子どもたちの14歳の誕生日と夜の都からの来訪者
20年目の春、晃たちの14歳の誕生日の祝いを梢は行う。
めずらしく、家畜などではなくこの世界で一般的に高級食材とされているものを出した。
梢はまだ慣れてないんだなと、すこし黄昏れた。
そしてとある夜、アエトス家の馬車が森を訪れる。
クロウは事情を把握しているらしく、梢は尋ねた──
20年目の春、そして子ども達の14年目の誕生日の日が訪れた。
私はクロウやアルトリウスさん達の手を借りて、料理をする。
ご馳走をつくり、デザートのケーキを作る。
そしてクロウが迎えにいって、家にもどってきた子どもたちに声をかける。
「14歳のお誕生日おめでとう!」
アルトリウスさん、アインさん、ティリオさんもそれぞれおめでとうの声をかける。
子ども達は嬉しそうに笑う。
「お母様、お父様、ありがとうございます!」
「母様、父様、ありがとう」
「母さん、父さん、ありがとう!」
音彩達はそう言って、嬉しそうな顔のまま私達を見る。
「さぁ、ご馳走が冷めないうちに食べましょう?」
「「「はい!」」」
そう言って子ども達はご馳走に手をつける。
ブラックサーペントのスープを美味しそうに飲んでいるのを見ると、クロウの奴どこから仕入れてきたんだと思わなくもない。
というか、蛇美味いんだと思ってしまう。
まだ異世界に完璧に馴染んでないんだなぁとちょっと思った。
コカトリスのローストチキンとか凄いでかいし。
それを嬉々として食べる子どもたちの胃袋が凄い。
ご馳走を食べ終わると、次はケーキ。
大きな苺のケーキを子ども達の分だけ大きめに切り、私達親の分は小さめに。
そしてチョコレートの板を三人分のせ。
「はい、どうぞ」
「私、これすきなの!」
「ああ、私もだ!」
「私もですよ!」
そう言ってケーキを美味しそうに頬張る。
その様子を見ながら、今頃自宅でケーキを頬張っているであろうクロウの姿を想像した。
晃たちも14歳かぁ、と思いながら、まだ一歳児の光たちを眺める。
この子たちが大きくなるのに、まだまだ時間がかかりそうね。
そう思った。
そんなこんなしていたら、とある夜、馬車がやって来た。
紋章はベアトリーチェさんの紋章と一緒だった。
「アエトス家のものだな」
「クロウ何か聞いてる?」
私はいろいろ把握してそうなクロウに尋ねる。
「ああ、ベアトリーチェの元に現アエトス家の夜の都から使者を派遣するという内容の手紙が届いたらしい」
「使者?」
「どうやらこの森と交易したいようだ、だから住み込みで森でやりとりをする者を派遣したらしい」
「レイヴンさんじゃダメなの?」
「アエトス家の許可書がないとだめだからな、吸血鬼やダンピールとその親族の人間以外は」
「そうだっけ」
「まぁ、行ったのが10年以上前だから忘れもするか」
クロウは呆れたように言った。
10年も前のコトで覚えていることは大体嫌なことなんだよ。
と、心の中で愚痴る。
馬車の出迎えに行くと黒髪に赤い目の綺麗な男性が姿を現した。
「お初にお目にかかります愛し子様。私はクラウス・アエトス。長であるマルファス様の命によりこの森に」
「はぁ」
「全くマルファスめ、この老体の余生を邪魔するとは」
「じゃあ、返します?」
返品します的なノリで言う。
「いや、返品するとマルファスがグチグチ手紙で書いてきそうなので止めておく。それに販売経路が増えるのは良い事だろう、ブラッドワインが余る程作られているのだから」
「それもそうですね」
私はクラウスさんに向き直る。
「ようこそ、クラウスさん、始祖の森へ」
「有り難うございます、帰れと言われたらどうしようかと思って居ました」
