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シルヴィーナの事情と前の聖女の肖像画

始祖の神森に夜明け前帰還した梢をシルヴィーナが出迎える。

そこでシルヴィーナにユグドラシルから聞いた情報をたずねる梢。

どうやら事実だった様子。

そんな話の最中、シルヴィーナは梢にある質問をした──





「ただいまー!」

 夜明け前に始祖の神森に到着し、目を覚ましているシルヴィーナさんが出迎えてくれた。

「どうでしたか?」

「苗木ちゃんと植えてきたから、これからはたまに様子見して行くよ」

「それは凄いです!」

「あとさ……」

 興味本位というか、どうしても聞きたかった。

「シルヴィーナさんがこの森で暮らすのをユグドラシルが許したのはシルヴィーナさんが自由を求めた追放者だったから?」

「ユグドラシルさん、言っちゃいましたか」

 シルヴィーナは困ったように笑った。

「うん、何百歳も年の離れてる相手と結婚させられそうになったから逃げ出して来たって」

「正確には五百歳離れた相手とです。それでも嫌ですよ私まだ180歳すぎたばかりですし」

「oh……」

 流石ハイエルフ、スケールが桁違い。

「どんなに見目が若くても、お祖父ちゃんのような方と結婚するのは嫌です」

「なるほど……」

「吸血鬼や、ハイエルフ、エルフ、ドワーフは長生きですからね。こう言う問題も起きますよ」

 シルヴィーナははぁとため息をついた。

「何でそんな事になったんですか?」

「ハイエルフはあまり子どもを出産しないのです。後、性欲が薄いと言いますか」

「あー……」

「気がつけば里は40人を切りそうになっていた。だから焦った長老達が若い子達を結婚させようとして、まぁ私が貧乏くじを引きました」

「なるほど……他の子は同年代か近くらへんだけど、シルヴィーナだけ年齢差がめっちゃある相手を選ばれちゃったのね」

「はい、私は猛抗議、でも両親も長老達の言うことだからというもんだから自分から里を追放されてやりましたよ」

「……思い人とかは居なかったんですか?」

「居ましたけど……彼は旅人となって里から出て行った。だから私の思いなどしりません」

「……」

 それはそれで切ないな。

「辛くない?」

「いいえ、兄さんが気を遣ってくださいますし」

「お兄さんは結婚済み?」

「はい、とうの昔に、100年ほど前に結婚してます兄は」

「なるほど……ん? レイヴンさんいくつ?」

「280歳ですよ。ハイエルフではまだまだ若いです」

「ほへー」

「ところでコズエ様はおいくつなのですか?」

「え? 吸血鬼になってまだ一年弱だけど」

「そうではなく、今まで過ごした年数です」

「んー……22歳」

「ずいぶんとお若いですね」

「まぁ、人間歴は20弱だったからね」

「……何で吸血鬼にしてもらったのですか?」

 ついに来たこの質問、本当の言葉を吐き出す。

「人間社会で、生きるのに疲れたんですよ」

 と。





 シルヴィーナは驚きつつも納得できた。

 人と関わることに距離を置いているように見えたからだ。

 大勢の人と関わるようになったのもこの一年かかって村人達と交流してきたからだ。

 だから、人間達の中で生きづらさを感じていたからこそ、吸血鬼という「孤高」の存在いや「孤独」な存在になって本当は誰とも関わりたく無かったのではないかと。

「コズエ様」

「なぁに?」

 コズエはにこりと笑う。

「今、幸せですか?」

「んーそうだね」


「幸せ、だよ」


 はにかむように笑った。


──ああ、私がここに来たのは運命だった──


 シルヴィーナはかつて人間の欲によって殺された愛し子の二の舞にはコズエを決してさせないと誓った。






「コズエ様」

「なに⁇」

「私、コズエ様のこと、今まで以上にお守りを──」

「あっ、行商さんが来た……んなんか変なのが混じってる」

「お供いたします!」

「う、うん」

 行商の人達が来たが、その中に何か黒い靄のようなものをへばりつかせている存在がいた。

 行商のエルフさん達がこっちに来ると、レイヴンさんが駆け寄ってきた。

「コズエ様、お力をお借りしたいのです」

「いいけど、どうしたの?」

「同胞が瘴気に汚染されているのです、このままでは死に至ります」

「え⁈ どうして⁈」

「ロガリア帝国に潜入していたようなのです」

