保護期間~ルキウスについて~
ドミナス王国の騒動で森に避難してきたエリザたちに料理を振る舞う梢。
エリザは王太子妃として、母としてシャルルたち子どもらを不安にさせないよう振る舞っていて──
「エリザ様、シャルル様、レスティ様、ルミア様、ミレア様。お食事をご用意させて頂きました」
私は作った料理を来賓の館に運んだ、シルヴィーナや村の人達の手を借りて。
「愛し子様、申し訳ございません」
「いいんですよ、こう言う大変な時ほどちゃんと食べなければ」
「はい……」
エリザ様は、申し訳なさそうに頷く。
気にしなくていいのに、悪いのはそういうことをやってシャルル君達の身の安全を脅かした連中だけなのに。
「みんな、食事にしましょう。食べないといけないわ」
エリザ様、みんなを不安にさせないようになのか微笑んで穏やかにしている。
だよなぁ、じゃないとみんな不安になるし、子どもだもの。
「はい、おかあさま」
「はいおうたいしひさま」
「「はーい!」」
ちっちゃい子達はお行儀よく食べて居る。
さすが貴族。
エリザ様の食べ方も綺麗。
やはり次元が違うか、庶民とは……。
『おまえのどこが庶民だ』
とイマジナリークロウが言ってるが無視無視。
私は来賓の館を後にして、家に戻る。
「エリザ達の所に食事を持って行ってたのか?」
クロウがいた。
「早かったね、終わったの?」
「全然終わらん! かなり不味い状況なのに、色々と問題が山積みになってやってられなくなったのだ! 分かるか⁈」
「ああ、うん、お疲れ……」
私はそうとしかし言えない。
「全く、早くシャルルが王太子としての地位を確立せねば」
「そこまで……」
ドミナス王国の問題を私は軽視していたのかもしれない。
「ごめんね、クロウ」
「いや、お前が謝ることではない」
「でも、発端はルキウス君が音彩に恋しちゃったのが原因でしょ?」
「それはある」
「やっぱり……」
「だが変わらなかったのはルキウスの責任だ」
「……」
「ルキウスもそれを自覚している故に、廃嫡も甘んじて受けるつもりだ」
「ルキウス君……」
「死ぬまで独身を貫く姿勢だしな、音彩がいないのなら他の女性に失礼になると言っている」
「そこまでしなくていいのに……」
私はそう思った。
音彩の事とか、責任とか受け入れているなら、政略結婚とかでもどうにかなりそうなのに。
「ルキウスは、音彩以外では女性を女性として大切に扱えんと言い切っておる」
「言い切らないでよ」
いや、本当。
「そんな奴が結婚したら向こうが不幸になるから、生涯結婚はしないそうだ」
「そう……」
「だから廃嫡のうえ、臣籍降下を覚悟している」
「……」
なんとも言えない複雑な気持ちになった。
ルキウス君は、其処まで執着している音彩。
でも、音彩をルキウス君のお嫁にはできない。
婚約者いるし、何より私の子だからだ。
ダンピールが王妃になるなんて聞いたら、反発が酷いだろう。
だから音彩はこの村で恋愛し、この村で恋をして欲しい。
だからカイル君とは幸せになってもらいたい。
けれども、権力闘争やら野心は私達を巻き込む。
いい加減にしていただきたいものだ。
それにまだ幼いシャルル君たちも巻き込んだ。
あーあ、王族って本当面倒で大変だなぁ。
ルミアちゃんとミレアちゃんは年相応だけど、シャルル君とレスティちゃんは年不相応の対応をしている。
シャルル君は既に王太子として自分はどうするべきか考えている。
レスティちゃんはその補佐、王太子妃としてのことを考えている。
なんだかなぁ。
小さい子達がこんなけなげなのがちょっと苦しい。
はぁ、どうしてこうなったんだか。
音彩が悪いとは言いたくない。
ルキウス君があの時は悪かった。
音彩のことになると、音彩の周囲に近づく子に攻撃的になったり。
貴族の間でも女の子の扱いが酷かったり。
ここから始まったんだ。
ルキウス君はおそらく後悔してるだろう。
でも、やってしまったことはもう取り返しがつかない。
だから、私は今できることをするしかないと思う。
この一週間、子どもたちとエリザ様を守り切ろう。
それが私たちの役目だ。
「いとしごさま、これはなんですか?」
「それはですね──」
「いとしごさま! これたべてみたいです」
「はい」
我が子のお世話もしつつ、シャルル君たちのお世話もした。
疲れたら家で一休みする。
「コズエ様、いつもすみません」
「いいんですよ」
そうこう話していたら、一週間はあっという間に過ぎた。
そしてやって来たのはマルス様。
「エリザ!」
「マルス様!」
マルス様はエリザ様を抱きしめます。
「子ども達は? シャルルは?」
「ええ、無事ですとも。コズエ様が面倒を見てくださって」
「愛し子様、本当に申し訳ない、我が国の問題に巻き込んで」
マルス様は申し訳なさそうに頭を下げた。
「気にしないでください、私は私のやるべきことをやらせていただいただけですから」
「マルス様、ルキウス様はもう廃嫡臣籍降下してしまったほうがよくっては?」
「音彩!」
音彩が思っていたことを言ってしまう、ああ不敬罪とかならないよね?
「……ああ、それが確定した、二度とこのような事を起こさないように。今後ルキウスは騎士団で厳しくしごかれることになる」
「そうですか……」
マルス様、苦渋の決断をしたんだろうな。
このままだとまた何度も同じ事が起きかねないと。
「配置した部隊も信頼できる者にした」
「なら良かったです」
「ちちうえ!」
シャルル君が駆け寄ってきました。
目には涙を浮かべて。
「ちちうえ、ごぶじでしたか?」
「大丈夫だとも、私は、エンシェントドラゴン様がいたのもある」
「ありがとうございます、えんしぇんとどらごんさま」
クロウが今ここにいないが聞いたら当然のことをしただけ、とでも言うかな?
「さて、帰ろう」
「ちょっと待ってください、お土産を……」
そう言って村特産の土産を持たせて帰るのを見送り、白亜たちを護衛につけた。
これで何かあっても平気なはず。
そして無事に王都に到着し、王宮に着いたと戻って来た白亜から聞いた。
その後戻って来たクロウからも、マルス様から聞いたことを聞き、やっぱりそうかとため息をついた。
ルキウス君が音彩にあそこまで執着する理由は未だ分からない。
けれども、執着が彼をある意味、転落させた。
それが無かったら王太子として立派になれただろうに。
勿体ない、と思うしか私はなかった──
ルキウスの件がかなり深刻になりつつあるようです。
今回で解決したのでしょうか、本当に?
ドミナス王国に根深い問題を残したのではないかもしれません。
シャルルは次期王太子として頑張っていましたが、父であるマルスが迎えに来たときは子どもらしく泣いていました。
クロウも何とか終わったと思っているようですが、果たして…?
シャルルが無事に王太子になるまでが辛抱でしょう。
長いですね。
ルキウスが全て分かって王太子になれないのも納得しているのに、周囲がそうさせてくれないのもあるのかもしれませんね、ルキウス派の連中が。
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