二度目の出産~祝福される赤ん坊達~
穏やかな冬を梢は過ごしていた。
雪が降らないというわけではないが、雪に追われる日々ではなかった。
静かにつもり雪を聞きながら、出産日を待ちわびていた。
そして冬の終わりが近づきついに──
今年の冬はいつもよりも穏やかだった。
比較的穏やかなだけで雪は毎日のようにしんしんと降り積もっている。
なので、宴は屋根のある場所に集まってやるようになっていた。
私は不参加。
変わりにレベッカさんがルカ君とカイル君一緒に遊びに来てくれる。
音彩はカイル君と仲良くおしゃべり。
ルカ君はわたしのお腹に触りたがる。
なんとなく分かっているのだろう。
お腹の中にいる子が前世で自分が愛したヒトだと。
そんなこんなしていたら、冬の終わりが近くなってきた。
そろそろ、王家の方々帰るのかなーと思っていたら。
「……」
「お母様、どうしたの?」
「破水したかも」
「きゃー⁈」
音彩は慌てて飛び出していった。
取りあえず仮眠用のベッドに横になる。
音彩がルズさんをおんぶしてやって来た。
音彩の形相がすごい、必死すぎる。
「梢が産気づいたから、男衆は待機だ」
クロウはそう言った。
「何もできないのが辛いです」
「そうですね……」
「ああ……」
「はい……」
「ええ……」
梢の夫達と、息子達はがくりと項垂れていた。
こういう時役に立たないのを不甲斐ないと思っているのだろう。
「お前達は梢の無事でも祈っていろ、梢はディーテ神様の加護を受けているから無事だ、必ず」
クロウがそう言っても男衆は暗い表情をしていた。
そんな感じなのでクロウはため息をつく。
「全くお前達は、本当に親子というか……」
クロウが呆れていると、扉が開いた。
「産まれました! 女の子が二人! 男の子が一人!」
産婆の手伝いをしていた音彩と女性陣が出て来て言った。
「ふへぁ……」
相変わらず出産中のことは覚えてない、わりと大変だったこと位しかぼんやり覚えていない。
気がついたら、赤ちゃん、女の子二人、男の子一人を抱っこしていた。
ふぎゃあふぎゃあふぎゃあ
赤ちゃん達は元気よく泣いている。
「よしよし、産まれてきてくれてありがとう、私の可愛い子ども達」
「「「コズエ!」」」
「母さん!」
「母様!」
男性陣が入ってくる。
「うまれたよ、みんな元気そう」
私は微笑みを浮かべて五人を見る。
アルトリウスさん達、晃、肇は安心したように息を吐いた。
その後クロウは入って来た。
そしてじーっと子ども達を見つめる。
「父親に抱っこさせていいか」
「あ、いいよ」
そう言って抱っこさせる。
白金色の産毛が頭に生えている女の子を、アルトリウスさんに。
黒髪の産毛が頭に生えている女の子を、アインさんに。
黒髪の産毛に少し褐色肌な感じな男の子を、ティリオさんに。
「その子等がお前さんの子だ」
「よく分かるね……」
「まぁな」
ちょっと驚いている。
それにしても……
我が家の子ども等、男女、三対三で同じじゃね?
「後で、コズエに名前をつけて貰いましょう」
「そうだな」
「ええ」
「一応、相談はさせてね?」
つまり日本人風、極東風の名前になると言うことだ。
さて、ちょっと考えないとね。
で、考えた結果。
アルトリウスさんとの子は光、アインさんとの子は忍、ティリオさんとの子は楚良。
と名付けた。
晃と光だけ似ちゃったけど、まぁよいかな、と思って居る。
子ども達は自分の妹、弟が揺り籠で寝ているのを覗き込んで目をキラキラさせている。
「私の妹光……」
「私の妹、忍……」
「私の弟、楚良!」
皆嬉しそうに赤ちゃん達を見ている。
其処へ、マリア様達がやって来た。
「愛し子様、よく出産を乗り越えました」
「ありがとうございます」
「御子はどちらに?」
「ここに居ます」
と、子ども達が自分の妹弟を抱っこしていた。
「わぁ、可愛い!」
「ああ、やはり赤子は可愛らしいな」
「ほんとうです」
「「ほんとでしゅ」」
「ほんとうにかわいい」
「私達もあんな頃があったものね」
「うん、そうだね」
みな色んな事を言いながら、祝福して行った。
そして帰った頃にクロウがやって来た。
「梢も赤子も無事だそうだな」
「無事じゃなかったら困ります」
アルトリウスさんが言うと、クロウは苦笑した。
「冗談だ、子育てがまた大変そうになるが、頑張れ」
「手伝ってくれる?」
「当然だろう」
クロウはそう言って家から出て行った。
赤ん坊達はすやすやと眠っている。
起きたらミルクか濃縮ブラッドジュースをあげている。
よく寝て、良く飲む子達だ。
頭の形も変なのにならないように気をつけている。
前の世界の次兄が後頭部絶壁だったからね。
そうして慌ただしい子育てにおわれていると──
春が近づいて来た。
「では、夏に」
「コズエ様、夏にまたお会いしましょう?」
「はい、マリア様、イザベラ様」
そう言ってドミナス王国とムーラン王国にマリア様達と、イザベラ様達は帰っていった。
まぁ、帰る前に子ども達をもっと見ていたいと子ども等が可愛らしい反抗期を見せたのだが、マリア様が──
「そんな我が儘言う子は、愛し子様は赤子を安心して見せられぬぞ」
と軽く脅して、皆渋々馬車に乗った。
そんなシャルル君たちがかわいくてしかたなかった。
あと、馬車が動き出すのを見計らって白亜達をいつも通り護衛につけ、見送る。
春はもう其処まで来ていた──
梢の二回目の出産。
神様の加護があるので梢の出産は命がけではありません、まぁそれでも大変ですが。
梢の意識が吹っ飛んでいるのも加護の効果、ディーテ神がいろいろしてます。
そして産まれた三つ子、光、忍、楚良。
新たな家族が加わり、梢一家も賑やかになるでしょう。
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