食欲と実りの秋
秋になり、梢はちょっと趣向を変えて畑仕事などではなく、森の幸を収穫しに行くことに。
シルヴィーナに頼んで同行して貰い、採取したのだが──
秋、といえば。
読書の秋、運動の秋、そして何より──食欲の秋!
まぁ、いつも畑仕事してトラブル解決ばかりだから今回は山の幸を収穫したい。
「と言うことで、この森に森の恵みと言える植物元い食物はある?」
「ありますよ、コズエ様と出会う前に食べてましたから」
「よっしゃシルヴィーナ、良ければ案内して!」
「はい!」
シルヴィーナにお願いして森の幸を頂戴しに行くことに。
森の幸を探しにいったのだが──
名前が違うだけの知っている山菜や木の実が多かった。
例えば針の実、これは栗だった。
まぁ、そんな感じで収穫しつつ、家に戻った。
灰汁を抜くのは抜いて、平気なのはそのまま調理したり、漬け込んだりした。
「よし、ミナリはジャムと、お酒に漬け込んだし、ヒセの葉は醤油漬けにしたと、ご飯が進むぞこれは」
ミナリとはアカフサスグリ。
ヒセの葉は葉ワサビの事である。
ヒセだとワサビになる。
「さて、これからどうしようかな……そうだ、林檎のパイでも作ろう!」
時間はたっぷりあるし、やることはやったし、私は林檎のパイを作ることにした。
パイ生地を作るのには時間がかかるのでアプリで購入した。
林檎はレモン汁と砂糖を入れて煮る。
煮崩れしないようにコトコトと。
それが終わったらパイ生地で包み、卵液を塗る。
「外の釜で焼くか」
私はパイを大事に持ち、釜のあるところに向かう。
「アルトリウスさん」
「コズエか」
「釜の火の番をしてるの?」
「ああ、明日のパンを焼いている最中だ」
「良かった、じゃあ私も」
へらを使ってパイを入れる。
「四角いが……パイ、か?」
「正解、林檎のパイよ」
「ああ、あの赤い果実か……ドワーフの女達が飲みやすいと好評の酒になる果実だな」
「シードルね、男の人達には甘すぎるみたい」
「シルヴィーナも、シードルは悪酔いしないとたまに飲むらしいぞ」
「あ、そうなの?」
「母も酒をあまり飲まんがシードルとかは別物だ」
「それは良かった」
話をしながらパイを見つめる。
「そろそろ良さそう」
釜から出すとパイが綺麗に焼けていた。
「美味しそう」
「そうだな」
少しパイを冷ましてから小さめのナイフでパイを切り、アルトリウスさんに渡す。
「一つどうぞ、口止め料ってことで」
「口止め料?」
「お菓子作って一人で食べたの子ども達に知れると作ってコールが凄いので」
「ああ、なるほど」
「では」
私はにこりと笑って残りのパイを持って家へと戻った。
アルトリウスは籠の中のパンを見てから貰ったパイを口にした。
「ああ、美味いな」
そう呟いて、ペロリと平らげた。
「いつもならワインが欲しくなるところだが……」
「今は不要だな」
そう言ってまだ焼かれてないパンを焼き始めた。
「コズエ様、すみません。起きてください」
「んあ?」
シルヴィーナが棺桶を叩くので蓋を開ける。
「んーどうしたのー」
「実は兄様の行商仲間のレガンさんの奥様が出産なさって……」
「え⁈ 大丈夫取り上げる産婆さんみたいな人はおる?」
「はい、このたびこの村に移住をしてきた人の中に産婆の母を持つ方がおりまして、その方のおかげで出産は滞りなく無事に終わりました」
「そっかー良かった」
私は安堵する。
「そこでなんですが、愛し子であるコズエ様に祝福をしてもらいたいと」
「祝福? どうやって?」
「水の精霊と妖精が作った湧き水から出た水に浸した世界樹の葉を額に張って、水で頬を撫でるんです」
「それ吸血鬼の私やっていいの?」
「愛し子様ですから!」
「泣き出してもしらんよー……」
と言いながらハイエルフ居住区へとシルヴィーナと足を伸ばす。
「愛し子様、お待ちしておりました! レガンの妻のテレジアと言います」
赤ん坊を抱いた女性はそう名乗った。
「ひゃ、ひゃい」
「レガンから愛し子様の事は聞いております。一人でここまで開拓なさった事も」
「ま、まぁそうなりますか」
「ではこの子が──アミィが健やかに育つように祝福をお願いします」
「えっと……」
「コズエ様、こちらが使う道具になります」
「あ、有り難う。シルヴィーナ」
産まれて間もない赤ちゃんにこういう事するのは呪いか何かかと思いつつもやる。
額に柔らかくなった世界樹の葉を貼り、頬を水で塗る。
少しとろみのある水だった。
「どうか、この子が健やかに育ちますように」
と祈り、おしまい。
葉っぱを剥がし、顔を拭う。
「泣かなかったですね、さすが愛し子様」
「う、うーん。どうかな?」
薄々感づいていたけども「吸血鬼<<越えられない壁<<愛し子の要素」なんだなぁと思い知った。
だって、吸血鬼って言ったらシルヴィーナどんな扱いか教えてくれないレベルってことは其処まで忌避されてんじゃん!
