菓子作りとユグドラシル
夕方梢が目覚めると部屋にシルヴィーナが入って来た。
吸血鬼の一家、四名の奥方から菓子作りを教えてほしいと言われていたのを思い出しシルヴィーナに案内されてアエトス一家の屋敷に向かう。
そこで奥方達に菓子作りを教え──
「ふぁああ……眠い」
「コズエ様、お目覚めになりましたか?」
「うん、今起きた……」
シルヴィーナが部屋に入って来てそう言うと私は棺桶から出てジャージに着替えようとした。
「あ、コズエ様。吸血鬼の奥様達が菓子作りの教えて欲しいと仰ってたじゃありませんか」
「あ、そうだった、ちょっと畑仕事してから行くから待ってて」
と言って猛スピードで畑仕事と聖獣のお世話と副産物の回収と、貯蔵庫の確認を行い、家に戻って着替えて、シルヴィーナに案内されるがまま、アエトスさんの屋敷へと向かった。
「愛し子様、待っていました」
「愛し子様、宜しくお願いします」
「愛し子様、お願い致します」
「お願いする、愛し子様」
ヴェロニカさんたちは食堂で待っていた。
「材料出しますんで少々お待ちください」
私はブラッドワインと砂糖と、ブラッドフルーツと粉ゼラチンをアイテムボックスから出した。
「粉ゼラチンが必須なんですが、これの入手手段は私しか今持ってないので欲しかったら言ってください」
「「「「わかりました」」」」
私はそう言ってブラッドワインとフルーツ、砂糖、粉ゼラチンを使ってゼリーを作り始めた。
ブラッドフルーツは細かくかっとして置いたのをいれる。
粉ゼラチンは水でふやかしておく。
ワインを鍋で煮て沸騰させる前に火を止めて、粗熱を取り砂糖で味付け。
それをカットしたフルーツの果肉入りのカップに入れて、冷却庫でしばらく冷やす。
ロシアンクッキーの方は以前同様の作り方で教えた。
ブラッドフルーツのジャム作りから色々と。
ヴェロニカさん、レベッカさん、フロウさん、私が試食。
レラさんは人間だから口には合わない。
「おや、こんなに美味いとは」
「本当だわ……これならあの人にも作ってあげたい」
「美味しい……」
「喜んでくれるかしら……」
「喜んでくれると思いますよ、美味しくできましたし」
そう言って焼いたクッキー達とゼリーを皆さんが持ってきたマジックバックに入れて持って帰るのを見送った。
「住むお家、全員決まったんですね」
「全部同じ型の屋敷だからということでくじ引きで住む場所を決めたのだよ、愛し子様」
ヴェロニカさんが言う。
「平和的ですね……」
「じゃないと決闘で決めようなんていう武闘派が二人もいるからな」
「Oh」
そういや、そうだった。
「それにしても、あのような菓子まで作ってしまうとは、夜の都で出したら売れるだろうよ」
「え、お菓子とか無いんですか?」
「ない、ブラッドワインとブラッドティーをたしなむのが精々さ、ダンピールなら人間の菓子が食えるがな吸血鬼はそうもいかん」
「へぇ~~」
「まぁ、実家の連中に教えてやるつもりは無いがな。我が子達を出来損ない呼ばわりされたんだ」
「酷いです!」
シルヴィーナが怒る。
「だから、この村で受け入れてくれた事を感謝している。コズエ様。貴方は確かに愛し子だ」
「はぁ……」
取りあえず、ヴェロニカさんの実家の連中どうなるんだろうなーとか考えていた。
「母様、ただいまかえりました!」
「かあさま、ただいまかえりまちた!」
「おお、フレアにミラ、遊べたのかい?」
「はい! 獣人の子ども達って凄いですね!」
「だろうな」
「わたしはままごとしたの」
「そうか。じゃあお菓子を用意してあるから手を洗って来なさい」
「はい!」
「はーい!」
フレア君とミラちゃんは元気よく洗面所へ向かった。
「さて、菓子の支度をせねばな」
「では、私はこの辺で」
「では」
シルヴィーナと共にアエトスさんの屋敷を後にする。
「さて、これからどうしよう」
「あの。ゼリーって他の果物でも応用できますか?」
「勿論、作ってあるから食べてみる?」
「はい!」
私はシルヴィーナと共に家に戻る。
冷却庫からミカンゼリーを取り出す。
「はいどうぞ」
「わぁ! いただきます!」
シルヴィーナはミカンゼリーを口にした。
「美味しい、柑橘類の甘酸っぱさがちょうど良いゼリーですね!」
「でしょう?」
「私も色々なゼリー作りたいなぁ……」
「はいこれ」
私は粉ゼラチンの箱を渡す。
「これって……」
「粉ゼラチンが入った箱、使い方は分かるよね」
「──はい‼」
シルヴィーナは嬉しそうに笑った。
「やれやれ、私もお人好しかな」