「一体そんな危険な所に──レーム? レームじゃない⁈」

「シル、ヴィーナ。なんで、君が、ここ、に?」

「取りあえず話は後々、これを飲みやがれ下さい!」

 とコップに林檎ジュースを入れて飲ませる。

 最初は弱々しかったが、瘴気? 黒い靄が薄れていくと勢いよく飲んでいった。

 三杯くらいのんだ頃には元気になっていた。

「ああ、なんてすがすがしい気持ちなんだ!」

 シルヴィーナの知り合いらしいレームさんはそう言った。

「所でシルヴィーナ、どうして里じゃなくここに居るんだい? ここ10年帰ってなかったから分からなかったけど……」

「無理矢理ヴィルンのお祖父様と結婚させられそうになったから逃げ出した結果追放者になったのよ!」

 シルヴィーナは怒って言う。

 もしや、シルヴィーナの片思いの相手とはレームさんか。

「え゛⁈ あの爺と⁈ 何考えてんだ長老共は‼」

「それで、始祖の神森に来て過ごしていたら愛し子様とあったの、この方よ。コズエ様。貴方を助けてくれたの」

「……あ゛──‼」

 レームさんは私の顔を見ると叫んだ。

「な、なんですか?」

「レーム、急に叫ばないで! コズエ様が驚くでしょう!」

「わ、悪い。でもこれを見たら驚くに決まってる!」

 と、鞄から肖像画らしきものを見せた。

「え」

 私は固まる。

 髪の色と目の色は違えど、私とよく似た女性が描かれているからだ。

「レーム! このタイトルは?」

「『最愛の聖女マリーの16歳の誕生日に』作者はレイジ・フェルナン。帝国から唯一逃げ出せたあの名画伯フェルナンの傑作の一つだ。遺族が探し求めてたから唯一調べてない帝国の邸宅に潜入したんだ、人が居なかったが、屋敷の中はともかく外の瘴気が酷くてな……」

 なんか情報が色々入ってくるが、気になる事がある。

「なんで、似てるの?」

「本当、コズエ様にそっくり」

 イザベラちゃんが言う通りだ。

 そう、私に似ている子とだ。

 髪の色と目の色を変えてしまえばそっくりになる。

 それほど肖像画の彼女と私はよく似ていた。


 色々考えていると、頭がぐちゃぐちゃになる。

 そんな時、スマホが鳴った。


 私は慌てて自宅に戻り、スマホの通話に出る。

「もしもし」

『もしもし、儂じゃよ、神様じゃよ』

「あの、どうして私とあの肖像画の女性は似てるんですか⁈」

『他人のそら似じゃよ』

「へ?」

『人間、同じ顔の人は世界に三人は居るというじゃろ?』

「聞いた事があるような……」

『おっと、前の愛し子と代わるの』

「は?」

『はい、愛し子のマリーです。貴方と私は他人のそら似。偶然似てしまったの』

「意図して……じゃないんですね」

『そう、だから気にしなくていいのよ』

「わかりました」

 マリーさん本人に言われると何となく納得してしまう。

 そこで色々話して通話を切る。

「さて、レームさんの様子を見に行きますか」

 と言って、レームさんの様子を見に戻った。





「やれやれ危なかったわい」

「勘が良かったら、気づいてたかもしれませんね」

「まさか髪の色と目の色が変わった自分の祖母の肖像画だとは思わないでしょう」

 神界で、神々とマリーは話をしていた。

「気づいてしまったらどうなるか、不安でしょうがないです」

「それはわかる、人間不信に陥りかねないからの」

「だからこのままでいさせてください、お願いします」

「わかっておるよ」

「ああ、分かっている」

「勿論です」

 マリーは、梢の祖母である鞠子はただこれからの孫娘の梢の幸福を祈るしか無かった。






シルヴィーナの事情を梢が把握し、梢の事情をシルヴィーナが薄ら把握する。

そしてシルヴィーナの思い人の登場です。


分かる人には分かるあるオマージュが入っています。

ヒントはサンホラです。


そして、前の聖女マリーと梢が似ているのは、実は他人のそら似ではなく、マリーが異世界元い梢が居た世界に転移した際に髪の色や目の色が変わり、名前も変えて現地人である梢の祖父と結婚し、その遺伝子上で梢はマリーにそっくりになった訳です。

ただ、梢は気付いていません、寝ている間ならマリー元い鞠子お祖母ちゃんが神域に来れること知らないからです。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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