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夢の世界~母との再会~

次のユグドラシルは確実に生長していた。

植物を育てるというのは母親の真似事と思い返していた梢だったが。

こちらの世界で暮らして早二年、母親達はどうしているのだろうと気になった。

神様に電話し、問いかけると驚愕の内容が知らされる──





「あ、また大きくなってる」

 前植えた世界樹の苗とは違うけれども、世界樹ユグドラシルの種は目を出し、確実に生長していた。

 二日しか経たないのにもう十センチくらいになっている。

「土も乾くし、なるべく水やりしないとね。あと土入れと土の交換もしないと」

『良い土に良い水、これならユグドラシルも生長するわ』

『さすが愛し子様』

「んー」

 家で、鉢で色んな植物育ててる母さんの真似をしただけなんだけどなぁ。


 ……はぁ、こっちの世界に来て早二年が経過。


 神様達の雷に当たって即死したけど、大丈夫かな母さん達。

 まぁ、お祖母ちゃんに遺書っぽいの残してあるから、死んだ後でも大丈夫だろうさ。


 そんなことを考えてるとスマホが鳴る。

「はい、もしもし神様」

『おお、梢。お前さん、家族のことを考え取ったじゃろ』

「ええ」

『話聞くか?』

「一応」


 聞いておくことにした。


『あーお前さんの母親、雷に打たれて死んだことで病んでしまったわ』

「NOOOOOO‼」


 マジかよ、お母さん‼

 病むなんて止めてくれよ!


『「私の可愛い梢が何で雷に打たれて死ななきゃならないの!」と病んじまってお前さんの部屋にこもって、お前さんの服や買ったぬいぐるみなんかを抱いたりしたり、生きてたら買ってるであろうゲームや漫画、DVDなんかも購入してお前さんに似たぬいぐるみ作って「梢楽しい? 面白い? よかった、よかった」ってやっとる』

「完全に病んでるぅううううう‼」

 ガチで病んでるよお母さん!

 しゃれにならないレベルで!

「ど、どうにかできないの⁈」

『まぁ、夢枕にお前を立たせる事くらいはできるかのう?』

「それでお願いします! そうだ、兄貴達は⁈」

『兄達もショックを受けたが母親のショックの受けように、病んでる暇もないらしくてな……』

「父さんが死んだ時は、ここまでお母さん病まなかったのになんで……」

『母親だから病まなかった、だが今回は母親だから病んでしまったのじゃ』

「……夢枕に立つ以外の光景で私を見せることはできる? 私は生きてる、幸せだって見せたいの」

『ふむ、なんとかやってみよう。クロウに神託を授からせる』

「わかった」

 通話を切ると深いため息をついた。


 その後、吸血鬼も、人間も、ハイエルフも、ドワーフも、白狐も、全ての村人が夜になったら眠るようにとクロウが神託を出した。

 普段なら夜は目が覚めるのに、その日はすっと眠れた。





 目を開くと元の世界の自分の家。

 その自室。

 母親の部屋に行く。

『梢は良い子だねぇ』

『お母さん』

『うふふ、私の可愛い梢……』

『お母さん‼』

 と大きい声を出すとびくりと母は肩をふるわせて振り向いた。

『梢……⁇ 梢……⁇ 梢……⁈』

 母はぬいぐるみを置いて私に抱きついてきた。

『お願い何処にも行かないで、お母さんを置いて逝かないで!』

『お母さんごめんね、死んじゃって。でも別世界で生きてるから私』

『別世界……?』

 私は母を連れて玄関まで行き、扉を開ける。

 すると今居る世界だった、母の格好が極東風になり母は少し困惑していた。

 夢なのか優しい灯りに包まれている。

『梢、やって来たぞ』

『コズエ様! その女性は?』

『梢、この方達は?』

『ああ、紹介するねお母さん。黒い服の人がクロウ、隣の耳がとがってる女性がシルヴィーナ。クロウがエンシェントドラゴンというかドラゴンが本当の姿だけど今は人間の姿をしてて、シルヴィーナはハイエルフなの』

