シルヴィーナの恋
神様から他人のそら似と言われ安心した梢。
それを他の者にも伝える。
健康になったレームは依頼主の元に肖像画を届けに行くと言い、それに対してクロウがついて行くと言い出したので、梢は二人を送り出すことに。
送り出したあと、梢とシルヴィーナは話始める──
「なーんだ、ただの他人のそら似か」
私は通話を切ると、村の方に戻った。
「コズエ様、もしかして神々とお話になられていたのですか」
シルヴィーナがそう言うので私は笑った。
「うん、他人のそら似だってさ。実際私は極東の国の出身だしね」
と嘘をつく。
「聖女は極東の国にも行った記録がありますが……妊娠していればすぐに分かるはずですしね、聖人だったなら隠し子だったという可能性もありますが」
『あんまり詮索しないほうがいいんじゃよ』
「ど、ドラゴン⁈」
『そうじゃよ。儂、エンシェントドラゴンじゃ』
「紹介するわレーム。この方はエンシェントドラゴンのクロウ様」
「な、何故エンシェントドラゴンが始祖の森に……⁈」
『愛し子がおるのが分かったからじゃよ。前回の愛し子は儂は助けてやれんかったから今回はとな』
「前回どうして助けられなかったの?」
『当時の愛し子でも負担が大きい瘴気の穴を塞いでいたんじゃ。愛し子に頼まれてな、それに手間をかけている間に愛し子は処刑、儂はなーんもできんかった、その後暴れたが神様に止められるしのう』
「……」
『じゃが、今回は違うぞ。儂は梢を守ると決めたからの』
「──ありがとう」
私はなんとか言うことができた。
『何、いつも色んな飯を作ってくれるから気にせんでいいんじゃよ』
「……」
『ところでそれ何処の国の誰からの依頼じゃ?』
「ドミナス王国宮廷画伯ジェスト・フェルナンからの依頼です。レイジ・フェルナンの子孫に当たります」
「なるほど、なんで聖女の肖像画を?」
「正確にはジェスト・フェルナンの父からの依頼なのですが、稀代の画伯であるフェルナンの最高傑作と呼ばれる聖女の肖像画だけが家にない、それをどうしても見つけてくれと、大金叩かれましてね、白金貨100枚」
「わぉ大金」
「では、私ドミナス王国にこれから向かう──」
「待ってレーム!」
シルヴィーナが声をかける。
「貴方はこれが終わったら里に帰るの?」
震える声で言っている。
そうか、里に帰ったら、レームさんも誰かと結婚させられるかもしれないから……
「帰らないよ」
「え」
「旅人になるときに自分の荷物は処分したし、それに──」
「シルヴィーナが居ないんじゃ帰る意味もないだろう?」
「え、それってもしかして」
「おっと、続きはこの肖像画を依頼主に持って行ってからだ! じゃあ──」
ちょっと待って、なんかそれ死亡フラグ、とか思って居たらクロウおじちゃんが身を乗り出した。
『儂が連れてってやるぞ』
「え、いいんですか?」
『梢、すぐ戻ってくるから危ないことはしちゃいかんぞ』
「しないわよ」
『シルヴィーナや、梢のことを頼むぞ』
「はい!」
そう言って、レームさんを乗せてクロウは飛んで行った。
「シルヴィーナさん、良かったね」
「え⁈ な、何がです⁈」
声がうわずっている。
「レームさんのこと好きなんでしょう? レームさんもシルヴィーナのことなんかアレっぽいし」
「ま、まだ分かりません!」
「どうかなー?」
私はニヨニヨしながら青春っていいなぁと思った。
ブリークヒルト王国のフェルナン画伯一族の屋敷に着いたレームとクロウ。
クロウは人間の姿になって、レームについて行った。
「ジェスト・フェルナン様。こちらがレイジ・フェルナンの稀代の傑作とされる聖女の肖像画になります」
「おお……! 間違いない、このサイン、この独特の題名、フェルナン家の始祖、レイジ・フェルナンの作品だ‼ 何処にあったのだね⁈」
「フェルナン殿の邸宅の一つにありました」
