梢達の結婚式
ユグドラシルの根元に到着すると、村人や招待客が待機していた。
梢は馬車から降りて、既に待っているアルトリウス、アイン、ティリオの元へ向かう。
そして式が始まった──
「「「「「「「「「コズエ様──!」」」」」」」」」
皆が声をかけてくれる。
ユグドラシルの木の前に来ると地面はふかふかした葉っぱで包まれていた。
「これなら下りても大丈夫でしょう。コズエ様」
「うん」
シルヴィーナの手を取りふかふかの道を歩き始まる。
春色の服を着たのが二人、黒い色の服を着たのが一人。
あ、私と同じ春色がアインさんとティリオさんで、黒色がアルトリウスさんだ。
「「「コズエ」」」
三人が私の名前を呼ぶ。
私はちょっと不慣れなドレスで歩きながら三人の元へ行く。
三人の元に行くと、三人は私を抱き留める。
ミカヤさんが、丁寧に会釈をする。
私も会釈を返すと三人も頭を下げた。
「コズエ・ミサカ様。愛し子様。貴方様はアルトリウス・ミストリア。アイン。ティリオ。この三名を愛し、共に生きることを誓いますか」
「……誓います」
一人で立ち、ミカヤさんを見据えて言う。
「アルトリウス・ミストリア。アイン。ティリオ。貴方達は愛し子様を生涯愛し、共に生きることを誓いますか?」
「「「誓います」」」
三人はそろって言う。
「では誓いの指輪を──」
アインさんや、ティリオさん、アルトリウスさん、私の前に指輪を持った小綺麗な子ども達が現れる。
アルトリウスさんの前の子が来て小声で──
「アルトリウス兄ちゃんの指にはめてください左手の薬指がいいとクロウ様がおっしゃってました」
神様ェ……クロウに言ったな何か。
と思いつつ、私はアルトリウスさんの左手の薬指に指輪をはめた。
その次はアインさん、次はティリオさんと指輪をはめていく。
最期にアルトリウスさんが私の指輪を持ちティリオさんに私、アインさんは私の手を取り、ティリオさんが左手の薬指にはめた。
「此処に夫婦が誕生しました! 皆さん、祝福の花を」
「そーれ!」
「おめでとー!」
「めでたいめでたいー!」
と桜の花などの花ビラが降ってきた。
更に──
『おめでとう、愛し子。私は貴方を祝福します』
ユグドラシルの花ビラが降ってきた。
「わぁ、有り難う……!」
私は純粋に嬉しくなった。
その後、村で二次会を行うことになり、私はシルヴィーナの家に戻り、ドレスとヴェールを脱ぐ。
「じゃあ、このドレス着るね」
とアイテムボックスから空色のドレスを取り出す。
「まぁ! 素敵なドレスですね!」
「着るの手伝ってくれます?」
「勿論です!」
シルヴィーナと村人の女性陣が手伝いすんなり着れた。
そして、街灯を模した魔道具で照らされた広場へ行くと、皆がいた。
アルトリウスさん達が椅子と机のある場所に座って手招きした。
私はアルトリウスさんとアインさんの間に座った。
勿論あとで、ティリオさんの隣に座る予定だ。
「さぁ、収穫したものと狩った肉で作ったスープとあの銀牛のミルクでつけた果実を堪能するぞー!」
「酒もある、飲めや騒げやー!」
男衆がそう言って宣言すると、皆食事を取り始める。
私も取りに行こうかと思ったら、シルヴィーナとクロウが持ってきてくれた。
「おめでとう梢」
「有り難う、クロウ」
「おめでとうございます、コズエ様」
「有り難うシルヴィーナ」
「おめでとう愛し子様」
「ありがとうございますマリア様」
「おめでとうございます愛し子様」
「ありがとうございますクレア様」
王族と関係者の方々が挨拶しに来た。
「おめでとうございます! コズエ様!」
「ありがとう、イザベラ様」
「おめでとうございます、愛し子様」
「ありがとうございます、ロラン様」
「おめでとうございます、愛し子様」
「ありがとうございます、マルス様」
「おめでとうございます、愛し子様」
「ありがとうございます、ロッズさん」
「おめでとうございます! コズエ様!」
「有り難う、リーゼちゃん」
「おめでとうございます! コズエ様!」
