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冬来たりて~子ども達の服を繕う~

冬間近の始祖の森。

梢は頼まれていた赤ん坊達の服をミシンなどで縫って作っていた。

そしてできあがると、配りにいっていた。

配り終えた梢はうたた寝をするが──




 冬の精霊と妖精、秋の精霊と妖精が入り乱れて飛ぶ時期になった。

「さてと、厄介ごとは大分片付いたかな?」

「梢、冬支度はまだか?」

「あ」


 私は慌てて薪を作り、乾燥してもらった。


「もう、お家改築したのになんで私の家だけ薪が必要なの」

 とむくれる。

 が電話が無いので、ノーコメントなのだろう。


 神様め……


 まぁ、暖炉にはロマンがあるから良いんだけどさ。

 冬になったら焼きマシュマロ一人で楽しもう、この世界にはマシュマロは無いからね。

 アプリの売買機能で購入できるし。


 村を見れば皆冬支度。


 冬は作物がお休みの時期なので、温室の作物や果実と、聖獣のお世話くらいになる。


 そんな事は考えていたらちらちらと白いものが降ってきた。

 雪だ。


 自覚したら少し寒くなってきた。

「家に入ろうっと」

 家に戻り、薪で火をつけ家を暖める。

「夏場は涼しいんだけどねぇ、冬場も暖かければいいのに」

 と愚痴を言う。

「やることやっちゃったし、服作りでもするか、頼まれてるし」

 と言ってデザインを作り、クラフト能力で作っていく。

 今年生まれた赤ん坊達服が小さくなったからもし良ければ私に作ってほしいと言われたのだ。

 昨日サイズは全部測ったし、後はさくさく作るだけ。


 足踏みミシンと手縫いを使い、赤ん坊の服を全員分作り終えたのは朝方。

「持って行くのは夕方でいいか……」


 私は棺桶で眠る事にした。


 夕方目を覚ます。

 鞄の中に赤ん坊の服を入れて村人達のいる家へと向かう。

「コズエ様、こんな上質な服ありがとうございます」

「いえいえ、大事に使ってください」

「はい!」

 早速赤ん坊は着せ替えさせられる。

 いやそうにむずっていたが、私の作った服を着ると大人しくなり、キャッキャと笑いだした。

 最初の居住区を回ってから、ローレンス一家のところへ向かう。

「お願いされていた、サフィロ君のお召し物です」

「ああ、とっても素敵だ! 早速着替えさせてこよう」

「はい」

 イリスさんはそう言って家の奥へと移動した。

「妻とよくしてくださり、感謝します愛し子様」

「いえいえーお気になさらず」

「グレイス、見てくれ似合ってるだろう?」

 と私が作った赤ん坊服に着替えたサフィロ君を抱いてイリスさんが現れた。

「ああ──とても似合っている。可愛いぞ、サフィロ」

「嫌がらず来てくれて良かった」

 サフィロ君は私が買ってあげたおしゃぶりをしゃぶっている。

 とてもお気に召したようだ。

「さて、最期はハイエルフさんのレガンさん一家だね」

「ずいぶんと色々やっているが、コズエ様。大丈夫かね?」

 イリスさんが声をかける。

「いやぁ冬は割と暇なんで、大丈夫ですよー」

「それならいいが、無理はするんじゃないよ」

「はい」

 私はそう言ってローレンス一家の屋敷を後にした。



「レガンさん、テレジアさん、お届け物に来ましたー」

「おお、コズエ様か。ありがとう」

「コズエ様ありがとう」

「ハイエルフの服は物持ちが良いと言われますが流石に90年も前のを着せるのはどうかと思い……」

「え、そうなんですか?」

「はい、子どもが生まれても男女兼用のデザインで作っていたのですが、90年も立つと劣化しており、そんなものを娘に着せる訳にもいかず……」

「もっと早く仰ってくれてもよかったのに」

「すみません、本来は自分達で解決することなのですが、久方の赤ん坊の世話で手が回らず……」

「あー赤ちゃんのお世話って大変ですよね。はい、これが作ってきた服達です。男女兼用のデザインでとお願いされたのでそんな風に作ってみました」

 私はそう言って赤ん坊の服を渡す。

「ありがとうございます」

「では、失礼しますね」

 用事は終わった、赤ちゃんのお世話なんて私にはできないし邪魔者は退散だ。





「ふーあったかい」

 暖かな部屋で、ロッキングチェアーに腰をかけてゆらゆら揺られる。

「ふぁあ……疲れた、少し寝よう……

 私は揺られながら、心地よい眠りに誘われた。



「……エ様……コズエ様!」

「んぅ?」

 呼ぶ声に起こされた、目を開けるとシルヴィーナが居た。

「寝るなら棺桶で寝てください、コズエ様。心地よいからといって、その不思議な椅子に座ったまま寝ると体がガチガチになりますよ」

「あ、ごめん」

 起き上がり時計を見る。

 まだ、夜中だ。

「シルヴィーナ、こんなに遅くまで起きてていいの?」

「もう寝ますが、コズエ様の身体に危険がないか確認に来てるのです」

「いつも?」

「はい」

 あちゃー。

 なんか申し訳ないなぁ。

 いや、私が自分の身の安全に無頓着すぎるからか?

「もうちょっと自己防衛を考えた方がいいかなぁ?」

「コズエ様には難しいでしょう」

 バッサリと言われる。

「なんでぇ」

「クロウ様が仰っていました。『コズエは抜け取るから防衛意識が欠けすぎとる』と」

「んなー!」

 失礼極まりない!

 だが、事実。

 ぐぎぎぎぎ。

「分かりましたか? では、お休みなさいませ」

「うん、シルヴィーナお休みなさい」

 扉が閉まると私は盛大にため息をついた。

「心配かけちゃってるなぁ」

 そう言ってロッキンチェアに揺られる。

「でも、今の性格変えられないしなぁ……」

 私はぎこぎこ揺られながら思考する。


「……面倒だし、寝るか!」


 私は時間がまだたっぷりあるにも関わらず寝ることにした。

 考えるの面倒くさい。





 そしてたっぷりと寝た夕方に、私は起きた。

「ふぁああ……よく寝た」

 ジャージに着替えて、コートを羽織って外に出ると──

「コズエ様! お早うございます!」

「お早う」

「失礼ですが、コズエ様の体を測らせるいただけませんか」

「いいよー」

 言われたのでメジャーらしいものでシルヴィーナは測った。

 身長も勿論、事細かに。

「失礼しました、では私一度村に帰らせていただきます」

「うん、いいよー」

「私の着ている服がこの世界と合わないから新しい服でも作ってくれるのかな?」

 とその時私は予想していた。





 それが大間違いであることに気づいたのは、春が近くなってからで──





「さて、今日もお仕事しましょうか」

 シルヴィーナの考えも知らず私はのんびりと聖獣の世話を始めた。







村の人達が梢に赤ん坊の服を頼んだのは、梢の加護で赤ん坊が病気になること無く健やかに育ちますようにという願いを込めての物です。

実際そのような加護がついてますが梢は気付いてません。


そして梢の防犯意識の低さ、村人達が善良すぎるからこうなるんですよね。


後、シルヴィーナが作っている物、一体何なんでしょうか?

普通の服ではありません。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。


イイネ、ブックマーク感謝致します。

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