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神森と世界樹

世界樹の苗木を植えた場所に向かった梢。

二本の苗木は生長し、立派な木になっていた。

そのことを話に世界樹ユグドラシルの元に行くと、梢はユグドラシルからある依頼を受ける──





「おー! ずいぶん立派になって」

『俺おっきくなったよ! 愛し子様!』

『僕らも頑張ったよ』

『頑張ったよ』


 世界樹の苗はもう立派な一本の木に育っていた。

 私は木の肌を撫でる。


「立派だねぇ」

『愛し子様のおかげさ!』

「じゃあ、今日も水と肥料をあげようね」

 と言って肥料元い堆肥をまき、湧き水で汲んだ水を大きめのじょうろでたっぷりかけておく。


「頑張って大きく育つんだよ」

『うん、育つよ! 愛し子様!』

『僕らも頑張る!』

『頑張る!』


 そう言って大きく生長しつつある世界樹を見つめながら私はもう一方の木の方に行った。

 少しばかり小さかったから大丈夫だろうか。


「わぉ」

『見て、こんなにおっきくなった!』

 先ほどの木よりも一回り太く大きく生長していた。

『頑張ったよ!』

『たくさんたくさん頑張ったよ!』

「ありがとうねぇ、頑張ったねぇ」

 そう言って堆肥をまき、水を与える。

「これからも丈夫に育ってね」

『うん!』

 私はそう言って世界樹ユグドラシルの元へ向かった。




『愛し子様、ようこそいらっしゃいました』

「なんかですね、どっちもどっちで予想外の生長してるんですが」

『ふふ、愛し子様に立派な姿を見せたくてどちらも生長しようと頑張ってるのですよ』

「私の存在責任重大?」

『そうでもないですよ、ただ今回のやりとりで両方とも自分達の状況が分かるようになって、より生長に励むと思います』

「……良いこと、なんですよね?」

 不安になって問いかける。

『勿論です、世界樹の多くはもう私を残してあの子達以外居ません、枯れてしまいましたから』

「世界樹が、枯れる?」

『呪いと瘴気によるもので、始祖の神森以外の神森は枯れ世界樹も枯れてしまいました』

「え、神森って他にもあるんですか」

『あります、今ある神森は世界樹を失った神森ばかり、神森という名を失い「迷いの森」とさえ言われています』

「……私ができること、何かないですか?」

『……お願いしても宜しいですか?』

「はい」

 私は静かに頷いた、

『まず、神森にしか世界樹は根付きません、また神森は神の使徒や愛し子様以外は入ることが困難です。ハイエルフなら希に入れますが』

「シルヴィーナはどうして入ってこれたんですか?」

『彼女はハイエルフの里を出て来た者、追放者です。それ故私は受け入れました』

「え゛」

 驚きの声を上げる。

 だって、ハイエルフのお兄さんと仲が良さそうだし、そんな気配は無かったし。

『ハイエルフは数を少なくしてます、だから勝手に結婚相手──それも何百歳も上の男性と結婚を親に決められたので彼女は自分から里を出たのです』

「それシルヴィーナじゃなくても、出るわ。私だって同じ立場なら逃亡する」

『彼女の兄は特例で許された行商元い旅人、妹を連れ戻すように言われてますが「愛し子に呪われる覚悟があるなら連れてきてやるよ」と両親と結婚相手を脅して妹であるシルヴィーナの好きにさせてるようです』

「レイヴンさん……」

 いいハイエルフだ貴方は!

