ブリークヒルト王国から~自業自得で呪われる令嬢~
雪で遊んでいる子ども達を見ている梢のところに白亜がやって来る。
ブリークヒルト王国の貴族の紋章が入った馬車がこちらに来ているとのこと。
梢は冬場に何を考えているんだと思いながら、クロウとシルヴィーナと共に森の入り口に向かう──
冬になり、子ども達は運動広場で厚着になって雪遊びを興じている。
その中に混ざっている大きな白い犬元い狼、萌黄と白虹だ。
ずいぶん大きくなったなと、我ながら思う。
産まれて一年経ったか、経ってないかそれくらいなのに、もうあんなに大きい。
が、雪遊びに混じってるところからまだまだ子ども。
契約の時の言葉が効いたのか、あれ以来畑を掘り返したりしなくなった。
シルヴィーナも困らないし、私も困らない。
もしそうしていたなら神様から貰った神業でサマーカットにしてやるつもりだったからね。
『梢様』
「白亜どうしたの?」
『少し外に出ていましたが、ブリークヒルト王国の貴族の紋章が入った馬車がこちらに来ているようです』
「はぁ?」
こんな冬場に何を考えているの?
「ちょっと気になるからクロウ呼んできて、私はシルヴィーナを呼びに行くから」
『はい』
私はシルヴィーナの元へ行った。
「シルヴィーナーちょっと良いー?」
どたんばたんと音が聞こえた。
「な、何でしょうか⁈」
「な、なんか仕事してた? ごめんね?」
「いいえ! それより何でしょうか?」
「白亜がね、この森にブリークヒルト王国の貴族の馬車がやって来てるんだって」
「分かりました、お供いたします」
「クロウにも付いてきて貰おうか」
「そうですね」
クロウを呼び出し、私達は森の入り口へ。
其処には厚化粧のなんかちょっとナルシズムが入ってそうな貴族の令嬢がいた。
「神の愛し子を寄越しなさい」
「あー……私ですが、何か?」
「貴方みたいなブスが愛し子ですって?」
びきびき
ひー!
クロウとシルヴィーナがガチで切れてるー。
「その口焼き焦がしてやろうか……」
「ならば私は目を射貫きましょう」
クロウの口からは炎が出て、シルヴィーナは弓を構えている。
「ひっ⁈ わ。私を誰だと思っているの! ブリークヒルト王国第二王子クラン様の婚約者よ!」
令嬢は短く悲鳴を上げてからそう言い出したので、皆でひそひそ会話をする。
「あれ、ブリークヒルト王国は手出ししないよう紙送ったんじゃ無かったっけ?」
「送ったな」
「知らないで来たんでしょうね、じゃあ殺しましょう」
うわ、シルヴィーナ意外と物騒すぎる。
「いや、流石に王子様の婚約者を殺すのは……」
「あの娘、グレッグとか言う大司教と匂いが似ている」
「もしかして親類とか?」
「親類ではなさそうだな」
「じゃあ何だろう?」
「グズグズしないで私の命令が聞けないの!」
「悪いけどこの森から出るつもりはないのでお断りします」
「何ですって! 兵士達、そのブスを連れて──きゃああああ‼‼ 痛い痛い痛いいいい‼」
『愛し子様をブスっていうなこのブス‼』
『お前の方が醜いんだよこのドブス‼』
『だから呪ってやるー‼』
『呪われろ‼』
「ああ……」
やっちまったよ、妖精と精霊達が。
令嬢は真っ黒な茨が体の模様になり、顔にもそれが出ている。
どうしようと悩んで居ると、別の馬車が来た。
「ジスティーナ……やはりこんな行動をしたのか」
「く、クラン様。た、助けてください」
「私は言ったはずだよ、愛し子のいる始祖の森に手を出すな。愛し子に手を出すな、と」
「それは……」
「……私が第二王子で次期国王になれないのがそんなに不満か?」
「だって! クラン様の方が優れて──」
「兄の方が優れているのは皆が知っている! 父上も母上も、私もだ! 君は愛し子を手に入れれば王の座が私に転がり込んでくるとでも思ったのか?」
令嬢は頷いた。
「愚かな……ジスティーナ、私は今ここで君に婚約破棄を言い渡す。約束を破り、呪われた君を妻にするほど私は愚かではない」
「そ、そんなぁ……」
令嬢はへたり込んでしまった。
王子様が頭を下げる。
「愛し子様、私の元婚約者が酷い仕打ちをしてしまい、申し訳ございません」
「あーいいんです、それよりもその人達連れて帰って下さい」
「勿論です」
