慌ただしい冬~偽物の愛し子~
森の中はしんしんと雪が降り積もっているのに、森の外は猛吹雪に見舞われている始祖の森。
その状態に違和感を梢は抱くも、精霊も妖精も口を閉ざしていた。
そんな物に招かれざる者たちがやってきて──
何か吹雪が激しいのでしばらく騎士団の方には居て貰うことになった。
なんか吹雪が激しいのには理由がありそうだが、精霊も妖精も口チャック。
「それにしても村の外の吹雪、どうなってるのかな?」
私はぼやく。
村の中は雪が普通に降っているのに村の外は猛吹雪だ。
なんなんだろう。
胸騒ぎがする。
そうしていると、森の入り口に集団がやって来たのを感じた。
入れなくてもがいている。
私は赤ちゃん達を夫達に任せ、シルヴィーナと共に入り口へ向かう。
「偽物の愛し子は何処だ!」
「アンネリーゼ様こそ、本当の愛し子だ!」
「偽物の愛し子をつるし上げろ!」
あーはいはい、吹雪の原因此奴らか。
「うう、寒い! お前達! さっさと偽物の愛し子をつるし上げなさいよ!」
『愚か者めが、偽物は貴様等だ』
上空からドラゴンが舞い降りて来る、クロウだ。
『我こそはエンシェントドラゴン。愛し子の守人にして神々の使いだ』
「う、嘘をつくな! たかがドラゴンの分際で!」
『ほぉ、たかが、ドラゴン、だと?』
あ、クロウ怒ってる。
「コズエ様、失礼します!」
耳に何か入れられ、目を隠される。
何が起きているのか、音も光も入ってこない。
そのまま向きを変えて歩かされているのだけは分かった。
クロウは嘘つきの愚者共を見据える。
『今の愛し子は心優しいからな、お前達の死に様を見せる気はない』
そう言った直後、業火を吐き出した。
自分の事を「神々の愛し子」と偽った女以外は炭化し、ボロボロと崩れて消えていった。
「ひ、ひぃ……!」
女は悲鳴を上げ、何かを大事そうに持っている。
『ロガリア帝国が作った聖女や聖人から神々の加護を奪った忌々しい指輪か』
「‼」
女は更に顔色を悪くする。
『貴様は粉々に砕いてくれよう、指輪と共にな』
女の体が石化していく。
「いやいやいや! 死にたくない助けて助けて!」
『そう言った者たちを、お前はどれだけ殺してきた?』
女の体が完全に石化し、ヒビが入り崩れ落ちる。
クロウは人の姿になり、指輪を砕いた。
指輪と石化した女の体は強烈な光を放ち砕け散った。
クロウは何もなくなったその場所から離れていった──
「クロウ、お帰り」
私は帰ってきたクロウの屋敷のテーブルにパイとタルトとケーキを並べながら言った。
「ああ、帰ったぞ」
「あのろくでもない集団は?」
「しらない方がよい」
知ってる、これ実際知らない方がいいパターンだ。
「うん、分かった」
私は聞かない事にした。
そっちの方が人生幸せだもの。
「まぁまーまぁまー!」
「まぁま!」
「まぁまー!」
家に戻ると、赤ちゃんたちはママの大合唱。
「はーい、ママでちゅよー」
赤ちゃん達を抱きかかえソファーに座る。
赤ちゃん達はにぱっと笑うと、私にぎゅーっと抱きついてきた。
あーかわいい。
和むわぁ。
「まんま!」
「まんま」
「まんま!」
「ご飯? ちょっと待ってねー」
丁度いたアルトリウスさんに光たちを任せ、離乳食を作る。
椅子に座らせて、光たちに離乳食をたべさせると──
大人しく食べておかわりまでしてくれた。
離乳食が終わると、自室ではいはいで競争しているのか、じゃれあっているのか、よく分からないような状況になっていた。
ま、うちの子だし、精霊と妖精の愛し子兼聖人、聖女だしね!
どうなるかは大人になってからだ。
それまではのびのび育てよう。
どうか、幸せに、なれますように、と。
子ども達が寝静まった夜明け前。
私とアルトリウスさんと、この時間に目を覚ましたアインさんティリオさんで、酒を飲み交わす。
私はジュースだけど。
「さて、いろいろあるが用意しなくてはな」
「そうですね」
「はい」
「何が?」
私が首をかしげると、ティリオが微笑んで言う。
「コズエ様のお誕生日のお祝いです。三年前にやって以来やっていませんでしたから」
「と言う訳で、明日は楽しみにしておいてくれ」
「ああ」
「ふふ、分かった」
隠すことなく言うのは、内緒にして私を不安がらせたくないのだろう。
私は臆病者だから。
「光たちの世話は皆でやる」
「コズエは誕生日を思い切り楽しんでください」
「ええ、コズエ様の為に村人と私たちが用意したのですから」
「ありがとう」
私は静かに頷いた。
こんな幸せで良いのだろうかとも思う。
でも、ここに来るまでいろいろあった。
だからこの幸せを享受しよう。
私はそう思いながらジュースを飲み干して寝る準備をし、棺桶に入った。
そして目をつぶる。
アルトリウスさんたちや晃たちが起こしに来るのを想像しながら私は眠りに落ちた──
梢を吊るし上げようしてきた偽物の愛し子とその信者たちの所為で森の外は猛吹雪だったのです。
クロウはそれを察知して帰って来ました、ただ本来なら梢と会う前に処分するつもりでしたが遅かったのでシルヴィーナに念話で梢に関して指示をだして梢をその場所から引き離しました。
めずらしく、クロウが処刑しているのを書きましたね。
普段は書きませんが、絶望を与えて処刑しているというのが分かるように書きました。
こういうことをしてると梢に知られたら梢がショック受けるので知らない方がいいの一点張りで、梢も深く聞きません。
梢は赤ちゃんたちや家族たちと幸せにしていればいいというのがクロウの考えです。
梢が幸せならそれが一番なのです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




