夏が終わり、19年目の秋きたりて
19年目の夏の終わり、王族の者達が帰路につき、少しして19年目の秋が訪れた。
年々増える収穫量に梢は根を上げて神様にお願いをする──
夏は色々と忙しかった。
祭りをやったり、王族の方たちにあれこれしたり。
まぁ、おもてなししたりした、私は。
クロウはマリア様やマルス様たちからの相談を受け付けていた。
内容は分かりきったことだがルキウス君のことだった。
マジで改善の余地がないらしい。
お陰でシャルル君の護衛を増やしたり、婚約者の子の護衛を増やしたり、『影』に危害を加えないものが居ないか確認させたり、もし危害を加えようとするものなら処分する位だった。
シャルル君も婚約者の子達も大変だなぁ。
イザベラちゃんは穏やかに暮らせているらしい、今のところ。
婚約者の子達とも良好、国の運営も良好、子ども達との関係も良好。
いやぁ、あの時苦労した甲斐があったというものだ。
そしてそうこうしていると、帰る時期がやって来た。
「しゃるるしゃま、もっといたいれしゅ!」
「ここはしゅてきでしゅ!」
ミレアちゃんとルミアちゃんが帰る際に駄々をこね始めた。
可愛いが、帰らないと国で色々問題が起きる。
「ミレア、ルミア、そのきもちはわかるけど、つぎのおうたいしとおうたいしひになるかのうせいがぼくらはたかいんだ、だからべんきょうをしなくちゃならない」
「そうよ、ミレア、ルミア、あなたたちのきもちはわかるけど、がまんしなくちゃ」
「「うー……」」
「シャルル、ミレア、ルミア、レスティ。次は冬に来よう、それなら我慢できるね?」
「「あい‼」」
「よいのですか、マリアさま」
「愛し子様の許可はもらっているからな」
マリア様が私を見るので私は頷く。
「シャルル様、ミレア様、ルミア様、レスティ様、冬もいらしてください。歓迎します」
「「あい!」」
「ありがとうございます、いとしごさま」
「かんしゃいたします、いとしごさま」
ミレアちゃんとルミアちゃんは年相応に元気そうにお返事。
レスティちゃんとシャルル君は精霊と妖精の愛し子なのかちょっと年不相応にお礼を言ってきた。
「コズエ様、私達も冬に来て良いかしら?」
「勿論ですよ、イザベラ様」
イザベラちゃんにそう言うと、イザベラちゃんはうれしそうに微笑んだ。
「お母様、またここにこれるの?」
「そうよ、マリーローザ」
「やったぁ!」
「ふふ、カナンも嬉しそう」
そう言ってイザベラ様はちらりと二人の婚約者の方を見る。
「わたし、この村好きです。だって領地よりも色んなものが沢山!」
「わたしもです、見たことのない作物に興味が引かれます、冬はどんな加工をして提供するのか楽しみです」
リィナちゃんと、クレス君は年相応でいながら、領地の事を頭に置いているのでどうやら普通の子とは異なるみたいだ。
そうして、私たちはマリア様たちと、イザベラちゃんたちを見送った。
それから少しして──
『秋ですよー』
『秋ですよ!』
妖精と精霊たちが元気に飛び交う。
ああ、秋か。
空気やにおいが秋を告げる。
そして──
「うわあああああ! 収穫してもしても終わらないぃいいい‼」
半ば発狂しながら今は広げてないのに増える作物たちを収穫する。
「お母様、大丈夫?」
「大丈夫じゃなさそうだから私達もやろう」
「あ、アルトリウス父様はブラッドフルーツの収穫だけやって、他のだと枯らしちゃうかもしれないから」
「分かった……」
家族総動員で収穫を行う。
それでなんとか一日で収穫できる、日中は村の人たちが収穫しているが、彼らも自分の畑の収穫がある。
唯一の救いは村の人の畑は収穫を一回すれば終わり。
私の畑は収穫してもまた実る。
なので、一回収穫を終えてしまえば、後は私の畑の収穫に専念できるのだが──とくに、何も、していないはず!
なのに、私の畑は収穫すればするほど実っていく。
元いた世界のアニメの某ロボットの便利道具使ってるわけじゃないんだからさ。
若干いい加減にしてほしくもあり、神様にお供えしてこれ以上収穫が増えるのを止めてもらった。
すると、一日の収穫量は増えることなくなり、疲弊もしなくなっていった。
もっと早くやっておけば良かった。
「お母様、お母様」
「なぁに、音彩」
「収穫祭がしたいの!」
そう言えばまだやってないな。
「いいわ、何を──」
「私達とシルヴィーナさんとクロウおじ様で話合って決めたいの、お母様は休んで!」
「え」
休んでと言われたことに驚く私。
「これからは私達も主導でやっていきたいの!」
「はい! この村で生きて行くからには!」
「母さんの子どもですから私達は!」
「晃、肇、音彩……」
私は感動してしまう。
まだ12才なのに、もう色々と考えている。
今後村で暮らしていく時私がいなくなった時も考え始めている。
「ありがとう、じゃあ任せようかしら」
「「「はい!」」」
子ども達は元気に返事をして家を出て行った。
「大きくなってるなぁ」
「でも、まだ12年だ」
アルトリウスさんがそう言う。
「そうね」
「ですが、立派ですね。私達の子は」
ティリオさんが微笑む。
「ええ、そうですね。ティリオ。あの子達は立派だ」
アインさんは誇らしそうに言う。
ええ、私達の子は誇らしいわ。
私に似ず、立派で。
「コズエ、どうせ自分に似なくて立派とか思ったでしょう?」
げ、アインさんなんで分かるの⁈
「やはり図星か」
「これはコズエ様がどれほどれほど立派なのか言い聞かせなければなりませんね」
「そうですね」
ひぃいいい!
それから数時間こんこんと、私がどれほど立派なのか褒めちぎられた。
色んな意味で恥ずかしいから勘弁して‼
と思ったけど誰も止めてくれなかった。
子ども達が来たら子ども達も参戦するレベルだったし。
なんでこうなった。
はい、収穫量は神様も増やしていたのでした、多分これ以上増える事はない…かな?
夏の終わりでは小さい子であるルミアとミレアが駄々こねてますが、二人はちゃんとした大人達に「飴」を貰ったので冬まで頑張るでしょう。
さて、秋の収穫は大変ですが、子ども達が立派に色々と自立して考えております。
そして梢、相変わらず自分を下に見る傾向が強いです、家族たちに頑張ってもらいましょう。
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