なのに、今の私は愛し子の要素強め、加護強めというかマシマシだから吸血鬼でも関係無いって感じになってる。
うーむ、当初の吸血鬼スローライフとは大きく変わっているが……まいっか。
と、思い直す私であった。
「じゃあ、失礼しますね」
「ええ。ありがとうございます」
居住区を後にしてシルヴィーナに聞く。
「あのさ、シルヴィーナ」
「なんです、コズエ様」
「皆私が吸血鬼だって知ってる?」
「知ってますよ、兄が説明してますし、私も説明しましたから」
「なら、良いんだけど」
「コズエ様──」
「お、ルフェン君。どうしたのかな?」
「果実の収穫全部終わりました来て下さい!」
「おお、凄いね」
「アイン兄ちゃんや、ティリオ兄ちゃんが手伝ってくれたから凄く早く終わりました」
「そうなの」
少し驚きつつも、果樹園に向かう。
たくさんの加護に果実がつまっていた。
「食べたい分は皆持って行っていいよ、数日も経てばまた実らせてくれるからね」
「残りはどうすればいいですか?」
「貯蔵庫の木箱の中に入れておいて、あそこめちゃくちゃ寒いから貯蔵庫外のコートは羽織っておいてね」
「分かりました」
アインさんとティリオさんは子ども達と共に籠を持っていった。
「で、私はそこから酒を造るようの果実を取る、と」
「あ、あのコズエ様。お願いしたい──」
「シードルの事? 今も結構あるから好きなだけ持って行っていいよ」
「ほ、本当ですか⁈」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます!」
シルヴィーナに私の飲料貯蔵庫へ案内すると、たくさんあるシードルを10本ほどマジックバックに入れた。
「シードルだけでいいの?」
「これが悪酔いしませんから、あと──」
「林檎ジュースでいい?」
「はい!」
林檎ジュースも持たせる。
「有り難うございました」
「じゃあ、お祝い楽しんでね」
「コズエ様も参加しません?」
「いいよ、今日は静かにしていたい気分だし」
「そうですか……分かりました」
シルヴィーナは頭を下げて立ち去った。
「さて、聖獣達のお世話を……」
「もうやったぞ」
とマジックバック片手に聖獣の家畜小屋からアルトリウスさんが姿を見せた。
「本当?」
「ああ」
と言って絞った乳が入った瓶と、卵、毛、糸を見せる。
「うん、上出来。ありがとう」
「いや」
「良かったら中でお茶しない?」
「ああ」
断られるかと思ったけど予想外だった。
私は畜産物をアイテムボックスにしまうと、家の中でアルトリウスさんとゆっくりお茶をしながら状況報告をし合った。
リサさんは、この村に来てから元気になり、毎日村人の母親勢と共に機織りやら糸づくりにいそしんでいるとか。
最初はあんなに憔悴仕切ってたのに、元気になって良かったと私は思った。
名前が違うだけで同じ植物ってあったりしますよね。
そして四角いパイはパイシートで作りました、私も昔パイを作る時は四角いパイシートで作っていました。
後、ハイエルフの赤ちゃんへの祝福。
愛し子要素が強いため泣かれません、普通の吸血鬼なら泣かれます。
そして村の住人初期勢のリサも元気になっていることに梢は安堵しています。
最初は凄いやつれていましたからね夫を失ったショックで。
実は一万PV達成しました。読んでくださっている方々有り難うございます!
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです!




