白狐の一族の移住
クロウは白狐の一族のリーダー的存在に梢の事情を話し遠回しで深掘りしないように言う。
クロウ達が梢が家を作ったところに到着すると、白狐達は家の見事なできばえに驚く──
「さて、狐達。お前達には話せねばならぬ」
森を歩いているクロウと白狐の一族。
そのリーダー的な人物とクロウは小声で話していた。
「何でしょうか?」
「愛し子は梢という」
「極東のものでしょうか、梢という響きは極東のものと思われます」
「と、言うことになっている」
「では、別の国?」
「否、梢は何処でも無い場所からやって来た、神に召し上げられこの土地に下ろされた」
「それは……!」
「以上だ、この事は他言無用だぞ」
「畏まりました」
「あ、やっと来た。おーい!」
「もうできたか、さすが愛し子クラフト能力と言うべきか」
「こんな立派な家を……⁈」
リーダーらしき、七つの尾を持つ青年は驚いていた。
他の方達も驚いている。
「えっと貴方は……」
「奈緒と申します、梢様」
「奈緒さんね、これから宜しくお願いします」
私は奈緒さんに頭を下げる。
「そんな愛し子様が頭を下げるなんて」
「梢はこう言う奴なんだ。後、春になったら結婚が控えている」
「本当ですかそれは目出度い!」
「伴侶は三人だがな」
「え……」
奈緒さん、そんな顔で私とクロウの顔を交互に見ないでくれ。
「クロウ様は……」
「我は梢とこの土地を守る者、そういう気持ちはない」
「そうそう、それに普段のクロウはおじちゃんだしね」
「え⁈」
奈緒さん、また私とクロウを交互に見てる。
クロウは小さなドラゴンの姿に変わる。
『これが儂の普段の姿じゃよ、本当の姿はもっとでかいがの』
「だってさ」
「で、ではどなたが……?」
『それはの……おっとちょうど良く来た』
「コズエ。それとクロウ様」
「コズエ様、クロウ様、どうなさったんです?」
「コズエ、それとエンシェントドラゴン様。どうなさったので?」
アルトリウスさん、ティリオさん、アインさんの三人がやって来た。
『この三人じゃ』
「一人はダンピールというのが分かりますが、お二人は人間ですよね」
「まぁ」
「そうですね」
アインとティリオそう答える。
「そうなれば、お二人は先に亡くなるのでは?」
言われてみればそうだ。
でも、二人を吸血鬼にするとか無理強いしているようでいやだ。
でも、長生きして欲しい。
『大丈夫じゃ、この二人は寿命とかが先祖返りしているから安心じゃ』
「Why?」
『つまりじゃな、この二人の先祖はハイエルフで見た目は人間じゃが寿命とかはハイエルフと一緒じゃ。だから呪いや毒に耐えて生き残れたんじゃ』
「では、私達が生き残ったのは……」
「先祖の血のおかげ?」
『そういうことじゃ。運がよかったの』
アインさんとティリオさんは重い表情をしている。
「そういう重要なことはもっと別の場所で言おうよ、クロウおじちゃん!」
『そうじゃの、悪かったの』
悪いと思ってるのかこのエンシェントドラゴン。
「もしかして、お二人は帝国から逃げてきたのですか?」
奈緒さんが聞く。
「‼」
驚いた表情のティリオさん。
「その通りです、幼い頃誘拐され、そこで奴隷のような扱いを受けていました」
アインさんがそう言う。
「帝国め、まだそのような事を……」
「確かカインド帝国の末裔でできた国がロガリア帝国で、その結果今も呪われ続けているんですよね?」
『そうじゃよ、ロガリア帝国で生まれた奴らは皆穢れきっている、連れてこられた子等はその穢れと奴隷の扱いで早死にが大半じゃ』
私は拳を握りしめた。
「今もそれは起きてるの?」
『いや、いったん中止しておる。何せ愛し子が現れたと聞いた帝国はこの森を包囲しようと考え侵略行為を始めてるようじゃ』
「ふざけんな! 呪われたのは自分達の所為だろうが! 贖罪する気もないのか‼」
『じゃあ、儂ちょっくら帝国いってくるの』
「え?」
クロウおじちゃんが突拍子も無い事を言い出した。
『ちょいと帝国に痛い目にあって貰いたいだけじゃよ』
「⁇⁇」
そう言うとクロウは飛び上がり、巨大化して飛び去っていった。
「「「「「「「「……」」」」」」」」
沈黙が家を包み込む。
「今日はゆっくり休んでください、お話は明日にでも」
「は、ハイ」
奈緒さん達は空き家の中に皆入って行った。
「「……」」
無言の二人、私は声をかける。
「ショック、だった?」
「それもありますが、今は貴方と長い時間を過ごすことができることが嬉しいのですよコズエ」
「はい、私もです」
「まぁ、コズエは普通の吸血鬼よりも長く、若いまま生きそうだな。愛し子だし」
「はははは」
私は乾いた笑いを浮かべた。
「もうじき、ドミナス王国の国境に到達します!」
「よし、進軍──」
ドーン!