 まぁ、私を脅しの種に使ってるのはちょっとだけ引っかかるが、シルヴィーナが嫌がる結婚をさせるなら私は盛大に脅すぞ、精霊と妖精使って、あと神様。

「で、残っている神森は?」

『5です』

「……多いときは?」

『多いとき神森は50ありました』

「十分の一‼ めっちゃ少ない‼ では苗木下さいな」

『では五本ほど……』

 にゅっと苗木が地面から生えてきたので私はスコップで丁寧に掘り起こす。

『おかーさん、ぼくいきたくないよー』

『ぼくもー』

『ほかのもりなんていやー』

『まえのこみたくかれちゃうよー』

『そうだよー』

 苗木達は乗り気じゃなさそう。

「大丈夫、精霊と妖精にもお願いするし、まだ無事な神森だから」

『ほんとう、いとしごさまー?』 

「本当」

『愛し子様の言う通りよ、私は貴方達をここから見守ってますからね』

 苗木達は「わかったー」と返事をする。

 私はアイテムボックスに苗木達を入れる。

「では失礼します」

『我が子達をお願いします』

「はい!」


 そして村に戻ると明け方になりそうだったので、クロウの家のポストに紙に「神森に世界樹の苗木を植えたいから連れてって、夕方」と書いたのを入れて、自宅に戻り棺桶にベッドインして眠った。


 夕方。

『梢やー』

「はいはいー!」

 私はシルヴィーナさんから貰ったローブを纏い、外に出る。

『神森に行くんじゃな』

「うん、だから案内お願い」

『まかされた』

 広場に移動して、大きくなったクロウおじちゃんに乗り、飛んで貰う。


「うわー広ーい」

『そうじゃよ、この世界は広いんじゃよ』

「まぁ、でも、外に出ない私には関係無いか」

『そうじゃな、吸血鬼は自分の土地から出ることはほとんどないからの』

「夜の都の吸血鬼とかも?」

『その通りじゃ』

「……どうやって金稼いでるんだろ」

『梢はしらんでええよ』

「分かった」

 クロウおじちゃんがそう言うなら知らないままでいい。

 正直グロとかエグい系の内容だったら嫌だし。





『ここが妖精の神森じゃ、文字通り妖精が多い』

「本当だ」

 クロウは妖精の神森の中央のくぼみに着陸する。

 私は地面を掘り、堆肥をやり、苗木を植えて、また堆肥をやり、水をやる。

「すくすく大きく育ちますように、大きく大きく育ちますように」

『うん、がんばる』

『愛し子様がそういうなら僕らも手伝うよ』

『頑張って大きくするよ!』



 そこから四つの神森に行った。

 名無しの神森。

 精霊の神森。

 木霊の神森。

 そして最期に──神域の神森へ行った。



『この森は儂も着地はできん、歩いていくんじゃ』

「うん、分かった」

 クロウは人間の姿になり、私と共に森の中心地を目指す。

 其処には、枯れた世界樹があった。


「もしもし?」


 耳を澄ましても声は聞こえない。

「もうこの世界樹はとっくに死んでいる。少し離れた場所に新しい苗木を植えるぞ」

「うん……」

 枯れた世界樹が少し悲しく見えた。


 いつもの通り苗木を植えて、妖精や精霊達にお願いする。

 快く引き受けてきた妖精と精霊達にお礼を言って、枯れた世界樹をそのままにして、私とクロウは森を出る。

 再びドラゴンになったクロウに乗ると、私は最期の神森を後にした。





「一晩で回れるなんて凄いねクロウおじちゃん」

『当然じゃ、儂を誰じゃとおもっとる? エンシェントドラゴンじゃよ?』

「そうだった」

 そんな会話をして、私達は私達の居るべき場所──始祖の神森へと帰るのだった。







始祖の神森、始祖の森、どっちゃでも正解ですが、始祖の神森のほうがより正しいです。

自分でも今までどっちで書いてたかちょっと分からなくなってきてます、すみませんorz


ユグドラシルからの依頼で神森へ世界樹の苗木を植えに行った梢とクロウ。

夜しか基本動けない梢の移動手段がクロウなんですよね。

国を超えて移動してますから、それでも余裕を持って帰る位できる速度で飛んでますし、周囲と乗っている者に被害がいかないよう魔法で保護しています。


あと、シルヴィーナが何故始祖の神森に居たのか理由が明かされました。

そりゃあ嫌でしょう。

それと、木霊の神森という名前の神森ですが、気付いた方は凄い、これ極東の国の神森って設定です。

後に神山と名前を変える予定があります。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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