村人への説明と、梢との交流
責任重大と感じて昏倒した梢の代わりに村をまとめ、説明をするクロウ。
そして漸く目を覚ました梢は、クロウから説明されて頭を抱える。
その上クロウから梢は責任が重いことを沢山やり遂げてきたことを告げられ──
「という訳で、まだ仮だが新たな定住者が夜の都からやって来た」
翌朝、クロウは村人達を集めてそう告げた。
「夜の都って事は吸血鬼かダンピールのはずです」
アルスはそう言うと頷いた。
「母親が吸血鬼、父親が人間、子ども二人がダンピールの家庭だ。子ども等が普通のブラッドフルーツを食べられないから此処に来たそうだ」
「つまり、血を吸うと?」
「いや、父親が腕に傷をつけて流した血をグラスに入れて小量毎回飲んでいたそうだ。だから血の吸い方を知らぬ──が、極度におびえていても問題あり、かといって簡単に受け入れる事案でもない、用心はせよ。子ども等は特にな」
「でもクロウ様。コズエ様だって吸血鬼なんでしょ、それにアルトリウスさんはダンピールで、グレイスさんは吸血鬼、サフィロはダンピールって割と受け入れてるから俺は大丈夫だと思うんだけど……」
「まぁ、そうだな。だがそれは夜の都の外から来た物達だ、夜の都の吸血鬼はまた違う、貴族のような存在でプライドも高い」
「うへぇ」
「子ども等はそうではないが、母親はそうだ。父親は違うが」
「なるほど……父親は人間なのですよね、ではその方と交流を深めつつ、吸血鬼である母親とも話すのが良さそうですね」
「そうだな」
「コズエ様の反応は──?」
「『責任重大だー!』となって頭がぐちゃぐちゃになったらしく倒れた」
「コズエ様……」
「梢にはこういう見定めるのは向かないから我らがやるぞ、良いな」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
集められた村人は返事をして頷いた。
「んぁ?」
気がついたら夕方で棺桶の中にいた。
「コズエ大丈夫か」
「アルトリウスさん……あれ?」
昨日確か見定めて欲しいって言われて……そっから覚えてない。
「梢、漸く起きたか」
「アルトリウスさんー、クロウー私途中から記憶ないんだけど、何かあったー?」
「お前は見定めて欲しいと言われて『無理ー!』と叫び『私そんな責任重大な事やったことないですよー! 助けてアルトリウスさんクロウー! 責任重大嫌ー!』と言ってぶっ倒れた」
「ギャース!」
やらかした。
「なので我が見定める役になった。それと梢、お前自覚がないが責任重大な仕事かなりやってきたんだぞ?」
「え、マジ?」
「普通吸血鬼やダンピールを村に入れるなど責任重大にも程がある」
「え」
「神森に世界樹ユグドラシルの依頼とは言え世界樹を植えて育てるのも責任重大だ。次のユグドラシルを生み出すためにな」
「え」
もはや私は「え」しか言えない。
「ユグドラシルの種を苗木にするのも責任重大だ、丁寧に育てなければ苗木には生長しない」
「え」
「第一、ハイエルフは排他的な連中がほとんどなのにそれを懐柔させている時点ですごいのだぞ」
「え」
「ドワーフは酒が不味いところには定住せん、お前の酒が美味すぎるから定住しているのだ。あと人柄か? 人ではないが」
「え」
「それに、白狐の一族は善性の存在。お前の善性に惹かれて定住しているんだぞ」
「え」
「まぁ、要するに。無自覚にお前は難問や難解な出来事解決していたのだ、神々の力も多少はあるが」
「え」
「……そろそろ『え』以外言わんか」
とクロウにほっぺを引っ張られる。
「いひゃいいひゃい!」
「梢、ブラッドティーの茶葉を作ってほしいのだがいいかな?」
「ブラッドティー? 血のお茶?」
「そうか、梢はブラッドティーを飲んだことがないからな。ブラッドフルーツの木の葉っぱから作る茶葉のようなものだ」
「あ、じゃあ茶葉メーカーがあるからそれで作るね!」
私は棺桶から飛び出し、ブラッドフルーツを囓って外へ出た。
生長して株分けもして、たくさんあるブラッドフルーツの木から葉っぱを貰う。
葉っぱはハート型で茶葉みたいな感触がしていたが、本当に茶葉になるとは思わなかった。
