村の中でのやりとり~赤ちゃんは人見知り~
一二三が種や苗木を渡して大丈夫かなどと聞いているが、クロウが問題ないと言い切る。
その一方問題として起きて居たのは光、忍、楚良の人見知りの激しさだった、自分の父親以外やクロウや村人にさえも激しく人見知りするのに梢は首をかしげていた。
そんな最中、お祭りをしたいと一二三と村人たちが言ってきて──
「梢様、種などをお渡しして宜しいのですか」
一二三ちゃんがやって来てそう言う。
となりで苺ゼリーを食べてたクロウが口を開いた。
「構わん、どうせ同じ種を使ったところでコズエが作る程の作物はできんわ」
「そうなのですか?」
一二三ちゃんが私に聞く。
「クロウが言うならそうじゃないかな」
「なるほど……」
「お前達が作ってる作物も、コズエが作っている作物と同じ種から作っているが連作以外のものは収穫を一度したら終わりではないか? コズエのは種を植えれば冬以外ならいつでも育つ短期間でな」
「そういえば、そうでした。申し訳ございません」
「気にしないで、気にしないで」
私は笑う。
クロウはため息をついた。
「本来なら、種や苗木は譲れるようなものではなく、国が管理する代物だ。まぁ、お前が作るとどんな作物も極上品になうえ、何度も収穫できるようになるからできることなのだがな」
「ですよねー」
私以外が育てると、質はいいが普通の作物になっちゃうんだよな。
リンゴだって、蜜柑だって、スイカだって、トウモロコシだって、あんな馬鹿でかい大きさに育たない。
あんなに甘くはならない。
あんなに美味しくはならない。
……とクロウは言う。
なら別にいいんじゃね?
クロウもそれで良しとしているみたいだし。
「あーぶぅ」
「だーぅぅ」
「あーうぅ」
三つ子ちゃん達が私の姿を見ると手を伸ばしてくる。
一人ずつ抱っこして「キャッキャ」と喜んで貰ってから、次の子へ。
私が抱っこする分には問題ない、晃や肇や音彩も問題無い。
だが、夫たちは問題あり。
それは──
「ふぎゃあああん‼」
「ぎゃああああん‼」
「ふぎゃあああ‼」
「おい、アイン! 何故お前の子を抱っこしたら号泣するのだ!」
「アルトリウス、私何もしてませんよ、抱っこしただけですよ⁈」
「わ、私もです! アイン様、アルトリウス‼」
何故か、我が子以外を抱っこすると、抱っこした子がギャン泣きし出すのだ。
謎すぎる。
クロウも。
『しらんわ』
と匙投げたし。
というかクロウも抱っこできなくてふて腐れてた。
何故だ。
「多分人見知りしてるのよ、自分の子どもを抱っこしてみて」
と私が言うと、三人は抱っこしていた赤ん坊達を交換する。
アルトリウスさんが光を。
アインさんが忍を。
ティリオさんが楚良を抱っこすると──
ぴたり、と泣き止んだ。
「「「何故だ」」」
「やっぱり、自分のパパ以外の人はアレなんでしょう」
「「「……」」」
不満げな三人。
子ども達は誰が抱っこしようと関係ないのに、自分達は拒否される。
不満はあるだろうが、私はとある事実を告げる。
「この子達余所の大人やクロウや村の子ども達でもギャン泣きするのよ、私がいないと……光は、そうねルカ君が居れば大人しくてルカ君とじゃれているけど」
「何か、少し腑に落ちるようで、落ちないな」
「そこら辺は諦めて」
私は疲れたように言う、仕方ないじゃん言えない事もあるんだし。
「お祭りをやりたいんです!」
三人と問答した後、一二三ちゃんを筆頭に村の人達が我が家にやって来た。
「ええ、いいですよ。必要な物は用意しますから」
「ありがとうございます!」
祭りは今は村の人達筆頭で行われる。
さて、今年の祭りはどんなのだろう。
「光ーどうしたんでちゅかー」
「あーうう!」
ヴァンダーデ家のお屋敷に赤ん坊を連れてお邪魔すると、必ず光はレベッカさんに抱っこされている、ルカ君に手を伸ばす。
ルカ君も、同じように手を伸ばす。
なので、音彩と、レベッカさん監視の下、絨毯の上に座らせると、キャッキャと近づいて、はぐしあうのだ。
「本当、ルカ君と光は仲良しね!」
「ええ、ルカは光様と仲良しですね」
たたき合うことはしない、一緒によこになって手を握り合ったりするのだ。
「もうじき祭りの季節ですね」
「ええ、そうですね」
私とレベッカさんは微笑み合う。
「吸血鬼でも食べられる物が増えていて嬉しい限りです」
「それは良いですね」
「ええ、ウチの人も祭りの会議に積極的に参加しているようで」
「へぇ、大丈夫ですか」
「ええ、祭りの会議以外はルカの面倒を見てくれますから」
「そうなんですね」
そういうやりとりをしながら心の中で。
すみません、二人が仲良いのは二人が来世で再び巡り合うことを約束したことを神様に誓われたカインさんとリサさんだからだと思いますー!
と思って居るが言えない。
なんだかんだ、色々やっていると、祭りが始まった。
「相変わらず、凄いですねぇ」
「そうですね」
「ああ」
音彩と肇と晃はそう言いながらも、ウキウキしている様子だった。
「屋台に行ってきていいのよ?」
「お母様は」
「私はここで眺めているから。まだ光や忍や楚良は人馴れしてないし」
実際そうだし。
「……わかりました」
「お土産もってきます」
「はい」
そう言って私は子ども達を見送った。
「コズエ様!」
「一二三ちゃん」
「コズエ様のご要望の物ができました!」
「本当?」
「はい、これですね⁈」
「おおー!」
一二三ちゃんが取り出したのはラムネ瓶。
ビー玉が蓋をしている。
「飲んでいい?」
「勿論です!」
ビー玉を押すして入り口を開けて飲む。
懐かしいラムネの味がした。
ラムネを作るのに苦労した甲斐があったし、ラムネ瓶を作って貰えるか一二三ちゃんところとドワーフの方々にお願いした甲斐があった。
やっぱりラムネはこうじゃないと!
「コズエ様は、色んな知識を持っておりますね」
「知識というかまぁなんかアレなのだけど」
これを知識と呼んでいいのか謎だ。
「お母様ー! 苺飴食べましょー!」
と音彩が駆け寄った来た。
「お父様達も!」
そのことばに、嬉しそうに私達は笑い苺飴を食べた。
やはり祭りはこうでなくちゃ!
村の中ではお祭りが始まりました。
また、普通なら種や苗木など国家が管理するものを梢は渡してますが、アレは梢が作物として育ててるからそうなるだけであって他の人が作ったらそれなりに良い、で泊まります。
連作も冬以外一年中って訳じゃないですし。
甘さや大きさ、旨み成分も梢の作物には遠く及びません。
光がルカとじゃれるのは前世の縁的なものです。
他のヒトたちには光たちはギャン泣きをします、晃たちとは真逆ですね、何か理由があるんでしょう。
そして祭りで、梢は作りたかったラムネに感激。
私もラムネは好きです、でも普段は買えないんですよね、お祭りの時期しかスーパーとかで売ってないし…悲しみ。
さて、今回で300話目到達です。
ですがまだまだ続きます。
ですので、お付き合いいただければ幸いです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




