦えることに生き生きとしているようだった。
「もう」
レイドさんの剣が騎士の剣を砕く。
ライガさんの槍が兵士達をなぎ払う。
「ええい、役立たずどもめ!」
「役立たずは貴様もだ」
クロウが司令塔である貴族の背後に立っていた。
ごきゃり
Oh、ヤバい音。
バタリと倒れ込んだ貴族サマと、兵士騎士達を馬車達に押し込むと、クロウは転移魔法とやらでロガリア帝国に送り返した。
「やれやれ、面倒事がしばらく増えそうだ、風の精霊と妖精が各地で活動していた帝国の貴族、兵士達に始祖の神森の愛し子を国に連れてくるように命じたそうだ」
「うへぇ、まだまだ続くのこれ」
「まぁ、こっちには過剰戦力があるしな」
「まぁ、そうですね」
「次いでだ、明日の日中我はブリークヒルト王国の王宮へと向かう」
「え、私は?」
「寝てろ。我一人でいい、お前達はこの森の守人として警備を頼む」
「「「はい!」」」
うーん、日中お目覚め組は頼りになるなぁ。
「梢、お前はもう休め、疲れただろう」
「あ、うん」
クロウに言われるがままに、私は自宅へと戻り棺桶に入る。
「もう厄介事が無いといいなぁ」
ただでさえ、色々な事が起きているのだ。
「ロガリア帝国革命が起きちゃえばいいのに、それか他の国に占領されればいいのに」
そんな事を呟いて、私は目を閉じた。
翌日、とんでもない来訪者が来ることも知らず。
梢とんでもないアイテムを貰いましたね。
でも多分宝の持ち腐れな予感。
そしてロガリア帝国の連中との遭遇。
血気盛んな二人にげんなりな梢です。
梢はロガリア帝国に嫌気がさしています。
アインや、ティリオの件だけでなく、今回の件以外でも。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
イイネ、ブクマ、誤字報告等有り難うございます。