王子様は近衛兵達に命令すると令嬢を馬車にいれ、そのまま二人とも立ち去ってしまった。
「「「……」」」
見送る私達。
「取りあえず、私がブスと言われたことは内緒にしておこうか」
「何故だ」
「何故です⁈」
「いや、ブリークヒルト王国出身のミカヤさん達の立場悪くなりそうだし……まぁ、グレッグ大司教と関わりがあった何らかの人物が来たと言う体で話はしようか」
「まぁ、それは事実だろうしな」
「納得いきません、コズエ様をブスなどと……」
「はいはい、言わせておけばいいんです」
「あの女の方が不細工ですのに、何なんですかあの厚化粧は!」
「よほど自分の顔に自信がないんだろうね、そうしておこう」
「ですよね!」
争い事はもう御免。
さて、村に戻ろうか。
村に戻ると皆心配そうな顔をしていた。
「大丈夫、お帰りいただいたから」
「梢が目的だったが、コズエを侮辱した結果精霊と妖精に呪われて、あげく婚約者に婚約破棄されて連れ帰られたぞ」
「うわだっせぇ」
「ルフェン君、お口が悪いぞ」
とルフェン君の頬をむにむにする。
ちょっと楽しい。
「コズエ様が目的なのになんでコズエ様を侮辱したんですか?」
「……梢が愛し子だというのを信じなかった結果侮辱したのだ」
よし、良いぞクロウ。
ブスなんて言われたと言ったら村が荒れるからな!
「……ええいやはり我慢ならん! あの雌は梢をブスと罵ったのだ!」
「ギャー!」
クロウー‼
我慢して欲しかったー‼
どしてやー‼
「何だってコズエ様をブスだって?」
「どこの貴族だ!」
「まだ馬車なら遠くに言ってないはずだ追いかけるぞ‼」
「わー‼ 皆止めて止めて‼ 言った人は妖精と精霊にがっつり呪われてるんだから、それに婚約破棄もされてるし! 私はそれで十分だから‼」
と叫ぶ。
「コズエ様が言うなら……」
「仕方ない、よなぁ……」
と渋々引き下がってくれた。
取りあえず疲れたし、家に帰ろうと思った。
家に帰るとアルトリウスさんに、アインさんに、ティリオさんがいた。
何故?
「コズエ、村人達の話を聞いていたのだが……」
「どこぞの輩が君のことをブスと」
「聞き捨てなりません」
ギャー‼
聞かれちゃ不味い三人に聞かれてたー‼
「素性を少しでも教えてください。呪います」
「その相手の食物を毒に変えます」
「殺そう」
「だー! だからいらないってば‼ その女性妖精と精霊に呪われて、王子様が婚約者だったみたいだけど婚約破棄されたんだからもういいの‼」
私は叫ぶ。
「ブリークヒルト王国で婚約者、ああジスティーナ・ファミリアか」
「私も知ってますね、姉が病弱だからと第二王子の婚約者に収まったとか」
「でも、姉を病弱にしたのはジスティーナと後妻だとか」
「……詳しいね」
「色んな所からの情報が妖精と精霊から教えられてましたから」
「情報収集もさせられましたから」
「お姉さんが可哀想ね」
『じゃあ、僕らが後妻も呪ってくるー』
『あの馬車追いかければ良いしーすぐだよー』
妖精と精霊達はそう言って居なくなった。
「なんかとんでもないことになっちゃった?」
いや、いつものことか、と首を振る。
「ともかく物騒なことはしないでね!」
「わかった」
「分かりました」
「畏まりました」
本当に分かってくれてるのかは不明だが返事をしてくれたので私は納得してくれたことにした。
『なんだい「愛し子」』
「ジスティーナと後妻をとびきり呪ってやって欲しい、そして姉の呪いを解いてあげて欲しい」
アインがそう言うと妖精と精霊は頷いた。
『わかった』
『いってくる』
それを見送ってアインは呟いた。
「これくらいなら良いでしょう」
と──
はい、梢をブス扱いしてますが、向こうさんの方がお顔に問題があるので厚化粧をしています。
梢はブスではありません、可愛い感じの女性です。
それをブスと言われたので皆怒髪天を衝く勢いです。
アインが最後自分の妖精と精霊に、後妻とジスティーナをより呪うことと、姉である女性の呪いを解くように命じました、次回どうなるのでしょう?
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
ブクマ、イイネ等有り難うございます!




