結婚式についてと、極東からの来訪者
シルヴィーナがイザベラへ梢の結婚式の件を連絡しており、イザベラは春が待ち遠しくなっていた。
一方梢は若干自棄になりながら式を挙げることを許可しつつ、その中で極東からの人が来ないか不安になり、神様に連絡を取る──
「イザベラ様どうしたの?」
「うふふ、とても大切な恩人の方方から手紙が届いたのです」
イザベラは同じ寮の部屋の子に話しかける。
「それって以前話した愛し子様ですか?」
「ええ、ええ! そうなの! 春に愛し子様が結婚式を挙げるから来て欲しいって愛し子様の従者の方から連絡があったの」
「それは楽しみですね!」
「ええ、楽しみだわ!」
イザベラは花の香りがする封筒の香りとインクの匂いを嗅ぎながら笑った。
「分かりました、春に結婚式も挙げます。ですが一言、そういうのは本人に事前相談してから次はやってくださいねぇ⁈ ドッキリもいいところですよ‼ ぶえくしゅえくしゅえくしゅ‼」
私は自分の思った事を口にした後、盛大にくしゃみをした。
「コズエ様⁈」
「う゛ー誰か私の噂してるのかなぁ」
と呟く。
「くしゃみにはそういうのがあるのですか?」
「あーうん、記憶うろ覚えだけど」
元の世界ではそう言われてたし、まぁ極東の人が此処に来ることなんてないだろうしね!
……無いよね?
不安になってシルヴィーナの家の外に出て神様に電話をかける。
『もしもし神様じゃよ』
「もしもし神様? 極東の人がこっちに来るってある」
『まぁ、今のところないじゃろうな。向こうはここから遙か遠い──つってもエンシェントドラゴンが本気の速度で飛んだら一時間もかからんがな。ほれ木霊の森、あそこが極東じゃよ』
「マジですか⁈」
『そうじゃよ』
『エンシェントドラゴンは他のドラゴンと格が違うからのぉ』
「へぇ……」
『希にエンシェントドラゴンが姿を現し、世界樹らしい木が見えてきた事で向こうはかなり大騒ぎらしいがの』
「……」
はーい、その騒ぎの原因私ですー。
『まぁ、お前さんがその原因だとは極東の人間は誰も気づいておらんし、極東の国から始祖の森まで来るのに何ヶ月も時間を要する』
「クロウってそんなに早く飛んでたんですね……」
『そうじゃよ、お前さんが夜型じゃからな。後吸血鬼じゃし』
「まぁ、そうですね」
朝になると眠くなるし。
『確かに始祖の森に愛し子がいるという噂は極東にも届いておる』
「届いてるんですかーい」
『じゃから極東の者は誰一人近づかん』
「何でぇ?」
普通気にならない?
『愛し子が始祖の森から出ないということは、愛し子は人と関わらない事を選択したと捉えているようじゃ。そんな愛し子と無理矢理関わったり、森から出したりしたら、神に呪われると思ってるようじゃ』
「ほへー……」
『というわけで、極東の方からは人間は多分来ないと思うから安心せよ、来ても居たときの記憶が大分抜けてるで通せば良い』
「はーい」
『それじゃあの』
通話を終える。
「閉鎖的な国なのかねぇ?」
とかつての日本の歴史を思い出し呟いた。
「コズエ様ー」
「おわ⁈ どうしたの⁈」
「一応ドレスに袖を通して欲しいんです、実際着た時と違いがあるか分かりませんから……」
「あ、うん」
シルヴィーナの家にもう一度入り、ドレスを着る。
びったり、という訳では無く少し余裕がありそうだった。
「どうですか?」
「うん、苦しくないし……」
少し歩いてひらりと翻す。
「大丈夫そう」
「本当ですか、良かったです!」
「じゃあ、ドレス脱ぐね」
「お手伝いします!」
女性陣総出でドレスを脱がしてくれた。
「ああ、春が楽しみです!」
「ユグドラシルの根元で皆で行いましょう。馬車を出しますので」
「ほへー」
シルヴィーナの時、馬車にシルヴィーナとレームさんが乗ってたのはそう言う訳か。
「シルヴィーナ、私その時何かすることはある?」
「何もないですよ、ユグドラシルの根元まで言って私達のように誓いを交わすんです」
「え、キスするの?」
「そこは側妃を持って居るというドミナス王国の国王陛下に相談してくれました、クロウ様が」
「いつの間に⁈」
『指輪を交換するそうじゃ、ドミナス王国では。で、エルフのアクセサリー屋がお前さんらの所に指輪のデザイン相談しに行ったじゃろ』
「そういえば……」
一ヶ月程前──
「コズエ様」
「レガンさんどうしたんですか?」