ロガリア帝国の兵士達の場所に炎の雨が降り注ぐ。
「な、なんだぁ⁈」
「あ、あれはエンシェントドラゴン⁈」
『ロガリア帝国の愚か者共め、これ以上この国に足を踏み入れてみよ、焦土にしてやろうぞ』
「て、撤退、撤退ー‼」
「馬鹿者、此処で撤退してどうす……ギャアアああ‼」
指揮官らしき人物に炎が直撃して燃え上がり、黒焦げになる。
「ひ、ひぃいいいいい!」
それを見た兵士達は我を忘れて逃げていった。
『やれやれ、ロガリア帝国は厄介だな、もう少し脅してくるか』
クロウは帝都の方へと向かっていった──
「ふぁーあ」
昨日のドタバタが終わり、私は目を覚ます。
「さて、どうするべきか」
クロウが帰って来てる気配はない。
なので、いつも通りに過ごすことにした。
扉を開けると──
「……?」
「おはようございます、梢さま!」
和服を着た狐耳の生えた女の子尻尾は二つの尾が生えていた。
「えっと貴方は……」
「奈緒お父様の娘の一二三と申します」
「一二三ちゃんはどうして此処に?」
「梢様が忙しいご様子なのでお手伝いをと、お父様から!」
「手伝ってもらえることはあんまり無いよ?」
「それでもお父様からのご命令ですから!」
「……お母さんは?」
「お母様は私が小さい頃亡くなりました」
父親のことを強調しているから、母親はどうなんだろうと思ったら亡くなっていたのか。
「だから一二三は、お父様の役に立たないといけないのです!」
「一二三ちゃん、それは良いことかもしれないけど、良くないよ」
「どういうことですか?」
「一二三ちゃんはまだ子どもだ、遊んだりしないといけないし、勉強もしないといけない、何より──」
「冬はやることがないからネ‼」
と最期にぶっちゃける。
温室はこっちでやる問題だ、子どもにやらせる事ではない。
「お父様に言っておいて、冬だからやることがないから寺子屋に行かせて欲しいって」
「寺子屋があるんですか⁈」
「うん。ここの文字だけどね、書くのは」
「分かりました‼」
一二三ちゃんはとっとこ走って昨日作った居住区へと向かった。
一時間後奈緒さんがやって来た。
「梢様、申し訳ありません。親である私が気がつかなければいけないことを……」
「奥様を亡くして大変かもしれませんが、子どもが子どもである時間を奪ってはいけませんよ」
「はい……」
奈緒さんはそう言って頭を下げた。
「お父様ー、シルヴィーナ様が良かったら極東の言葉も教えて欲しいとー!」
「良いでしょう、父に任せなさい」
「はーい」
他の移住してきた子ども達も寺子屋で勉強しているみたいだ。
皆が寝静まったら改築しよう、そう決めた。
そして、改築した頃クロウが帰って来た──
黒い靄まみれで──
クロウは極東から来たからこそ、リーダーである奈緒に梢の真実の一部を教えました。
他の者が余計な事を言わないようにけん制です。
結婚話では、梢が三人と結婚すると驚かれるのと、ティリオとアインが生きられたのはハイエルフの血が流れ、一部先祖返りしていたことによるものであることが明かされます。
じゃないと二人は死んでいましたね。
そして、クロウはロガリア帝国を妨害しに行ったら、黒い靄を纏って戻って来ました、何があったのでしょう。
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