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秋のパン~そして周囲の出来事~

ロゼッタとメリィが療養するのに時間がかかることが分かった。

特に姉のロゼッタの栄養失調具合は酷く、よく生きていられたなと梢が思う程だった。


自分たちを守ろうとしていたレウスという元婚約者の弟、現ロゼッタの婚約者は食料をこっそり二人に与えていたが、それらのほとんどをロゼッタはメリィに上げてしまったのが栄養失調を引き起こした。


梢はそんなロゼッタを労ろうと思い、消化に良いものを食べさせたりしていた──




 ロゼッタさんとメリィちゃんが健康的になるには時間がかかりそうだった。

 特にロゼッタさん。

 栄養失調の具合が酷すぎた。

 よく生きてたと思う程だ。


 レウス君もまだ愛人達が居るときに兄に付き添って家を訪れては直ぐ食べられる菓子やパンなどをこっそり渡してたらしいが、ロゼッタさんはそういうのはほとんどメリィちゃんにあげていたらしい。


 結果この栄養失調。


 もう少し自分を大切にしてほしいな、と思う反面よく頑張ったね、と思う。

 だって小さな妹を守るために自分の身を犠牲にしたんだもん。

 だから戻ったら幸せになって欲しいと思った。





 消化に良い食事を取れるようになったころ、老夫婦が森を訪れた。

 私はクロウ達と一緒に出迎える。


「孫の様子が知りたくて……」


 老夫婦は下りてくるなりそう言った。


「もしかして」

「はい、ロゼッタとメリィの祖父母です、母方の。娘はメイア・ゼスティーナと言います」


 クロウをチラリと見ると念話で語られた。


『嘘はついていない、実際あったこともある』

『分かった、案内しよう』


 私は小さく頷いた。


「では、お孫さん達の所へご案内します」


 そう言うと二人は安堵の表情を浮かべた。





「「ロゼッタ! メリィ!」」

「お祖母様、お祖父様!」

「おばあちゃま! おじいちゃま!」


 老夫婦──祖父母に抱きしめられると、今まで泣かなかった二人はわっと泣き出した。


「ごめんよ、気付いてあげられなくて」

「あの男たちの言葉を信用せず、調査すれば良かった、本当に申し訳ない」


 ロゼッタさんとメリィちゃんの祖父母は謝罪の言葉を口にする。


「あの愚者共は口だけは達者だったからな、我には無意味だが」


 達者だったんだ、嘘つくの上手かったのか。

 それでももう少し早く気付いてほしかったなぁと思ってしまう。



「屋敷の事は私達に任せて、お前達はゆっくり休みなさい」

「そうだよ、愛し子様の元でゆっくり体を休めて……」


 そう言ってしばらく話した後、老夫婦は泊まることなく戻って言った。


「いっちゃったね」

「屋敷で、積極的に二人を虐げた使用人を処罰するのだろうな」

「あ」

「逆に何とか二人を助けようとしたものだけを残すのだろう」

「そっか……」


 色々あるんだなぁと思った。

 取りあえず、虐げた連中は再就職できなくていいよ、うん。

 そう思った。





「ねいろおねーさん」

「はい、なんですかーメリィちゃん」

「じゃむぱんがたべたいです!」

「ジャムパン? 中身は?」

「あかくてあまずっぱかったです、いちごではないですたぶん」


 音彩とメリィちゃんはそんな会話をしてた。

 私は「あーじゃあラズベリーのジャムパンだな」と思った。

 音彩も思考が同じだったらしく私にラズベリーのジャムパンを求めてきたので、それをあげた。


「メリィちゃん、これでは?」


 そう言って音彩がメリィちゃんにパンをあげて、メリィちゃんが食べると、満面の笑みで、


「これです! ありがとうございます!」


 メリィちゃんはとこところ療養院へと戻って言った。


「おねーたま、じゃむぱんもらいました、いっしょにたべましょー!」


 覗き込むと半分こにしてロゼッタさんにあげていた。


「ふふ、貴方がたべていいのよ?」

「はんぶんこです! いままでおねーたまがめりぃにくれたから!」

「まぁ……じゃあ、いただくわね」


 ジャムパンを食べる二人。


「ああ、美味しいわ、甘酸っぱくて……苺と違う味わいで……」

「いちごのじゃむぱんもあるのかな?」


「ありますよ」


 音彩が入って言って二人に声をかける。


「ねいろおねーさん」

「ネイロ様!」

「お気になさらず、お体の具合は?」

「はい、少しずつですが良くなっております」

「それは良かったです」


 音彩穏やかに微笑んでいる。

 音彩は基本穏やかで優しい子だ。


 まぁ、そんな音彩がブチ切れたのはルキウス君関連と今回の件かな…… (遠い目)

 そんな事を考えつつ、私はせっせと違うパンを色々作っていた。


 何か作るって楽しい!





「と言う訳で色々なパンを作ってみました」

「無理は?」

「楽しかったからしてなーい!」

「そういう問題か……この量どうする?」

「皆に配ろう」



 山のように積み上がったパンを見てアルトリウスさんたちと、晃たちがあきれのため息をついた。

 ちなみに山ごとに中身を分けているので、みんな別々のパンを配っていった。


 その間私は大人しく作ったパンをもぐもぐ。


「クリームパン美味い」


 ミルク片手に食べて居た。


 赤ちゃん達はそれぞれのパパ達がおぶっている。

 そしてそれぞれのお兄ちゃんお姉ちゃんが同行している。


 まぁ、オムツも替えて、おっぱいもあげたあとだから、しばらくは眠っているだろう、何もなければ。

 うちの子たちは普通の赤ちゃんと違うからね。





 しばらくして帰って来たアルトリウスさんたちと、晃たちから色々と聞けた。

 精霊と妖精たちから、子どもの誘拐未遂があちこちで起きているらしい。


 そんな物騒な中、流石に二人を馬に乗せて帰す気にはならないのでクロウにのって帰って貰おうと思った。


 ついでだし、クロウには今のうちに誘拐犯連中を〆てもらうことを頼んだ。

 お代は私のケーキ、いつも通りだね。


 そんなこんなで、秋は少しずつ深まっていった。


 勿論その間に収穫祭もやった、収穫祭を見てメリィちゃんは大はしゃぎ、ロゼッタさんは驚いていた。


 クロウはクロウで収穫祭を楽しみつつ、その間に色々とやっていたらしい。

 誘拐未遂犯の目的は知らないが、クロウは今は気にする必要はないと言う。


 でも、今すっごい気になるんだよねぇ?


 と私は思った。







ロゼッタとメリィを虐げていた連中は全員処罰を受けます。

元婚約者も跡取りだったのがそうでなくなり、平民落ちしてます、実は。

で、ロゼッタとメリィを虐げていたメイドたちなんかは、首にされ何処にいっても干される、もとい雇われない状況になっているでしょう。


そして、梢のはっちゃけパン祭り。

無理して無いけど、クラフト能力全開でパンを作ったのですからそれは凄い量です。

梢もクリームパンをミルクと一緒に食べてますが……


また、精霊と妖精たちから聞いたと言う誘拐未遂、一体何故そんなことが起きているのでしょう。

まだまだ、騒動は続きそうです、梢的にはグロッキーでしょう。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
うーん、シリアスだったけどクッションとして音彩たんや赤ちゃんたちの様子に和むことができました!今回は全体的に不穏でしたね。しかし、ロゼッタちゃんとメリィちゃんを虐待した使用人たちが祖父母によって報いを…
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