私は吸血鬼やダンピールが住まう場所へ向かう。
屋敷が建つ中、一件だけぽつんとある小さな家がクラウスさんが気になったらしい。
「あの愛し子様、あの家には誰が」
「ベアトリーチェさんです、ベアトリーチェさんの希望であの家に」
「ベアトリーチェ様、本気ですか?」
クラウスさんが驚いた表情をして、ベアトリーチェさんを見ている。
「夫は死去、子ども達は夜の都、私一人の家なのに屋敷なのは持て余す。使用人もいないのだしな」
「はぁ……」
「クラウス、お前は屋敷を建てて貰え。この森には出会いがあるからな」
「そ、そうですか……では、誰に依頼を?」
「あ、私です、ちょっとお待ちください」
私はクラフトを使って屋敷を一棟建てた。
クラウスさん、ぽかーんとしてら。
「な、なんと面妖な」
「神様からもらったスキルなんですけどねー」
「そ、それは失礼しました!」
「コズエ様、誰が来た──げぇ⁈ クラウス⁈」
「あ、ヴェロニカさん。クラウスさんとはお知り合いで?」
「愛し子様、クラウスはヴェロニカが苦手としていたエリザベートの嫁ぎ先の息子の一人だ」
「だったら、なんでげぇって……」
「お恥ずかしい話ですが、昔婚約者だったのですよ」
クラウスさんが照れながら言う。
ヴェロニカさんは渋いものを食べたかのような、いや苦虫を噛み潰したような顔をしている、相当だなこれは。
「あれは! うちのバカ両親と! お前のバカ父が勝手にやった奴だ! だからお前の母上が婚約解消をさせてくれたんだ!」
「物心着いた頃、君にはアレックス殿がいたからねぇ」
クラウスさんがしみじみと懐かしそうに言う。
「ベアトリーチェさん、ベアトリーチェさん」
「何ですかな、愛し子様」
私は小声でベアトリーチェさんに話しかける。
「もしかして、ヴェロニカさんが一回も両親の話とかしないのって……」
「ああ、この一件だ。ヴェロニカの両親はクラウスと是が非でも結婚させようとした結果、ヴェロニカが大暴れ、あの時は苦労した」
「ははぁ」
「クラウスの母の一声がなければヴェロニカはとっくに夜の都から逃亡して行方知れずになっていたかも知れぬ」
「そんなに……」
恋愛結婚も大変だなぁとしみじみ痛感した。
「クラウス、あまりヴェロニカで遊ぶなよ」
「分かっております」
「本当か?」
ベアトリーチェさんが首をかしげる。
クラウスさんは微笑んだまま。
ヴェロニカさんはガルガルモード。
こんな状況で大丈夫かな?
「マルファスの奴、よりによって私がいるのを知っててクラウスを寄越すとは、嫌がらせか!」
「いや、そう言う意図はないらしい」
ベアトリーチェさんが手紙を渡した。
「……クラウスの奴一人で来たってことはアイツまだ独身なのか⁈ 私と婚約破棄してから女達の求婚が凄まじかったのに⁈」
「マルファスに言ったらしいが、クラウスも『運命の出会い』というものをしてみたいと言っていたらしい」
「そう簡単にできるか?」
「まぁ、割とうちの所に逃亡してきた人と恋に落ちるパターンはあるんで、可能性はなくはないかと」
「コズエ様……」
「愛し子様が言うならそうでしょう」
まぁ、逃亡してくる人なんてもう来ないよね!
そう思って居た時期が私にもありました──
子ども等のシーンはちょっと少なめでしたね。
この世界でも、魔物の一部は高級食材だと認識されていると思って頂けたら嬉しいです。
ちなみに、狩りに行ったのはクロウです。
調理はクロウと梢が行いました、ケーキ以外は。
そしてやって来たクラウスという吸血鬼。
最期の梢の言葉から、次回出会いがありそうです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