「有り難う、ミーアちゃん」
そうしてその方々が立ち去ると白狐の一族の方──奈緒さんと一二三ちゃんが来た。
「おめでとうございます、梢様」
「ありがとうございます、奈緒さん」
「おめでとうございます! 梢様!」
「有り難う、一二三ちゃん」
その後アルスさんがやって来た。
「コズエ様、おめでとうございます」
「アルスさん、有り難うございます」
リーダー的な存在が挨拶に来た。
私は対応していく。
それが終わると村人が押し寄せ挨拶にやって来た。
「どうぞ、お幸せに!」
「どうか仲良く!」
等など色々な祝福があった。
子ども達も、ハイエルフのアクセサリー屋さんに頼んで作って貰ったアクセサリーを持ってきて四人分プレゼントしてくれた。
ネックレスだ。
お礼を言うと皆誇らしげな顔をしていた。
一段落したところで私はスープを飲む。
少し冷めてしまったが、それでも美味しいスープだった。
野菜の旨みが凝縮され、それに塩と胡椒、肉の旨みが混じり合って美味しかった。
「うん、美味しい」
スープを飲み終えると、ミルクを浸した苺があった。
食べると、ミルクの甘みと苺の甘酸っぱさが心地良かった。
「村を広げて、良かったなぁ」
私は心からそう思った。
二次会はお開きになり、ドレスをシルヴィーナの家で脱いで、アイテムボックスに入れて私はいつもの格好に着替える。
「家、どうしよう?」
「梢どうした」
シルヴィーナの家から出て呟くと、クロウが話しかけてきた。
「いや、結婚したら普通は一緒の家に住むでしょう?」
「そうだな」
「……今の家、広いけど四人で暮らすにはちと狭い」
「クラフト能力で作り直せばいいだろう」
「あ、そっか」
急いで家へと戻る。
「クラフト!」
画面が出る。
「よし、この家の大きさなら……!」
斧やハンマーなどで改築をする。
「よっしゃできた」
あっという間に更に大きく広い家ができた。
四人どころか十人は余裕だ。
「三人呼んでこようっと」
私はとっとこ歩いて三人のいる村へと行った。
「何? 皆で暮らすように改装した⁈」
アルトリウスさんは驚愕の声を上げた。
「あー、リサさんも一緒に暮らす?」
「お若い方々がいるのに私が入っては邪魔だわ」
「ですが、母上を置いてはいけません」
「じゃあ、決定リサさんも一緒に暮らすんですよー、棺桶もってきてくださーい! ベッドは私が持ちまーす」
リサさんも一緒の家に暮らす方向で。
「と言うわけでリサさんの個室を作ってたので、リサさんも一緒に暮らします。ベッド運ぶので来て下さい」
「良いのですか? 貴方はその……」
「まぁ、結婚して家族になったんだから一緒に暮らすのがいいでしょう」
「ありがとうございます……」
「いえいえ」
「アイン、ティリオ、ベッドはこれか、他に持つ者があったらもってこい」
「あーベッド私も持つよー」
アルトリウスさんがベッドを二つ抱えていたので、私もベッドと一つ預かり自宅へ戻る。
四人の寝室にベッドと棺桶を置く。
真ん中に棺桶二つと、両脇にベッド二つ。
綺麗な棺桶と、私の花の模様が入った棺桶が並ぶ。
「ふぁああ、今日は疲れた……お休みなさい」
そう言って棺桶に入り、眠りに落ちた。
「お休み、コズエ」
眠ったコズエの棺桶を開けてアルトリウスは額を撫でた。
「お休みなさい、コズエ」
アインは頬を撫でる。
「お休みなさいませ、コズエ様」
ティリオは手を撫でる。
その後アインとティリオは眠りにつき、アルトリウスは狩りに出掛けた──
梢の結婚式回です。
指輪を運ぶ役の子どもはクロウから入れ知恵されていますが、その入れ知恵は神様からの物です。
二次会も楽しく終わりましたが、四人で暮らす為に家を拡張したりした梢は疲れて眠ってしまいました。
初夜はなさそうですね、この四人だと。
梢が梢ですから、初心とも言う。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
イイネ、ブクマ、誤字報告等有り難うございます。




