20年目の冬、来たりて~招かれざる者たち~
秋が終わり、冬が来た。
梢が光たちのお世話をしながらその成長速度に驚いている日々を送りつつ、未だブリークヒルト王国帰れぬロゼッタ姉妹の面倒をみていた。
そうこうしているとドミナス王国とムーラン王国から訪問者がやってきた。
正妃たちと、イザベラたちだ。
しかし、何かあった様子で──
秋はあっという間に過ぎていく。
その間にマリア様とイザベラちゃんからの手紙が届く。
いつものように返信し、秋の終わりを待つと──
『冬ですよー!』
『雪ですよー!』
まぁ、冬がやって来た。
いつも家畜の世話や狩りをやってくれていたリザードマンさん達は冬眠。
少し人手が少なくなるが、冬場はやることは雪かきと家畜の世話位なので問題は無い。
畑はお休みだしね。
狩りもほとんどお休み。
「あーうぅ」
「まーうぅ!」
「だーぁあ!」
もうしばらくすればこの子達の誕生日。
まだ赤ちゃんの子ども達をどうやってお祝いしてあげようか?
と悩む私。
今ははいはいも、つかまり立ちもよちよち歩きだってできている。
すげぇな精霊と妖精の愛し子と神様の加護。
「「「まぁまぁ!」」」
「はい、ママでちゅよー」
光たちを抱きしめて言う。
すると光たちはきゃっきゃとはしゃぎ始める。
パパ達への人見知りは消えたが、それ以外の人への人見知りは相変わらずだ。
光はルカくんだけは平気なのはそのまま。
さて、どんな大人になるのやら。
まぁ、それは晃達が先なんだけどね。
来年の春に14歳になる。
本当あっという間だ。
あと4年近くもすれば私の元から巣立ってしまうのだろう、そう思うとほんの少しだけ寂しくもある。
私は光たちと遊びながら温かい部屋の中に居る。
夫たち、晃、肇は私の代わりに雪かき。
音彩は療養院でロゼッタさんたちのお世話をしている。
音彩は甲斐甲斐しく二人のお世話をしている。
元気になってきたロゼッタさんは、パン粥ではなく、普通の食事をとるようになった。
メリィちゃんは、普通の食事にジャムパンやゼリーのデザートを好むようになった。
一番好きなのはプリンらしいが。
そりゃそうだろなぁ、銀牛のシロガネと、黄金鶏のスバルの卵とかで作った超豪華なプリンだから。
あと、私の作った砂糖もあるし。
だから、メリィちゃんはいつも今日のデザートが何か楽しみにしている。
さて、そんなこんなしているといつも通りマリア様たちとイザベラちゃんたちが来ました。
いつも通り挨拶をし、マリア様たちを来賓の館、イザベラちゃんたちを以前住んでいたお屋敷に案内します。
案内し終えると、マリア様とロラン様がクロウの元に話に行っていました。
なんの話だろうと首をかしげて、二人がクロウの屋敷から出るのをまってからクロウの元に行った。
「クロウ、どったの?」
「いや何、どうやら王族の馬車にも誘拐犯は奇襲をしかけてきたらしい、護衛のお陰で撃退できたが」
「え、クロウ誘拐犯撃退してきたんじゃないの?」
「そのはずだったが……どうやら向こうは精霊と妖精の愛し子を探しているようだ」
「! もしかして……」
「予想通りだ、ロガリア帝国を復興させようとするバカ共がいるらしい」
「王族もいないのに?」
「王族の血筋はいる」
「まさか、ネヴィアさんとトネリコちゃんの事じゃないよね?」
「それは安心せよ、二人は除外している。が、精霊と妖精の愛し子の王族が始祖の森にいることは向こうも知っているようだ」
「……誰から聞いたの?」
気になって問いかける、その情報源が誰なのか。
「デミトリアス神だ。デミとリアス神が地上を見たところ、ロガリア帝国を復興させはじめようとしている輩がいると」
「せっかく潰したのに!」
「そうだな、と言う訳で」
クロウはエンシェントドラゴンの姿になった。
『潰してくる、お前はパイかタルトでも作って待っていろ』
そう言って飛んで行ってしまった。
「全く、後半の部分がなかったら格好いいのに」
私はあきれのため息をついた。
取りあえず、クロウ用のパイとタルトを作って保管しておく。
子どもたちと夫たちには食べさせないように行っておく。
そういえばロゼッタさんとメリィちゃんは大丈夫かなと様子を見に行くとマリア様がいた。
「娘から貴方の事は聞いた、幼い妹を守りながら、よくここまで逃げて来ましたね」
「ありがとうございます、正妃マリア様……!」
ロゼッタちゃんはぽろぽろと涙をこぼしている。
「マリア様、娘、とは?」
「そう言えばいってなかったですね、愛し子様。私の娘はブリークヒルト王国の王太子妃なのですよ」
「え」
マジで。
「もう直ぐ王妃になる予定です」
「ははは……何か凄い繋がりが……」
「娘もここに一度来たいと思っているようですが、それがきっかけで何かが起きたら困ると言うことで来ないようにしているんです、愛し子様」
「な、なるほど」
何かちょっとだけ頭がごちゃごちゃしてきた。
が、カーリャやメルディちゃんがブリークヒルト王国の王子と結婚しない理由も分かった。
近親婚になっちまうもんな!
あぶねぇあぶねぇ。
ムーラン王国も同様。
色々考えてるんだなぁ。
とか考えていると森の入り口に、無数の影と馬車。
森は明らかに拒否を示している。
「ちょっと森の入り口に行きます」
「ついて行ってよろしいか?」
「いいですが」
マリア様、何か心辺りがあるようだ。
シルヴィーナと合流して森の入り口に行く。
「正妃様! いい加減この森を訪れるのは止めていただきたい!」
「ルキウス様を害したこの森を!」
害してねぇーよ、ルキウス君がうちの音彩に勝手に惚れて、周囲に嫌がらせしただけだよ!
という言葉を飲み込む。
騎士団と、魔法使いらしき連中にマリア様は呆れの表情を浮かべた。
「だから、元ロガリア帝国の連中と共謀したのか?」
「え゛」
ちょっとクロウー!
ちゃんと説明してから言ってよー!
「シャルル王子は王太子の器でない!」
「何処がだ、ルキウスの方だ器でないのは、傀儡が欲しいのだな貴様等は」
マリア様は睨み付けている。
シルヴィーナは臨戦態勢。
ど、どうしたらいいんだこれー!
クロウ、帰って来てー!
私は心の底から叫んだ──
光たちは順調すぎるほど成長しています。
そしてロゼッタとメリィは普通のご飯が食べられるようになりました。
メリィは子どもなのでプリンに魅了されているご様子。
そして冬になったのでドミナス王国とムーラン王国から王族とその婚約者たちが来ました。
ただ、いつもの冬とちょっと違う様子。
さて、ゴキブリよりも生命力が高いと思われるロガリア帝国人。
クロウが潰しに行きましたが、どうやらルキウスを王太子にしたい派閥の者たちがロガリア帝国人と手を組んだ様子。
色々情報がごちゃごちゃで梢はテンパっています。
クロウ、早く帰って来るといいですね。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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