祭りを楽しむ~祭り後助けを求めてきた者達~
祭りを楽しむ梢。
光たちの面倒を見ながら楽しんでいると、夫たちがそれぞれ違うものを持って梢に飲食させてくれた。
そして子どもたちは──
「コズエ、君は祭りはいいのか?」
「いいのよ、子ども達を眺めているだけで充分」
「それで充分とは言えないだろう、待っていてくれ、かき氷を貰ってくる、苺味でいいか?」
子ども達を眺めている私にアルトリウスさんが言い出した。
「じゃあ、ブラッドワインを私は貰ってきましょう」
「それなら、私は綿飴を」
と言って一人ずつ、交代で取りに行ってきた。
赤ん坊の乳母車を揺らす私にに代わって赤ん坊達の乳母車を揺らす。
抱っことは違うので、赤ちゃん達は泣かない。
「ほら、解けてしまわぬうちに」
「はい」
苺のシロップをかけたかき氷はとても美味しかった。
苺の味は濃厚で。
氷のシャキシャキかんもたまらないし、解けて混じった感触もいい。
頭が少しだけキーンとなったが、それもいい。
「ああ、美味しかった」
余韻を楽しみ、空を見上げる。
花火が上がっていた。
花火の火で森が燃えることが無い。
ああ、綺麗。
「コズエ、ブラッドワインはいかがですか?」
「ありがとう、アインさん」
アインさんからグラス入りのブラッドワインを貰う。
濃厚で美味しい味が口いっぱいに広がる。
こう言う時は吸血鬼らしいなと思って笑ってしまう。
飲み干すと、ティリオさんが綿飴を渡して来た。
割り箸のような棒の部分をもち、かじる。
優しい甘さと、蕩けるような感じがたまらない。
雲を食べるってこういうことかしらと思ってしまうほどだ。
べとつく感触もあまりない。
三人に食べないかと聞いたら、食べさせて欲しいと言ったので、ちぎった綿飴を食べさせた。
三人とも噛みしめるように食べていた。
そうだろう、砂糖は高級品だ。
私の能力で収穫が沢山できて、クラフト小屋で砂糖を作れるのだから。
ザラメも同様に。
「きゃーう!」
「きゃっきゃ!」
「きゃーうぅ!」
赤ちゃん達は花火が上がる度にきゃっきゃと喜んでいた。
綺麗だしね。
「お母様!」
音彩がカイル君を連れて戻って来た。
「音彩、楽しんで来た? カイルさん、どう?」
「楽しいです!」
「うん、楽しいわ! ところで、光に忍に、楚良は?」
「先ほどから、花火が上がる度に喜んでるわ」
「光達は花火が好きなのね!」
「そうみたい」
音彩はにこにこと話している。
カイル君と手を繋ぎながら。
カイル君の頬は少し赤い。
少し恥ずかしいのかな。
「カイルさん、どうしたの?」
「あ、そ、その汗ばんでて気持ち悪くない、かなって」
「そんな事気にしないわ! もう一回回りましょう!」
「うん……!」
音彩の言葉にほっとしたようにカイル君は笑って屋台のある方にいってしまった。
晃と、肇は戻ってこない。
「何かあったのかしら?」
「二人とも年頃だ、色々あるのだろう」
「そうですね」
「そう?」
「ええ、多分そうですよ」
アルトリウスさんたち、三人は何か知っているようだが、子どもを尊重しているようだ。
なら、私もそれに従うべきだろう。
「「「きゃっきゃ!」」」
「綺麗ねー」
乳母車を動かしながら、赤ちゃんな光、忍、楚良に声をかける。
結局、晃と肇が帰って来たのはお祭りが終わった後だった──
何をしていたかは、聞かない事にした。
一度目の祭りが終わったが、まだ祭りをする予定はあるので屋台は残したままだった。
ただ撥水性の高い布で覆ったりしていた。
「やっぱりお祭りは楽しいわねー」
一度目の祭りが終わると、私はそう子どもたちに笑いかけた。
「ええ!」
「はい、母様」
「はい、母さん」
子ども達が同意する。
私は愛しい子等に微笑み返す。
が、その瞬間森の入り口に何名かのヒトが祈るようにしているのを感じた。
「お母さん、ちょっと出掛けるね。光と忍と楚良をお願い!」
「「「はい!」」」
家を飛び出すとクロウとシルヴィーナも森の入り口へと向かっていた。
森の入り口には痩せ細ったヒト達がいた。
「愛し子様でいらっしゃいますか……?」
年老いたヒトが弱々しい声で訪ねて来た。
「そうだ、この女性、梢が神々の愛し子だ」
そういうと、そこに居た人々はひれ伏した。
「お願いです、どうか我が村を助けてください」
「村を?」
「はい、今年は日照りが酷く作物が育たなかったんです」
「……」
森の外の環境を初めて知る、こんなに違いがあるんだ。
「待て、ブリークヒルト王国の者だろうお前達は? それなら食料の配給などがあるはずだ」
「そうです」
クロウとシルヴィーナが疑問を口にする。
「実は……新しく領地の統治者になった方が同じように日照りでダメになった所の配給として提供された野菜などを独り占めしているんです」
「……配給の野菜などを独占しても余るぞ、何を考えている?」
「何とかして王都に陳状を持って行こうとすると、持って行った者が死体で村へ放り投げられていて……」
「取りあえず、レイヴンさん達に頼んで食事を配給しましょう、あとここの人達に食事をシルヴィーナ。クロウは──」
「国王に伝えてくる」
「お願い」
「ありがたい……そして申し訳ないです」
「いいんですよ、それほどお困りのようなのですから」
そう言ってシルヴィーナが私が作り置きしているスープを他の村人達と共に持ってきてやって来た人達に配る。
所謂パンがゆという奴だ、ここまで痩せ細っているなら普通の食べ物は胃袋に負担だ。
お腹が満たされ、食料を持たされた彼らが無事帰り、食料を奪われないよう琥珀にお願いして護衛させ、白亜はレイヴンさん達の護衛をさせた。
レイヴンさんを見送ると、クロウは居なかった。
それから一週間もしないうちに、村人さんたちが来てお礼を言った、領主が変わり、補給食が各村に行きたるようになったと。
前の領主はどうなったのかなぁと思って居ると、クロウは言った。
「世の中知らない方が幸せな事もある」
うん、なので深く追求するのは止めた。
怖いもんね!
梢は夫たちと、光たち幼児組と一緒にいる感じでしたね、お祭りでは。
音彩はカイルと一緒に回っている感じです。
晃と肇が見当たらないのはちょっと訳ありなのです、それも明かすときがいずれ来るでしょう。
そして祭りで楽しかった所に、救いを求める人が来て梢はびっくり。
クロウも国の配給を知っているので首かしげ、国王に言ってからそれをした統治者の処遇を決めました。
内容は梢同様「世の中には知らなくてもいいことがたくさんあるんだよ」的な雰囲気でお願いします。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