「そうか……では代金を払おう」
依頼主が手を叩くと、袋を持ってきた。
計りに乗せられた袋の中を見る。
「確かに白金貨100枚、頂戴いたしました」
「これで、父も大人しくなる」
「大変ですね」
とレームは失笑し、クロウは無表情のままだった。
「では帰るぞ、レーム」
「はい、クロウ様」
二人は屋敷を後にした。
「お前一人だと値切られていたぞ」
「あ、やっぱりですか」
「我が威圧をかけていたから向こうは百枚すんなりだしたのだ」
「クロウ様に来ていただいて良かったです」
王都の外へ出ると、クロウはドラゴンに戻り、レームはその背中に乗って始祖の森へと向かった。
夜遅くに、レームさんは帰って来た。
「シルヴィーナ!」
「レーム! 仕事はもう終わりなの?」
「ああ、と言うかこれで廃業かな」
「え?」
「シルヴィーナ俺と結婚してくれ」
「貴方まで追放者になるのよ?」
「いいさ、あんな閉塞的で、頭悪い長老連中がいる里なんざこっちから願い下げだよ」
「レーム……」
「で、返事は?」
「勿論よ。貴方と一緒に過ごさせて」
「やったぜ!」
レームさんはシルヴィーナを抱きしめた。
ちょっと寂しい気もするが、これが一番いいのだろう。
「あ、でも私この森の護衛と、愛し子様の畑のお世話もしてるから」
「なら俺もするよ、教えてくれ」
楽しげに話し合う二人を私達は見つめる。
「よし、これで私は正式に長老に報告できますね」
「レイヴンさん? 何を?」
「シルヴィーナとレームは愛し子の守人、その証拠を突きつけて追放者の烙印を消させていただきます」
「あのーどうやって」
「こうやってだ」
「あびゃ⁈」
背中をめくられ、紙を押しつけられる。
「ほれ」
「ありがとうございます」
「だから! クロウ! 勝手に女性の服をめくるな!」
「そうか、次からは気をつける」
「……ええ、神々と精霊、妖精達の言葉が書かれています。これを持って私は里へ一度戻ります。何、すぐに戻って来ますよ」
「何かあったら、反対する里の人受け入れる準備しますので」
「その時はお願いします」
レイヴンさんは笑いながら言った。
「梢準備だけはしておけ」
「了解!」
クロウに言われたのでまた村を広げていく。
なんか色んな種族の方方増えてるなぁと今更思う。
「ここが果樹園よ、毎日色んな果実が実るから村の子達と収穫してるの」
「うわ凄い! どうして毎日実るんだ⁈」
「妖精と精霊、あとコズエ様の加護かしら」
シルヴィーナがレームさんを案内している。
「シルヴィーナ、もう遅いから案内は明日にしたら?」
「そうですね」
「私は朝まで畑の整備とかしてるから、それ終わったら交代してね」
「はい」
「噂では聞いていたが、やはり吸血鬼でしたか」
レームさんが腕を組みながら言う。
「忌避してしまいます?」
「いいえ! 吸血鬼やダンピール相手にも商売はしてきましたから!」
「ははは、なるほど」
「では、シルヴィーナ。君の家に泊まらせてくれないか?」
「いいわよ、貴方はあいてるベッドを使って。コズエ様がお兄様が来るとき用もかねて三つベッドを家の中に作ってくれたから」
「コズエ様、感謝いたします」
「いえいえ」
「じゃあ、案内するわ」
シルヴィーナが家へと戻った。
森に静寂が訪れる。
「さて、畑仕事に戻るか」
たった一日で濃すぎることをした私はちょっとヘロヘロになり、畑の整理が終わると早々に棺桶に入って眠りに落ちた──
安心した梢はシルヴィーナ達に事情を話します。
クロウはあまり詮索しないことを伝えます。
そこで、何故クロウが前の愛し子を救えなかったのか発覚します。
だから梢にはある意味過保護です。
シルヴィーナの恋は見事実りましたね。
レームもシルヴィーナも運が良かったですね。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。