 と、二人を母に紹介する。

『で、二人に紹介するね。私のお母さん、御坂小百合(さゆり)。』

『こ、コズエ様にはお世話になっています‼』

『梢とは仲良くさせて貰って居る』

 母は唖然としている。

『じゃあ、村を回ろう』

『え、ええ』

 母と村を巡る。

 獣人と人間の居住区、白狐の一族の居住区、ドワーフの居住区、ハイエルフの居住区、温泉、ローレンス夫妻の屋敷。

 私の母だと紹介すると、皆頭を下げた。

『こ、梢。貴方はここで何をしてるの?』

『スローライフ! 畑を作って、果樹園作って、家畜を飼育して、田んぼ作って、村も私が作ったんだよ、遊具とかも!』

『貴方、そんな才能あったの?』

『死んじゃったから神様に貰ったんだよ。じゃなきゃ作れるわけないじゃん!』

 私はカラカラと笑う。

『さて、何処にも居ないということは家にいるね、私の家に行こう!』

『え、ええ』

 母の手を引いて私は自宅へと向かう。

『此処が私の畑と果樹園と家畜小屋なの、あと田んぼもね!』

『すごいわ……どんな家畜をかってるの?』

『いるかなぁ』

 と思って中を見ると、聖獣をシルヴィーナが撫でていた。

『いたいた、お母さん見て!』

『わぁ、銀色の牛に、黄金の鶏……ファンタジーみたい!』

『そう、今の私はファンタジーの世界で生きているの!』

『え?』

『あと、フェンリルとも契約したのよ!』

『え?』

 隣の小屋を見せる、銀色の巨大な狼たちがいた。

『さ、触っても良い?』

『勿論、白亜。私のお母さんなのこの人、だから触らせてあげて』

『もちろんです』

『しゃべった!』

『フェンリルなら喋れますよ』

 白亜の苦笑した言葉におずおずしながら母は白亜に触る。

『ふかふかで温かい……』

 そう言って私の頬に今度は触った。

『? どうして少しだけ冷たいの?』

『あー実は今の私吸血鬼なんだよね』

『え⁈』

『知ってるでしょう、私の吸血鬼が好きなの』

『ええ……』

『梢、あの三人に会わせなくて良いのか? 今お前の家の食堂にいるぞ』

 クロウがそう言ってきた。

『教えてくれて有り難う』

『あの、どうしたの? 梢』

『私さ、結婚したんだ』

『本当⁈』

 母は嬉しそうに破顔した。

『ちなみに三人の男性と』

『え⁈⁈』

 笑顔が驚愕に変わる。

『三人同時に、三人選ばず三人とも選んでくれと言われて私が折れました』

『そ、そうなの……』

『と言うわけで、私の旦那さん達に会って貰いましょう!』

『ちょ、ちょっと待って梢! 心の準備がー!』

『女は度胸ってお母さん言ってたじゃん!』

 そう言って家の扉を開ける。

『コズエ、お帰り。その女性は?』

『アルトリウスさん、ただいま! 私のお母さん!』

『コズエの母君か……だがあまりコズエと似ていないな』

『しゃーないじゃん、私は父方似! お祖母ちゃんの若い頃にそっくりなんだってさ!』

『あの、この人達が梢の旦那さん?』

『そうだよー、白金色の髪の長いのがアルトリウスさん、金髪で長髪なのがアインさん、で茶髪で長髪なのがティリオさん。で、そこでお茶を飲んでいるご夫人がアルトリウスさんのお母さんのリサさん』

『初めまして、リサと申します。コズエ様のお母様とこうした形でお目にかかれて幸せです』

『あ、有り難うございます……こ、梢。貴方何かしてたの?』

『んー悪い人達から逃げてたのを助けた位だよー』

 嘘は言ってない。

『そう、ならいいのよ……』

 そこからたわいの無い談笑が始まった。

 私は村でどうしてるとか、村では崇められてるとか、そういうのもひっくるめて会話が弾んだ。

 話が終わり二人きりになる。

『一生ここにいたい気分よ……』

『それは駄目だよ、ここは夢の世界。お母さんが病んで泣いて暮らしているって聞いたから神様にお願いしてお母さんを連れて来て貰ったんだよ』

『じゃあ、全部嘘なの?』

『本当だよ、私が異世界で暮らしているのも、神様にお母さんの事情聞いて頼んだのも全部本当』

『だったらー』

『お母さん、兄貴達が泣くよ? お母さんが睡眠で衰弱死なんてしたら』

『でも……!』

『梢の母君よ、神がたまにならばこのような形で梢と会うことを許すと仰っている』

 クロウがやって来て私達にそう言う。

『だからね、お母さん。泣いて暮らすのは止めて、私元気なお母さんが大好きだもの、お母さんの笑顔が好きだもの』

『梢……』

『だからね、また会おうね。お母さん』

『うん、また会いましょう、梢……』

 私は母と抱き合った。

 世界が白く染まる。





「……ああ、目覚めか」

 夕方私は目を覚ました。

 涙の痕を拭って棺桶から起き上がる。

「お母さん、元気にやってるから、どうか笑ってね」

 そう呟いた。







次代のユグドラシルは確実に生長しています。

が、今回の本題は梢のお母さんにあります。

梢のお母さん、雷に打たれて死んだ事で病みました。

だから梢はどうにかできないか神様に交渉したのです。

夢の世界ですが、こちらの世界で幸せに暮らしていると伝えられた梢。

また、梢と母が夢で再会することがあるのでしょう。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

イイネ、ブクマ、誤字報告等有り難うございます。

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