レガンさんが家にやって来た。
「指輪のデザインに悩んで居るので相談に乗ってくれません?」
「いいですよー!」
私は嬉々としてレガンさんの家に行き、レガンさんと指輪のデザインに付いて話、男女兼用がいいという話の元デザインした。
最終的に、少し曲がったデザインで小さな宝石を並べるものに落ち着いた。
「アレかー⁈」
『だってお前さんの指輪って言ったらいらんの一択じゃろうし』
「うぐおおお、このエンシェントドラゴン。私の行動と考え先読みしてやがる‼」
『じゃって、お主そうしないと自分の結婚式なんていらんと言いそうじゃから』
「いや、それは無いよ! 式は挙げたいよだけどさ……」
『三人と挙げる方法が分からんから止めとく、じゃろ?』
「ぐむ」
痛いところを突かれて、言葉を失う。
『まぁ、解説するとお主が先に神官役から指輪を貰いはめる。そして、指輪を三つ受け取り三人に指輪をはめさせる。それでおしまいじゃ』
「き、キスとかはしなくていいんだよね」
『頬のキスでゆでだこになるお前さんがキスなんか流れに入れようものならドレス姿で逃亡するじゃろ』
「うわー! 目に見えるー‼」
私は頭を抱えた。
絶対逃げ出す。
そんな事を考えていると──
「ん? こんな冬の時期に誰か来た?」
『そうじゃの……おや、これは珍しい連中じゃの?』
「?」
『まぁ、会いに行けば分かるじゃろ』
クロウおじちゃんは人間の姿になる。
「では行くぞ、梢」
「はいはいー」
コートを羽織り、私はクロウと森の入り口に行く。
すると、どう見ても「和服!」な格好の真っ白な狐耳と複数の尻尾を生やした人達が居た。
「クロウ、この方達は?」
「獣人と別の存在『妖怪』と呼ばれる存在だ、極東の」
「へ?」
ちょっとー神様ー!
極東の人は来ない言ったじゃないですかー!
「その尾と耳、白狐の一族だな」
「その通りですが貴方様は?」
「我はエンシェントドラゴンよ」
「エンシェントドラゴン……! そちらの吸血鬼は?」
「神々の愛し子よ」
「なんと⁈」
一団はざわめく。
「お前達白狐の一族は木霊の森の守人だったのではないか」
「その通りです」
へーそうなのか。
「はい、私共は世界樹が突然復活した事を気になり、唯一入れる長老と世界樹が対話したところ『愛し子が始祖の森より来て育てている』という話を聞き、ならば今の愛し子が何をなしているのか──それを知るためにはるばる極東より参りました」
「定住する気は無い? どちらだ?」
「愛し子様がヒトを呪う存在ならば立ち去り、ヒトを愛する存在なら定住し、見定めよと」
「ならば、定住だな。梢、先に戻ってクラフトとやらで此奴等の家を作ってやれ」
「はいはいー、家はいくつ必要ですかー!」
「五つあれば……」
「はーい! じゃあゆっくり来て下さいねー!」
私はその場を立ち去った。
まだ開拓してない運動場の奥を開拓することに。
「どっせい!」
あっという間に開墾は終わり、クラフトで極東風の建物を五つ作る。
「こんな感じかな」
極東風というか和風の建物を目の前にして考えてると神様から連絡が。
「はい、もしもし、神様?」
『すまん、人はこんと言ったが人外は来ないと言っておらんかったわ』
「どこのトンチですか!」
むがーとなった。
『まぁ、これ以上は多分こないじゃろ極東からは』
「ならいいんですが……」
極東出身が来られると、極東じゃないことがバレる。
ちょっとそれが怖くなった。
イザベラへの手紙が梢の許可ではなくクロウの許可を得たシルヴィーナが実は書きました。
他のドミナス王国の王族宛も書いてます。
結婚式は梢が三人でやるのが思いつかないからやらないのを察してクロウ達が先回りしてそのやらない理由を潰しておきました。
梢にとっては騙し討ちみたいな感じです、ですが悪意がないので梢は受け入れてます、しぶしぶですが。
そして極東からの来訪者白狐の一族、人は来ないが人外は来ないとは言ってないという神様の発言に梢は何だそりゃ、でしょう。
悪い方々じゃないのはクロウも分かっているから来訪者である白狐の一族の意見を通しています。
ただ、極東出身の方々が来た事で極東出身じゃないことをバレることが梢は怖いようです。
嘘ついてる訳ですからね。
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