そう言いながらユグドラシルの苗木を植えたところに水入りじょうろを持ってやってきた。
あと、アイテムボックスに肥料。
「ってうおお⁈」
ユグドラシルの苗木は普通の木、街路樹レベルに生長していた。
「凄い、まだ時間そんなに経ってないのに……」
私はそう言ってから木を撫で、水を上げ堆肥を上げた。
「お願いだから育ってね、ユグドラシル……」
『……ごさま……』
「ん?」
声が聞こえた。
『愛し子様……』
「もしかしてユグドラシル?」
『はい、貴方と妖精と精霊達のおかげでここまで短期間で生長できました』
「それは良かった」
『愛し子様、私に愛情を注いでください、そうすればもっと早く大きくなれます……』
「あ、愛情をそそぐ?」
どうやるんだろうと思いながら木を撫でる。
「早く大きくなぁれ、立派な立派な大樹になぁれ」
『♪……』
嬉しそうに葉っぱが揺れた。
私は同じ言葉を繰り返しながら、もう一度水をやり、堆肥を加える。
『心地よいです』
「そう、良かった。なるべく来る来るように努力するから大きくなってね」
『はい♪』
ユグドラシルは嬉しそうに言った。
「梢どこに行ってた?」
「ユグドラシルのお世話です」
「そうか、ならいい」
「?」
クロウの言葉が引っかかった。
「何かあったんですか?」
「特にない、ああ武闘派馬鹿二人が広場で決闘しようとしてたから止めてチェスで決着つけろと言っておいた」
「はは……」
レイドさんとライガさんを馬鹿二人と言えるのはクロウ位だろう。
私に言う勇気はない。
「あと、今度からレイド達を夜の狩りに連れて行くことにした」
「え?」
「力も余ってるし、村人の食料を調達にはうってつけだ。報酬はお前のブラッドフルーツとブラッドワインとブラッドティーの茶葉にさせてもらった悪いがな」
「いえいえ、別にいいですよ」
「そうか、なら良かった」
クロウは笑う。
「向こうもタダでブラッドフルーツやらを貰うのは罪悪感があったらしい。だから狩りに出れるものは出て、畑仕事ができるものは畑仕事を手伝い報酬を与えることにした」
「まぁ、それが健全だよね」
よくよく考えると。
「さて、今日の晩ご飯作りますか」
「今日の晩飯は何だ?」
「カルボナーラ」
「かるぼなーら?」
「できたら持って行くから家で待ってて」
「ああ」
クロウは楽しげに歩いて自分の家のある方へと向かっていった。
私はチーズ、牛乳、卵、オリーブオイル、ベーコン、胡椒などを用意し。
カルボナーラを作る。
まぁ、好きなのはスパゲッティナポリタンだが、ケチャップにはニンニクがあるからカルボナーラにした。
ニンニクさえ入っていなければ……!
「皆の分はできたし、書き置き残してクロウに持って行こう」
アイテムボックスに山盛りのカルボナーラの乗った皿を入れ、その場を後にする。
クロウの家に入る。
「クロウ、ご飯作ってきたよ」
「ああ、助かる」
「あら、いつものミニエンシェントドラゴン姿でおじいちゃん風な口調じゃないのね」
少し驚いた。
「ああ、まだ我の事をよく知らぬからなあの者達は」
「ふーん……あ、これがカルボナーラね、フォークで食べて頂戴」
「分かった」
「あ、そうだそうだ。後で聞きたいことあるからまた来るね」
「? ああ、分かった」
クロウの家の扉を閉めて、渡しは自宅へ帰還。
リサさん以外が食堂の椅子に座っていたが、誰も食べてない。
リサさんの分は食べたのか食器がない。
「あれ、食べないの?」
「君がきてから食べようと思った」
「ええ、そうです」
「はい」
「──では皆で食べましょう」
そう言って私は椅子に座り、食卓を囲み、食前の挨拶をしてからカルボナーラを口にした。
久しぶりのカルボナーラは美味しかった。
奥様達は我が子(吸血鬼の子と、ダンピールの子)等に菓子を振る舞う為に吸血鬼の梢から菓子作りを伝授する為に色々を教えました。
ヴェロニカ曰く、夜の都でも流行りそうだと言われる代物、それを作れるのはクラフト能力とそれを使う梢の思考能力があってのことです。
そして植えたユグドラシルの苗木は街路樹くらいに生長していました。
最初に出会ったユグドラシルになるのはいつでしょうか。
そして裏話ですがカルボナーラじゃなくナポリタンにしようかと思ったんですが、ケチャップってニンニク入ってるからアルトリウスが食えないんですよね、梢は平気ですけど。
調べたら作り方でニンニク入ってました、ビックリ。
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