アエトス一家
アエトス一家が村にやって来て三日が経過した。
父親で、人間であるアレックス以外は交流があまり進んでいなかった。
家で遊んでいたらしい子ども等は、家の中は飽きたといい外で遊ぶことを希望する。
見張り付きで、とクロウがそれに釘を刺し──
アエトスさん一家がこの村で暮らし始めて三日が経過した。
まだ村人との交流はない、旦那さんであるアレックスさん以外は。
三日しか経っていないがアエトスさん一家に取っては嬉しい変化があったようだ。
この村で私が作ったブラッドワインなら飲める。
その結果アレックスさんの血を必要としなくなった。
菓子で無理矢理空腹をごまかす必要もなくなったし、食事も楽しくできているようだ。
「愛し子様」
アレックスさんが声をかけて来た。
「はい、何でしょう?」
「そのですね。子ども達が屋敷の中で遊ぶのは飽きたと言って外に出してあげたいんですが宜しいでしょうか?」
「うーん、そうですね良いですよ」
『その代わり、監視はするのだぞ』
ドラゴンの姿のクロウが現れ、アレックスさんに釘を刺す。
「わかっております」
次の日の夕方──
フレア君とミラちゃんが運動公園で遊んでいた。
それをルフェン君達がじーっと見つめている。
「ルフェン君どうしたの?」
「んーちょっと様子見」
「気になるなら声をかけてみればどうかな?」
「コズエ様が言うなら」
ルフェン君が二人に近づく。
「なぁ、新しく来た住民ってお前達だろ?」
「そうだけど、君は?」
「俺はルフェン! 獣人族と人間の村の長の息子だ! ちなみに今年で12になる!」
あ、もうそんな年齢?
今年で2年目だから、そういやそうだね。
「じゃあ、僕より年上だねお兄さん。僕はフレア・アエトス。こっちが妹の」
「みら・あえとすです」
「コズエ様にお世話になってるようだけど、あんまり迷惑かけるなよ!」
「コズエ……愛し子様の事?」
「そう! 俺達を助けてくれた恩人で、村をここに移住させてくれた恩人でもあるんだよ!」
まぁ、恩人だけど、移住させたのはクロウなんだけど……
「ねえ、ルフェンさん。僕らと遊んでくれない?」
「いいけど、何して遊ぶんだ?」
「そうだね、ルフェンさんは獣人だから追いかけっこしようか」
「みらは? みらは?」
「後でおままごとしようね」
「追いかけっこなら……」
ミズリー君とラカン君が姿を現した。
「俺も混ぜてくれよ」
「いいよ、やろう」
「僕が妹さんみてようか?」
「お願いします」
「じゃあ、俺が追いかけるな」
ルフェン君がそう言う。
「じゃあ、始め!」
距離を取った三人人をルフェン君が追いかける。
ミズリー君もラカン君もフレア君も、速い速い。
その上運動神経も良いから巧みに避けている。
けど、年長者の意地と言うべきか、獣人の意地と言うべきか、村長の息子の意地と言うべきか、30分程で三人はルフェン君に捕まってしまった。
「ははは、お兄さん凄い速いね!」
「と、当然だろ!」
「ルフェン意地はらなくて良いぞ、かなりギリギリ攻めてただろ」
「にーに、おままごと、おままごと!」
「はいはい。良かったら参加してくれる?」
「小さい子の頼みだからな」
ミラちゃんのおねだりに、ルフェン君達は参加。
まぁ、おままごとの内容はちょっと吸血鬼風にアレンジされてたけど、ドン引きするほどのものじゃ無かった。
「フレア、ミラ。そろそろ食事の時間だよ」
子ども等を見つめていたアレックスさんが呼ぶ。
「あ、もう帰らないと」
「おにーちゃんたちあそんでくれてありがとう」
フレア君は頭を下げ、ミラちゃんは手を振って屋敷に帰っていった。
「また、遊ぼうなー!」
「遊ぼう!」
「遊ぼうよ!」
三人に言われると、フレア君はにっこり笑い。
「うん!」
元気に返事をした。
「何だ、案外良い奴じゃんか」
「何を危惧していたの?」
「父上から聞いたんだけども、夜の都の吸血鬼は貴族みたいに偉ぶってるってさ」
「なるほど……」
「でもフレアもミラもそんな様子なかったし安心した」
やっぱり「貴族」と「平民」の格差は大きいのね……
「イザベラ様は?」
「イザベラは王女様だけど、口調はちょっと偉そうだけど、中身はあの頃と変わらないまんまだしな!」
なるほど、イザベラちゃんはちょっと例外なのね……
まぁ、奴隷として一緒に売られそうになった仲だしね。
「もし、夜の都の吸血鬼でも、貴族ぶらないなら仲良くしたいな俺は!」
「そっかぁ」
「コズエ様はどう思う?」
「それでいいと思うよ、ここに来る王族や貴族の方は私達に良くしてくれているから、仲良くしてくれるなら新しい人達も歓迎かな」
「さすがコズエ様!」
「ただ、こう多種族混じり合った村だと喧嘩しないかは心配かな」
「大丈夫だよ、クロウ様が『争い事などしてコズエに迷惑かけたら追い出すぞ』って皆にいってるから」
クロウ……いつの間に。
「クロウ、全く過保護なんだから……」
