騒動は突然訪れる~春の日の出来事~
穏やかな春の日、それを吹き飛ばすように早馬の馬車が始祖の森に駆け込んできた。
問題なく入れたことを感知した梢が向かうと──
「あー穏やかな日々だなぁ」
春の暖かな日差しを受けつつ畑仕事を無理のない範囲でやっていると。
猛スピードでやってくる馬車の存在を感知した。
ドミナス王国の馬車だ。
森に入れるということは──
クロウとシルヴィーナが既に行動していた。
私は二人の後を追う。
すると、馬車から出て来たのは、エリザ様と、シャルル君と、レスティちゃんと、ルミアちゃんとミレアちゃんだった。
「エリザ様⁈ それにシャルル様達も⁈」
「どうしたのだ?」
クロウが尋ねると、エリザ様は口を開いた。
「私がシャルル達の面倒を見ていると、襲撃されたのです。護衛が居たので助かりましたが、マリア様から『解決するまで、お前とシャルル達は始祖の森に匿って貰え』とおっしゃり……」
「なるほど」
「じゃあ、来賓の館に案内しましょう、所で持ち物とかは?」
私が尋ねると、エリザ様は首を横に振った。
「ほとんど持ち出せませんでした、急な事でしたので」
「では、我がドミナス王国に行って持ってくる」
「クロウお願い」
クロウがドラゴンの姿になって飛んで行くのを見て、子ども達は目を丸くしている。
「しゃるるさま、あのおかた、ほんとうにえんしぇんとどらごんさまだったのですね」
「そうだね」
「あたしもびっくり」
「あたしも」
あー、そう言えばこの子達はエンシェントドラゴンのクロウ見たことなかったか、と今更ながら思う。
「エリザ様、シャルル様、レスティ様、ルミア様、ミレア様、来賓の館でお待ちしましょう」
「はい、ありがとうございます」
「「「「ありがとうございます!」」」」
元気いっぱいの子ども達、しかし、襲撃か……。
予想ではまだ居るルキウス君派の連中が関わっているかな?
それともどこかの国かな?
まだ私が知らない国だったりして……
それはないか。
「ガネーシア王国を追放された愚者と、ルキウス派の愚者が手を組んでいた」
「Oh」
思わず声が出ちゃったよ。
おバカしかいないのか、マジで。
「神々の愛し子の子なら聖女であろうという意見と、それを囲ってルキウスを傀儡にしたい両者の意見が、何か変にかみ合ってこのような事態になった」
「なるほど……」
「取りあえず、ドミナス王国に報告してこよう、あと一応ガネーシア国にもな」
「わかった」
飛んで行くクロウを見て、私はため息をつく。
「なんで平穏な生をくれないんだか……」
音彩が結構可哀想に見える。
早く結婚させた方がいいのだろうか。
いやでも、まだ13歳だし、取りあえず18歳以上になるまでは辛抱させねば……
ふと思う。
光達も似たような目に遭わないか不安で仕方ない。
今はティリオさんがあやしてくれているが、また精霊と妖精が操られて連れて行こうとしないとも限らない。
私は不安になって家に戻る。
「ただいまー」
「お帰りなさいませ、コズエ様」
うーむ、やはり様づけか。
いい加減直して欲しいが、直らないもんはしゃーない。
「光に、忍に、楚良はどうしてる?」
「全員ぐっすりねています、なので時々頭の向きを変えたりしています」
「ありがとう」
本当にね。
頭の形が変になるとちょっと可哀想だからね。
一応矯正の道具はあるけど……うん、それは最終手段だ。
「いとしごさま」
「あら、シャルル様」
シャルル君がチャイムを鳴らして入って来た。
「どうしたのです?」
「ミレアとルミアがぐずってるんです。おかあさまがなんとかしているのですが、きをまぎらわせているのですがふたんをへらしたいのですが……」
「はい、いいですよ」
私はシャルル君について行く。
途中で子ども達に声をかけて、シルヴィーナも呼ぶ。
来賓の館に入ると、エリザ様に抱きついて泣きべそをかいている、ミレアちゃんとルミアちゃんが。
レスティちゃんは、マイペースに護衛につけた白亜を撫でている。
レスティちゃんすげぇな、さすが未来の正妃候補。
ミレアちゃんとルミアちゃんは年相応、って感じ。
「おがーざま、おどーざま」
「がえりだいです」
「ごめんなさいね……ルキウスがああなっているばかりに」
「ミレア様、ルミア様、苺の飴を食べますか?」
「だべまず」
「ぐだざい」
そう言って苺飴を口に入れてあげる。
ぐずぐずいっていたが、少し落ち着いてきてくれた。
少し安心していると、レスティちゃんとシャルル君が服を引っ張った。
「何でしょう、シャルル様、レスティ様」
「わたくしにもあめをください」
「くださいな」
「はい、いいですよ」
二人に飴を手渡すと、二人は口に放り込んでコロコロと転がし始めた。
私はまだぐずぐず言っているミレアちゃんとルミアちゃん、そして困っているエリザ様の方を向く。
「大丈夫ですよ、エンシェントドラゴンのおじいちゃんがなんとかしてくれますからね」
「ほんとう、ですか?」
「そのために、ドミナス王国に向かいましたから」
私はそう言って頭を撫でて抱き寄せた。
で、結論。
一週間待機。
そういう行動を表立ってするバカを一掃する。
と、クロウが宣言したので、一週間は始祖の森に待機となった。
子ども達は不安そうだったが、同じ年頃や、すこし年上の子等が面倒を見てくれる。
勿論私の子ども達も。
「クロウも、大変よねぇ」
「コズエ様も大変かと、友好国とは言え、このような事態に巻き込まれているのですから」
「まぁ、そうだけど、私は大人だからねぇ」
「我慢しないでいいんですよ?」
シルヴィーナが不安そうに言う。
「大丈夫、無理そうなら発散するから」
「ならいいのですが……」
取りあえず、クロウが戻って来たときにストレス発散用のケーキとかタルトとかパイを作ろう。
私はそう思い、家に帰り台所に立った──
色んな思惑がかみ合って問題が発生しました。
ルキウス派は愚者しかいませんし、ガネーシア王国を追放された愚者たちも脳みそがアレです。
シャルルたちにはいい迷惑です。ついでにルキウスはもう王太子になってはいけないと自覚しているので、はた迷惑でもあります。
ただ、それでも、ルキウスは音彩への異常な執着は消えていません。
またシャルルの未来の側妃ルミアとミレアは年相応で怖くて家に帰りたいけど安全じゃないので帰れなくて泣いています。
シャルルとレスティも泣きたいですが、我慢しています。
余計二人が不安になってしまうからです。
それに母であるエリザの不安にもなるので。
また、梢は梢で音彩が狙われている状況に頭を痛めています。
クロウはそれらの不安を取り除くために行動しています、さてどうなることやら。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




