ある秋の日の尋ね人~救いを求めて~
ある秋の日、梢は赤ん坊たちの面倒を見ていた。
そこに晃たちがやって来て、梢の代わりに面倒をみると言う。
その助けを借りながら梢が食事をしていると──
その日、私は畑仕事と家畜の世話を終えて、家で子どもをあやしていた。
料理は夫達が担当している。
音彩や肇、晃も手伝いをしている。
赤ん坊と、自分だけの空間は閉塞的にも感じられる。
だが、その一方で赤ん坊の息づかいなどを感じることもできる。
光達はしばらくするとぐずりだしたので、オムツを替えたり、おっぱいをあげたりした。
赤ちゃんは泣くことが重要だもんね。
ゲップをさせてあげて、しばらくすると、すやすやと眠りだした。
赤ちゃんたちのいる揺り籠を揺らしていると、ノックする音がした。
「お母様、食事ができました」
「あら、本当?」
「あ、私達がだっこします」
「母さんは無理しないで」
私が無理してないという前に、子ども達はそれぞれの妹、弟を抱っこしてリビングへ向かってしまった。
成長が早いと言うか、しっかりしてるというか。
私もリビングに向かい、椅子に座る。
赤ちゃん達はリビング備え付けのベビーベッドで寝ている。
「いただきます」
「「「「「「いただきます」」」」」
作られたオムライスとスープを頂く。
吸血鬼も平気なニンニクが作れるようになったことで本格的なケチャップも作れるようになったのは嬉しい。
ニンニク無しはうーん、ちょっと、となる。
神様曰く、私のニンニクを食べていると吸血鬼とダンピールの方達も普通のニンニクに耐性がつくらしい。
それを吸血鬼とダンピールのヒトたちにいうと最初は信じられないような顔をしていたが、クロウが補足してくれたので、私のニンニクだけは食べるようになったらしい。
何せあのニンニク臭も平気なニンニクだ。
全然平気で驚いたそうだ。
まぁ、そんな事をしながらニンニク料理を堪能し、ラーメンもニンニクが入れられるようになったので嬉しい限りだ。
そういった事を考えながら料理を食べ終わると、私は一息つく。
ロッキングチェアーに揺られながら晃たちと夫たちが、赤ちゃん達のお世話をしているのを眺める。
あかちゃんはやわこいし、直ぐ死ぬから皆色々気を遣っている。
『梢の子は精霊と妖精の愛し子じゃし、儂等の加護があるから直ぐ死んだりせんぞ?』
と神様が話しかけるが、それはそれ、これはこれ。
赤ちゃんはふくふくしててにっこりしているのが一番だ。
元の世界では、赤ちゃんがガリガリになって死亡していたという虐待事件が目についていやだった。
だからそんな風にならない様にしたい。
とそんなことを考えていると森の入り口に誰かが来たのを感じ取る。
「ちょっと森の入り口に言ってくるから」
「お母様、無理せず」
音彩達に心配そうに声をかけられたが、これは私のお仕事だ。
森の入り口に行くと、既にクロウとシルヴィーナが居た。
シルヴィーナは魔道保温筒からスープ、痩せ細った16歳? それ位の少女に飲ませていた。
クロウは、ちっちゃい子にジャムパンを食べさせていた。
それ、昨日私が作った奴。
まぁ、一気に50個も食えな……いやクロウなら食うな、敢えて残してたのかな?
わからん。
まぁ、ちっちゃい子が「おねーたま、これおいちいね!」って言ってるのを見てほっとする。
お姉さんらしい女の子は「良かったね、メリィ」と頭を撫でていた。
それにしても腕ガリガリだな、この女の子!
