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夜の都からの来訪者

二日酔いのティリオとアインを労る梢。

そんな梢にブラッドワインがワインではなく血の代用品であることを伝えるアルトリウス。

梢はワインになると思い込んでたから生の丸かじりをしていたが、普通やると咽せるどころじゃないとも言われる。

そんな会話をしていると──




「頭痛が……」

「気分が悪い……」

「慣れないのに酔っ払いに飲まれて飲むからだ」

 ベッドの上でぐったりしている二人を見てアルトリウスさんは呆れた顔をする。

「でも、アルトリウスさんはブラッドワイン飲んでましたよね?」

「ブラッドワインはアレは血の代用品であって酒じゃない。ワインと称されているが」

「え、そうなんです?」

「もしかしてコズエ。君はワインと名前が付くから飲まずブラッドフルーツを丸かじりしていたんじゃ無いだろうな?」

「え、えへへ……」

「……普通ブラッドフルーツを生で囓ったら咽せるどころじゃ済まんぞ」

「え?」

 うっそだろ、私生でバリムシャ囓ってたよ。

「今後はブラッドフルーツの丸かじりは控えるように、良いな」

「あーい……ん? じゃあブラッドフルーツの絞り汁赤ちゃんにやるのは不味いんじゃ?」

「吸血鬼とダンピールの赤ん坊自体は栄養を大量に必要とする、母親の母乳では足りない、だからブラッドフルーツの絞り汁を飲ませるんだ。まぁそれをやるのは飲まずと言われる派閥の者に限ってだがな」

「……飲む連中はどうするの?」

「人間とっ捕まえて生き血を絞るそうだ。父に聞いた話だがな」

「うへぇ」

 うへ、げんなりする。

 昔に各地から若い娘を集めて生き血絞ってブラッドバスとかしてたって言う女貴族の話を思い出すわ。

「そんな奴らがいるから飲まずの私達が襲われるのだ、腹立たしい」

「夜の都の吸血鬼達はどっちなのかな」

「飲まずだそうだ。ブラッドフルーツはネロ神より与えられた神の果物。それで満足しないもの達は汚らわしい、とな」

「あ、そうなんだ」

「……たまに君が本当に吸血鬼か疑いたくなるよ」

「あはははは……」

 私は空笑いを浮かべる。

 吸血鬼人生三年目になるというのに私は全くこの世界の吸血鬼について知らない!

 どうしよ!

「そ、それより二日酔いにいい飲み物があるんです、飲みます」

「飲み物?」

「はい、シジミ汁です」

 私はアイテムボックスからシジミ汁が入った椀を取り出す。

 アインさん達は起き上がり、それを飲み始めた。

「ああ、体中にしみわたるようだ……」

「美味しいです……」

 二人は心地良さそうな顔をして飲み始めた。

「これは貝? いつ海まで行ってきたんだ?」

「いや、ちょっと特殊な方法で仕入れまして……」

「……そうか」

 スマホの売買のアプリで買ったなんていえませんよ。


 コンコン


 そんな事を考えていると、扉をノックする音が聞こえた。

「はぁーい」

 扉を開けるとクロウが人型で立っていた。

「ちょっといいか梢。良ければアルトリウスも同席を頼む」

「「⁇」」

 何故呼ばれたのか分からなかった。


 ローレンスさんの屋敷の客間に集まった。

 リサさん、アルトリウスさん、イリスさん、グレイスさん、クロウ、私。

「グレイス事情を話せ」

「はい、実は夜の都に住む飲まずの吸血鬼の仲間から連絡が来まして」

「どういう方なんですか」

「飲まずの一族アエトス」

「かなり有名な一族の方ではないですか」

「そんなに有名?」

「ああ、有名だ」

 さっぱり分かっていない私にアルトリウスさんが軽く説明する。

「千年以上の歴史を持つ吸血鬼の一族だ、金には困らず、裕福な貴族と思ってくれ」

「へー……で、どうしてその方が連絡を?」

「息子と娘が居るが、二人ともブラッドワインを飲みたがらないのだ」

「へー……ん、つまり血を飲むって事ですよね?」

「ああ、だから父親である人物が血を分け与えているそうだ」

「なるほど」

「一度、愛し子が作ったブラッドフルーツのワインを競り落とした時、それだけは美味しそうに飲んだそうだ」

「えと、つまり……私が作ったブラッドワイン目当ての移住が目的」

「その通りです」

 はー……吸血鬼の方も色々と事情あるんだろうなぁ。

 大変だ。

「私は別に構いませんが、子ども達がちゃんとブラッドワインだけを飲むようになるとは限りませんよ」

「分かっている、だからその間は私の屋敷で暮らして貰う、ブラッドワインだけ飲むようになったと確定したら移住確定の許可をいただきたいと」

「わかりました、お試し期間ですね。ところでいつ頃到着するんです」

「……今日だ」

「はー⁈ ちょっとそういうのはもっと事前に相談をお願いします」

 マジで!

