元の世界の夢~ここに居ていいんだ~
梢の祖母もとい前神々の愛し子である、鞠子が亡くなった。
祖母は自分をみているから恥じることの無いよう生きようと思った。
そして神の計らいで遺骨の一部をもってこれ、ユグドラシルの近くに墓を作り──
お祖母ちゃんが元の世界で亡くなって一週間が経った。
私は相変わらず、イザベラちゃんやマリア様とお話したり、子どもたちや夫たちとあれこれお話したりしている。
お祖母ちゃんは元の世界で亡くなったから、こっちの世界の神界で私達を見てくれている、だからお祖母ちゃんに恥じないようにしないと。
前の「神々の愛し子」だったお祖母ちゃんを幻滅させる行為はしないようにしないと。
……まぁ何が幻滅させる行為かはわからないんだけど。
ただ、世界樹ユグドラシルの前に小さなお墓は作った。
何せ、私は元の世界には神様の力がないと行けないからね、ぼんやりとした霊体であっても。
なので、ユグドラシルの前にお祖母ちゃんのお墓を作り拝んでいる。
幸いなのか、神様がお祖母ちゃん骨の一部を持ってきてくれたのでお墓の下に埋めてある。
「……」
「お母様、何をしているの」
お墓を拝んでいると、音彩がやってきた。
「うん、ちょっとお墓のお参りをね」
「誰のお墓?」
「……私がこうなる前に数少ない味方だったらしい、お祖母ちゃんのお墓」
「お母さんのお祖母ちゃんのお墓?」
「うん、神様が持ってきてくれたの、遺骨を」
「神様が」
「ええ」
そう言うと、音彩もお墓に手を合わせた。
「お母さん、お祖母ちゃんってどんな人だったの?」
「優しいお祖母ちゃんよ、私の数少ない味方」
「悲しい?」
音彩は寂しそうに聞いてきた。
「うん、悲しいし、寂しい」
「お母様、早く亡くならないでね」
「勿論よ」
「うん……」
そう言って頭を撫でるとうれしそうに目を細めた。
我が子達には、私のような苦しみを味わってほしくないと思う。
夢を見た。
『御坂の奴死んだみたいだぜ』
『あの陰気な奴か、居なくなって清々する』
ああ、これは知っている声だ。
私を、踏みにじってきた連中の声だ。
『……』
『おい、お前顔色悪いぞ?』
『何で──がこんなに少ないと思う?』
『何だよ』
『……御坂の奴に何かした連中、一年に一人、二年に二人、三年に……って数を増やして死んでるらしい』
え、死んでる?
『はぁ⁈』
『俺は神社でお祓いとかしてもらおうと思ったけど無理だった! このままいつか俺も殺されるんだよ、何かに!』
『何かって何だよ!』
『神主が言ったんだ知らない神々がお前を呪っている、だから神社に入らないでくれって言われたんだ!』
『どうせ嘘に──』
トラックが入って来た。
凄惨な現場へと居酒屋は姿を変える。
トラックの運転手は何を言っているか分からない。
分かることは一つ。
私を虐げていた奴らだけが死んだということだ。
「……」
目を開け、ふぅと息を吐く。
着替えて自分の部屋に行く。
「神様」
『おお、どうした梢?』
「私を虐げてた連中死んだ夢見たんですけど、正夢ですよね」
『ネメアの奴見せるなというたのんじゃがのぉ』
「ネメア?」
『儂等の世界の復讐、報復、因果応報を司る女神じゃ』
「……その方が?」
『まぁ、儂等もちょこっとやったが、お前さんを虐げてた奴らがのうのうと生きているのは許せんと上級神では全会一致でな』
「はぁ」
『一年目に一人、二年目に二人、三年目に……という風に悲惨な死を遂げさせたのじゃ』
「……」
『お主は喜ばないじゃろうから内緒にしてたんじゃがの』
「そう、ですね」
私は言葉を濁す。
死んでほしいとは思わないが、苦しんでほしいとは思っていた。
『苦しみの中の死だから、気にしないでよいぞ』
「はぁ」
『お前には夢物語のようなもんじゃ、お前の現実はこちらなのだからな』
「……はい」
私はそう言って通話を終えた。
息を吐く。
涙は出ない。
悲しくも無い、うれしくも無い。
ただただ、ああ、そうなんだ。
それだけだった。
「お母様、収穫を──お母様」
自室から出て、着替えて雪かきの準備をしていると音彩が不思議そうな顔をしていた。
「どうしたの? 音彩」
「……お母様、何かあったの?」
「何もないわよ?」
「そう?」
「そう」
そう言って頭を撫でる。
「気にしないで雪かきを終わらせましょう」
「はい!」
そう言って雪かきを開始した。
「悲しいような、寂しいような、なんとも言えない顔をしてたのに……」
と、音彩が呟いたのは聞かないことにした。
「子ども達は?」
「クロウ様のところだよ」
「そう」
私はいつものように返す。
「コズエ、何かあったのか?」
「何もないよ?」
「そうですか?」
「本当だって!」
「そう、ですか……」
三人は何か言いたそうにしていたが、やがて思いついたように私の頭をなでた。
「うわわ⁈」
「コズエ、何があっても私達は味方だ」
「そうですよ、コズエ」
「はい、コズエ様、私達はいつでも貴方の側に」
そう言われて少しだけ泣いた。
罪悪感がないわけじゃ無かった。
でも、私はどうしてもなんとかしたかった。
神様の呪いで死んでいく私を無碍にした人達。
私がいなかったら生きていたのかなと思い罪悪感が湧いた。
でも、アルトリウスさん達に言われて、ここに居ていいんだと、思えた──
今回も梢メインのお話です。
ただ、梢が祖母の名前に恥じないように心がけるけどどうすればいいかちょっと分からないところとかあります。
そして墓はいつも見ていてくれているけど精神的に作りたかったのがあります。
そうすることで、梢の祖母へのいろいろ不安とかがなくなるので。
一方上級神ネメアが見せた夢、元の世界の現実でのできごとについてですが。
梢は、そこまでダメージをうけていないように見えて結構受けてます。
なので、夫達がここにいていいということを示すことで罪悪感などから逃れられています。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




