20年目の夏の始まり
梢は光たちの世話に追われていた。
が、ドミナス王国とムーラン王国から夏に来訪したいという手紙が来たら子どもたちはあっさり卒乳してしまい、それに会わせて梢の体にも変化が現れた。
そして、夏が訪れる──
「だーう」
「きゃーうぅ!」
「あーうぅ!」
「はいはい、いいこでちゅねー」
子ども達一人一人に母乳をあたえながら、私は息を吐く。
子ども達に栄養を与える為に、私自身も大食らいになっている。
胸もかなり大きくなっていて、母乳パッドが必須だ。
大変だなぁ、いつ卒乳するかなぁ、とか思って居た矢先。
ちょうと、ドミナス王国とムーラン王国からいつもの手紙が来る頃、あっさりと卒乳してしまった。
それに合わせて私の母乳もあまり出なくなっていった。
早すぎね?
潰したミルクとパンのパンがゆの離乳食をうまうまと食べて居る。
「……全員ダンピール?」
神様が光をダンピールと言ってるから、全員ダンピールだろう。
光はアルトリウスさんの子だから。
どうか、大きくなったら子ども達は夫達に似ますように。
私みたいなへちゃむくれには似ないでください。
『まーだそんな事いっとるんかい』
神様、これは死活問題なんです。
『お前さんも割と美人の部類のはずなんじゃがなぁ……マリーが美人扱いだったし』
HAHAHA、ご冗談を。
私はお祖母ちゃんとは違ってへちゃむくれですよ。
『まぁ、口にしないところが学習しとるな、口にしたら夫達に褒められまくるのが目に見えとるからな』
HAHAHA、当然ですよ。
褒められるのは慣れないんだよ、今の年になっても!
『もうすぐ20年になるのにのぉ』
余計なお世話です。
神様とのやりとりも終えて、夏本番に向けて動き始めた。
『なつですよー!』
『なつです!』
精霊と妖精たちが夏のはじまりを告げる。
そう、夏がやって来た。
吸血鬼らしからぬ待ち遠しい夏が、祭りの時期が。
「大切な方たち」がくる季節が──
「愛し子様、お招き下さり感謝します」
「愛し子様、ありがとうございます」
「感謝いたします、愛し子様」
「いとしごさま、かんしゃいたします」
「かんしゃいたします」
「かんしゃいたしますわ」
「かんしゃいたしますわ!」
マリア様たち、ドミナス王国の方々が感謝の気持ちを伝えてきた。
私は頭を下げて言う。
「ようこそ、いらっしゃいました。歓迎致します」
と。
「感謝いたします、愛し子様」
「感謝いたします、愛し子様! ネイロ様はいずこに?」
「感謝いたします! 愛し子様! ネイロ様はどこですか⁈」
「こら、カーリャ! メルディ! すみません、孫達が」
音彩になついている二人をクレア様がたしなめ、私に謝罪する。
「お気になさらず」
「感謝いたします」
「本当に感謝いたします」
「ええ、心から感謝いたします」
「お招きくださり光栄です」
「光栄の極み!」
今回もいつもとメンバーは同じ。
マリア様、クレア様、王太子妃の三人、カーリャちゃんとメルディちゃんとその婚約者さんたち、そしてシャルル君と婚約者の子たち。
子どもたちは元気に挨拶をすると、来賓の館に入ってから各々興味のある箇所へと向かっていった。
「「ネイロ様!」」
「カーリャ様! メルディ様!」
13歳になった音彩に、カーリャちゃんとメルディちゃんが抱きつく。
二人も大きくなったものだ。
ただまぁ、うちの子は更に大きいのだが……色々と。
うん。
誰に似たのだろうか。
そんなこんなで待っていると、ムーラン王国の馬車が来た。
「「「コズエ様!」」」
「イザベラ様! カナン様、マリーローザ様!」
随分大きくなったカナン君と、マリーローザちゃん、そしてイザベラちゃんを抱きしめる。
「ようこそいらっしゃいました!」
「コズエ様は本当におかわりないわ、いつまでも若々しい」
「まぁ、吸血鬼ですから」
「代わりに私は年老いていくもう30歳だわ」
「それでも、イザベラ様。貴方様はお美しい」
「まぁ、コズエ様ったら」
私がそう言うと、イザベラちゃんは顔を赤く染める。
「お母様はお美しいの!」
「ですよね、コズエ様!」
「ええ」
「ですってお父様」
「ああ、イザベラは美しいとも」
「ロラン……」
ロラン君も若々しい。
というかマリア様もクレア様も会ったときより若々しく見えるぞ、なんでだ?
……やっぱり私の作物?
加工品?
ハハハハ、あり得そうで笑えない。
知らないフリしとこ。
「んー! コズエ様の作る、スイカなる作物、美味しいです!」
皆で種あり、スイカを食べながら言う。
種なしを出すと質問の嵐なので止めた。
皆種を集めている。
きっと畑かどこかに植えて育てるつもりなのだろう。
「あの、愛し子様、きういふるーつ? の苗が欲しいのですが……」
「私も!」
「私も!」
と声を上げる。
「では、帰る時までに用意しますね、雌株と雄株が必要な果物なのですよ」
「ふしぎな植物ですね」
「秋に取れる銀杏も、イチョウの木に雄と雌があるんですよ」
「へー……」
「まぁ、小話はこの辺にして、他に何か食べたいものはありますか?」
「「「「トウモロコシ‼」」」」
子ども達は声を上げる。
「はい、分かりました。茹でたものをおもちしますね」
「手伝うわ、お母様」
音彩が私の手伝いをしてくれる。
トウモロコシを茹でて皆に提供する。
かぶりつき、トウモロコシの甘さに満足そうな笑顔になる。
「これ、種ありますか?」
「ありますよ?」
「あの、宜しければ……」
「勿論です」
多分私が作った物には及ばないだろう。
それでも、上質なものができるに違いない。
悪用もしないだろうしね、元の世界と違って。
そう思いながら、私は種の準備をし、手渡す。
受け取った子たちは嬉しそうに笑い合っていた。
夏がはじまりました、いつも通り避暑に来た子ども王族の方々の相手をする梢。
そしてそれのちょっと前に梢は子ども等が父親似の美人に育つように祈っています。
梢も美人風の可愛い女性として外見イメージがあるのですが…梢は周囲の環境から自分をへちゃむくれと思っています、が言わなくなったのは学習したからですね。
さて、話を戻して王族たちとの夏ですが、生まれてきた光、忍、楚良たちにとっては初めての夏になります。
まだ其処が出ていないので次回になりそうですが……
そして今回で299話目となります。
次回300話目になります。
まだまだ続きますが、大台? なのかな? こえたのでコレからも梢たちを見守ってくださると嬉しいです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます!
次回も読んでくださるとうれしいです!