それをクラフト小屋に入れて茶葉メーカーにぶち込み、ブラッドティーの項目を選択して待つ。
「おいしーくなぁれ、はやくなぁれ」
『美味しいのをつくろー』
『吸血鬼もダンピールもびっくりする美味しさにー』
『早くなぁれ』
いつも通り妖精と精霊達が集まってくる。
一時間後──
「できた!」
「アルトリウスさんに飲んで貰おうっと」
試飲は夫であるアルトリウスさんが良いだろうと思った。
「もうできたのか?」
アルトリウスさんは驚いていた。
「これ、普通にお茶入れる感じでいいの」
「私が入れよう」
アルトリウスさんは紅茶の茶葉を入れる容量でいれ、お湯を入れた。
カップに注ぐと真っ赤なお茶が出て来た。
「では……」
アルトリウスさんは口にした。
目を見開く。
「こんな美味いブラッドティーは初めてだ……‼」
「え、私もじゃあ」
こくりと飲む。
血の味はするが紅茶のような華やかで甘く爽やかな気分にさせてくれるお茶だった。
「またしても超一級品を作ったか」
「妖精と精霊のおかげで……」
「それだけじゃないだろう、まぁいい。ローレンスの屋敷に持って行ってやれ」
「はい」
「じゃあ、ついて行こう」
ブラッドティーの茶葉を袋詰めしてローレンス夫妻の屋敷に向かった。
「ブラッドティーを作って下さったんですか」
グレイスさんがサフィロ君を抱っこしたまま出迎えてくれた。
アレックスさんは子ども達とホールで遊んでいる。
「はい……あれ、イリスさんとヴェロニカさんは?」
「今ブラッドフルーツを使った菓子作りをしているんだ」
「わー私も混じっていいですかー」
「きっと妻も喜びます」
そう言われたので台所へ向かう。
「ジャムはできたがどうする?」
「うーむ」
「ジャムを使ったお菓子ですかー?」
「愛し子様!」
「愛し子様、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよー」
私は笑い、ジャムを見つめて言う。
「ちょいと味見を」
スプーンで味見した、うん、美味しい、優しく甘い血の味だ。
「あ、クッキーとかどうでしょう」
ロシアンクッキー、良いと思う。
ジャムはあるのでクッキーの生地だけ作る。
滑らかに作ったら星形の絞り袋にいれて絞り出す。
それにジャムをちょこっとのせて、また絞り、焼く。
「でーけた!」
「おお、こんな菓子があるとは……」
「クッキーでもこんな綺麗なものはない」
「中身をベリー……苺ジャムに変えると人間用になりますよ」
「ご教授感謝する」
「ああ、そうだな」
イリスさんとヴェロニカさん、似た雰囲気なところもあるのか仲良くなってる。
「さぁ、お前達。菓子だよ」
「やだよ、どうせ、砂糖でごまかしたジャムとスコーンだよね?」
「やなの!」
「違うよ、今日はクッキー」
「くっきー?」
「そう」
食堂へ持って行き、ブラッドティーを入れて、吸血鬼とダンピールの方にはブラッドフルーツジャムのロシアンクッキーを。
他の方には普通の紅茶にクッキーを。
「わぁ、綺麗」
「どうぞ召し上がれ」
ミラちゃんがぱくりと食べる。
「にーに、これ美味しい!」
「本当? じゃあ……」
フレア君も食べる。
「美味しい! このブラッドティーも良い匂い……」
そのままブラッドティーを飲む。
「美味しい!」
「おいしい!」
「こんな美味しい菓子は初めてだ」
「愛し子様の知恵とは素晴らしいな」
「あはははは……」
脳内のクラフトで料理の内容見ただけなんだけどね。
とは言わず、私はクッキーをかじりブラッドティーを飲む。
うーん、こう言うのが平気なあたりやっぱり私は吸血鬼なんだな、と思った。
梢は無自覚に色々やるタイプなので自覚させられるとめっちゃ大変です。
クロウはバッチリそれを認識しています、他の方々も。
お菓子作りは、クラフト能力も使ってお菓子をしています。
子ども達はグルメ……元い舌が肥えてますが、梢達の手料理は美味しかったようです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
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