「クロウ様はコズエ様の事が大事なんだよ、だって前の愛し子様を助けられなかったから……」
「……」
そう言えばそうだ。
瘴気の穴を塞ぐのを依頼され、それを行っている最中に前の愛し子は処刑された。
どれほどの怒りだったのだろう。
でも、神様に言われて我慢することにしたのはクロウだ。
その我慢を止めているのだろう、だから私に厳しいようで過保護なんだと思う。
まぁ、おじいちゃんの時は甘いし、甘えてくるけど……
きっと、そう言う関係だったんだろう。
前の愛し子とも。
「コズエ様?」
「あ、うん。ちょっと考え事をしてただけ」
「そうなんだ……コズエ様、俺立派な大人になってコズエ様のお役に立ちますから!」
「俺もです!」
「僕も!」
「有り難う、三人とも……」
私は三人を抱きしめた。
「新しい住人が吸血鬼と人間の夫婦とその子ども達と聞きましたが」
「しかも夜の都から来たとか」
アインさんとティリオさんがその日の夜、二人が寝る前に話しかけてきた。
「ええ、そうですよ」
「大丈夫ですか? 夜の都の吸血鬼はプライドが高いと聞きました」
「まぁ、確かにヴェロニカさんは気品あるというかプライドが高い感じだけど、夫のアレックスさんが良い具合に中和してくれるから安心だよ」
「それなら良いのですが……」
「何か心配毎でも?」
「いえ、これをきっかけに吸わずの吸血鬼が増える可能性も視野に入れてます」
「吸わずならいいんじゃない?」
「村にいる間はコズエのブラッドフルーツの効果で吸うことはないでしょう、ですが吸血鬼、力が強い存在です」
「それならアルトリウスさんは」
「彼は自分の力を自制できます、人間の母が居ますから。ですが仮に吸血鬼同士の夫婦が来た場合、子どもは自分の力を制御できるでしょうか?」
「……あのさぁ、それ私にも当てはまらない?」
質問に質問で返す、あんまり良くないけど。
「コズエ、貴方は元は人間です。吸血鬼として力を発揮するのはそうですね……開墾作業するときくらいでしょう」
「一応キメラとゴーレム撃退したんだけどな私」
「その時くらいだと思います。普段のコズエ様は畑仕事の時など必要が無い限り力を出さず、村人とも良いお付き合いをされています」
「そうなのかなぁ?」
「そうなんです」
ティリオさんが力強く言う。
「まぁ、しばらくは様子見なのでしょう。私達も様子を見させていただきますよ」
「うん、それが良いよ。皆で様子見しよう」
「ですが、今日はもう休みます。コズエ、お休みなさい」
アインさんが手の甲にキスをする、なんか恥ずかしい。
「コズエ様。お休みなさいませ」
「お休みアインさん、ティリオさん」
部屋を暗くして、その場を後にする。
夜、誰も居ない村の中をヴェロニカさんが歩いていた。
「ヴェロニカさん?」
「愛し子様か……」
「どうしたんですため息をついて」
「いやなに、息子や夫は村に馴染み始めてきたというのに、私はまだ馴染めて居ない事が少し憂鬱でな」
「リサさんや、イリスさんに誘われないんですか?」
「誘われるのだが……吸血鬼というだけで他の種族は我らを恐れるだろう、そう考えると拒否されるのが怖くてな……だから、リサとイリス。グレイスと家族としか関われんのだよ……」
「じゃあ、私が間に入りましょうか?」
「え?」
「だって私これでも吸血鬼ですし」
「しかし、だなぁ……」
「何か問題でも?」
ヴェロニカさんは悩んで居るようだ。
「愛し子様は、正直吸血鬼に見えない、というか思えないのだよ。流れ水平気だし、草木枯らさないし……」
「あはは、確かに」
そういや、そうだ。
「でも、村人の皆さんは私が吸血鬼だと分かって慕ってくれてますよ、だから私が間に入りますし、リサさんやイリスさんもフォローしてくれますよ」
「そうか、うん、そうだな。一度交流してみるか」
「でも今日は遅いから明日以降ですよ」
「ああ、分かってる」
ヴェロニカさんは微笑んで屋敷の方へ戻って行った。
「さて、夜のお仕事しますか」
私は夜の畑仕事に精を出すことにした。
フレアとミラが、ルフェンとラカンとミズリーの三人と遊び交流を深めましたね。
梢に対して三人は杞憂だったことも言ってます、夜の都の吸血鬼にいいイメージが無かった様子。
そして、アインやティリオが今後飲まずの吸血鬼が増えるのではと言及。
吸血鬼同士の子どもの場合力加減ができるのか等問題を提示しますが、梢は答えを出せないという結果。
しかたないですよね、今まで吸血鬼は自分一人だったので力が加減できてましたから、元人間なの除外して。
また、ヴェロニカも村人と交流があまり進まないことにがっかりしています。
吸血鬼と関わりのあるリサとイリス以外交流ができない臆病な面も。
ヴェロニカは上手に交流できるのでしょうか。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
イイネ、ブクマ、誤字報告等有り難うございます。