姉と呼ばれた女の子は私を見ると腕を伸ばしてきた。
「い、愛し子様、で、い、いらっしゃいますか? どうか、どうか、お助けください」
「勿論です、助けますとも、ですが貴方はまず貴方の体を優先してください。そんなに痩せ細っていてはこのままでは死んでしまいます」
「申し訳、ございません……」
「シルヴィーナ、クロウ」
「はい、コズエ様」
「分かっておる」
二人は少女らを抱きかかえて村の療養院に行った。
そこで休んで貰うことにし、馬は馬小屋を急遽増築して其処に居て貰う事にした。
で、話を聞くと、彼女達はブリークヒルト王国のゼスティーナ伯爵家の娘さんたちらしい。
お母さんが、伯爵の血筋で、父は入り婿。
まぁ、予想はついていたが、お母さんが亡くなった途端父親が愛人と再婚し、愛人達と共に自分達に酷い扱いをしてきたらしい。
食事もろくに貰えず、このままでは死んでしまうと思ったが王宮へ向かう道筋には父の監視があるため、わずかな望みを託して始祖の森へ逃げ込んで来たそうな。
クズ父ふぁっきゅー!
事の次第を聞いたクロウは早速ブリークヒルト王国へ向かった。
これは荒れるぞ。
そんなことを思いながら私は彼女達と接した。
「お母様、ブリークヒルト王国の貴族の方達だったの?」
「まぁ、そうなんだけど子ども二人が死ぬかもしれない中逃げて来たからねぇ」
「どういうことだ」
家に帰った私は事情を話すと、全員顔をしかめる。
音彩は笑って、いや嗤っている。
「うふふ、そんなクズ男、二度と使い物にならなくしてしまいましょう?」
「音彩、怖い事言わないで」
「いや、それでいいと思うぞ、ドクズだからな」
アルトリウスさんたちや晃と肇も頷く。
怖いわ、ウチの家族。
「それよりも、お姉さんの方が重度の栄養失調だからそっちの方がしんぱいよ」
「妹は?」
「軽度、それ位食料を与えて貰えて無かったのね」
そうこう話をしていると、クロウが誰か連れて来た。
ブリークヒルト王国の偉い方らしい。
その男性は私に挨拶をして、療養院へと向かった。
クロウは同伴。
結構長い時間其処にいて、そして出て来て会釈をしてクロウにのって去って行った。
何してたんだろ?
私はやってきた二人──ロゼッタさんとメリィちゃんの世話をしていた。
パン粥を食べて少しずつ顔色の良くなったロゼッタちゃんと、消化に良い料理を食べているメリィちゃんを眺めていた。
「おねーたま、おいしいね」
「ええ、そうねメリィ」
ほのぼのとした会話を聞いていたらクロウがやって来た。
「ロゼッタことは全てすんだぞ」
「ほ、本当ですか?」
ロゼッタさんが、クロウに尋ねる。
クロウはロゼッタさんに紙束を渡しこう言った。
「お前の父は正当な後継者への対応の問題故に貴族であることを剥奪され平民に、そして愛人は元々平民だったから、貴族を蔑ろにした罪で鉱山奴隷に、愛人の子どもは果ての教会へ」
「……」
「後2年後お前が後継者になるまでは祖父母が面倒を見てくれることになった、それとお前から愛人の子どもに乗り換えた婚約者は平民になり、弟がお前の婚約者になるそうだ」
「レウスが?」
「ああ、レウスのお陰で生き延びれたのもあるから嬉しいわ」
そういってロゼッタさんは微笑んだ。
「ただ、今の状態でお前を領地に戻す訳にはいかないのでしばしここで療養するように」
「ありがとうございます、エンシェントドラゴン様、愛し子様」
「いやいや」
私何もやってない、全部クロウ。
そう思いながらも感謝されるのは悪くないな、と思った。
赤ちゃんはふっくらむちむちふくふくな位がいいと思ってます。
梢の子もふっくらです、健康的です。
やって来た来訪者は逃亡してきた貴族のお嬢さんたち、姉妹でした。
妹は幼く、姉は16歳ほどです。
クズ父と後妻と異母姉妹たちから虐待を受けており、一縷の望みを託して始祖の森へと逃げてきました。
それは正解だったでしょう。
クロウの力で解決に導かれ、姉妹は体を森で休めることになりました。
無事元気になってくれればいいですね、特に姉の方が。
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