「すまない、手紙が今日届いて日数的に今日来るのが分かったんだ」

「分かりました、相手さんの責任ですね。取りあえずローレンスさん達は責めません、その代わり相手さんには一言もの申します」

「それなら……」

「なんなら我が言ってやろうか?」

「……駄目そうな時は宜しくお願いします、クロウ」

「コズエ……」

 アルトリウスさん、そこで俺は頼ってくれないんだなって顔すんの止めてください。

 エンシェントドラゴンのクロウに頼った方が楽なんですよ、こう言う時は!

 三年近くの経験上!

「ん、誰か来た」

「よし、行くぞ」

「はーい」



 屋敷から出て森の入り口へ。

 真っ黒な服を着た御者?

 いや、精霊と妖精の集まりが馬を働かせていた。

『愛し子様だ!』

『本当だ!』

『愛し子様がいましたよ!』

「ご苦労」

 女性の声がした。

 馬車から黒いドレスに身を包んだ女性が姿を現す。

「愛し子様はどちらに?」

「あ、あのーえーと、私、デス。ハイ」

 美人の圧のある言葉は怖い!

「噂には聞いていたが漸く降臨した愛し子は吸血鬼だったというのは本当らしいな」

「ハイ……」

「ではまず名を名乗ろう。私はヴェロニカ・アエトス。そしてこちらが──」

 男性と、少年と少女が馬車から降りる。

 柔和な表情だが手袋をしていて、品の良さそうな服を着ている男性と、貴族風な服を着ている子ども達。

「アレックス・アエトスと申します。ヴェロニカの夫で、この子等の父親です。愛し子様」

「……フレア・アエトスです」

「フレア。愛し子様の前だ、きちんとなさい」

 吸血鬼の女性──ヴェロニカさんの言葉に少年──フレア君は渋々といった風に頭を下げた。

「みら・あえとすです。はじめまして、いとしごさま」

 少女──ミラちゃんはたどたどしいが丁寧にお辞儀をした。

「ミラよくできたぞ」

「えへへ」

 ミラちゃんはお母さんに褒められて嬉しそう。

「要件は聞いている、愛し子のブラッドワインが目的だと」

「ああ、夜の都では中々手に入らないのだ。持って居るだけでステータスだからアレは」

 飲まないのかもったいねー。

「薄めて飲ませて貰ったが、息子と娘が初めてブラッドワインを口にしたのがそれでな」

「ブラッドワインって薄めて飲むの?」

「薄めるのは希だ、君のものだから少しでも量を飲みたくて水で割ったのだろう」

「なるほど」

「ところで、そちらの御方はもしやエンシェントドラゴン様では?」

「その通りだ、何かあったら我が出ようと思ったが、その必要はなさそうだな」

「えーでも、最期まで付いてきてよ」

「勿論」

 クロウの言葉に安堵しつつ、私達はローレンスさん達の屋敷に向かった。


 村人達は物珍しそうに真っ黒な馬車を眺めていた。


 まぁ、その程度で良かったけどね、うちの村吸血鬼に対して比較優しいみたいだから、私が吸血鬼なのが最大の理由だけど。


 ローレンスさんの屋敷に着くと、全員屋敷の中に入る。

 広い食堂に皆が入る。

「では、ブラッドワインをお持ちしますね」

 と、私はアイテムボックスからブラッドワインを取り出す。

 グラスに注ぎ始めると。

 先ほどまでキョロキョロしていた子ども達の態度が変わった。

 ワインに釘付けになっている。

「ああ、ここまで香る程濃厚で良い香りだ」

「はぁ」

 そう言ってグラスをクロウに運んで貰う。

 吸血鬼の方とダンピールに行き渡る。

「ねぇ、母様。まだ飲んじゃ駄目⁇」

「かあさま、はやくのみたい!」

「落ち着きなさい……では乾杯」

「「「「「乾杯!」」」」

 私も初めて飲む、ブラッドワインは。

 いつもブラッドフルーツ丸かじりだったから。

「あ、美味しい」

 血の味だが濃厚なのにしつこくなく、フルーティな感じさえした。

 すっきりとしてもいる。

「ああ、こんなブラッドワインは初めてだ。この村ではいくらで売っているんだ?」

「それが無料ですよ、アエトス様」

「何だと、夜の都では──」

「其処までだ、ブラッドワインの値段は言うな。梢が作りづらくなってしまう」

「そうですか……エンシェントドラゴン様が言うならそうなのでしょう。失礼しました」

 一体おいくら何だろうと思ったが、もし一本白金貨100枚とかだったりしたら怖くて作れなくなりそうな予感がする。


 よし、このことは忘れよう。


 私はそう決めた、だって怖いじゃん!






新たな移住候補者登場。

吸血鬼の方とその夫の人間とダンピールの御子様達です。

飲まずの一族なのにブラッドワインが飲めなかった子ども達。

梢が提供すると美味しいと言って飲んでいます。

何故飲めなかったのでしょうか。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

イイネ、ブクマ、誤字報告等有り難うございます。

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