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死を看取る~前の世界で~

梢は休憩がてら散歩していた。

その時急に神様から家に帰って棺桶に入るようにいわれたので実行すると──




 目を開けると、深夜だった。

 アインさんとティリオさんは寝ている。

 一回のリビングに行くと子ども達とアルトリウスさんが起きていた。


「ああ、コズエ。目が覚めたのか」

「うん」


 アルトリウスさんの言葉に私は頷く。


「お母様、お疲れだったんでしょう?」

「だから休んだのよ」


 心配そうな顔の音彩の頬を撫でて、私は微笑む。

 疲れたから休む。

 今はちゃんとできている。


「ちょっと散歩に行ってくるね」

「いってらっしゃい、お母様」

「コズエ気をつけてくれ」

「母さん、いってらっしゃい」

「母様、気をつけて」

「はいはい」


 私は苦笑し、コートを羽織って外へ出た。

 雪が降っていない済んだ空だった。


 空気もひんやりとしていて澄んでいる。


 雪が自動で溶けるように魔法をかけてあるベンチにすわり、ひとり空を見る。

 ベンチのぬくもりを感じながら、冷たい空気を杯一杯に吸い込む。


 ああ、なんて幸せなんだろう。


 ここに来て18年の歳月が流れた。

 向こうの世界だと、私が転移した時生まれた子は高校三年生くらいになっているころかなぁと思いをはせる。

 ちょっと分からないけど。


『梢!』


 うわ、神様⁈

 何⁈


 驚く私に神様は続けて言う。


『今すぐ家に戻って棺桶に入るんじゃ!』


 う、うん!


 私は家にダッシュで戻り、コートを脱いで、棺桶にダイブした。





 病室に私はいた。

 周囲の人は驚いている。

 私の体は霧の集まりのようなものでできていた。


 視線を上げると、お祖母ちゃんがベッドの上にいた。


『お祖母ちゃん……』

「梢ちゃん……」


「梢⁈」

「梢……」

「梢ちゃんなの⁈」


 家族や集まった親戚ががやがやと言い出す。

 ああ、つまり神様、そういうことなんだね。


『迎えに来たよ、お祖母ちゃん』

「ありがとうねぇ……」


 お祖母ちゃんの手を握る。


 冷たくなっていくお祖母ちゃんの手。

 お祖母ちゃんはにこりと笑ったままだ。


 手がするりと抜けた。


 パタリと手は動かなくなった。


 ピーという音だけが耳に響く。

 涙を流して私は誰にも見えなくなったお祖母ちゃんの手を握り、魂状態のお祖母ちゃんの手を握り。


『じゃあ、さようなら』


 そう言ってその場を後にした。





 気がつくと神界にいて、お祖母ちゃんは──鞠子お祖母ちゃんはあの若い姿になっていた。


「梢ちゃん、ありがとう、迎えに来てくれて」

「すまんの梢、あちらの世界と繋がりがあるのはお主だけだったから、マリーをこちらに呼び寄せるのにお前を使ったのじゃ」

「呼び寄せる」

「正確には成仏させるじゃな、お前さんの国的には」

「どゆこと?」


 神様の発言が意味分からん状態だった。


「マリーの魂は特別なのは愛し子じゃなくなっても変わらん、それをあっちの世界に置いとくと向こうで悪用されかねんからこっちにお前さんを媒介して連れてきて貰ったんじゃよ」

「はぁ」

「おじいちゃんと一緒のお墓には入れたけど、魂は別々なのが寂しいわ」

「まぁ、それはすまんな。代わりに神界で向こうの世界の様子を見られるようにしておいたから、マリーはゆっくりするといい」

「じゃあ、そうさせて貰います」

「神様、私が死んだらどうなるの?」


 私は気になったので尋ねる。


「お前さんの魂は愛し子という要素が強いからこっちの所に来る」

「なるほど」


 お母さん達とは会えないのか、少し残念だ。


「梢」

「お祖母ちゃん」


 お祖母ちゃんはにこりと微笑む。

 そして私の手を握る。


「私はここにいるから元気でいるんだよ」

「うん!」


 私は頷く。

 そして意識は暗転した──





「マリーすまないのぉ、本来ならお前さんをあっちの世界で……」

「いいんです、可愛い孫の為なら」

「梢がやはり心配か?」


 マリーは下界に戻った梢の魂と梢の体が起きたのを見て安堵していた。


「それにしても最初はおどろいたものじゃ、吸血鬼でスローライフをしたいと……」

「梢は、吸血鬼に憧れていたんです」

「ほぉ」

「多分ソレは──」


「長く生きている者ほど死にたがり屋の反面生きるのに必死な所の惹かれたのでしょう」





「んあ」


 起きると夕方になっていた。

 私は棺桶から起き上がり、着替えるとリビングへと移動した。


「母さん、おはよう」

「おはよう、肇」

「母さん、今日はご飯とたくあんとお味噌汁だよ」

「わあ、ありがとう晃」


 純粋にうれしくてそう答える。


「私達でつくったの、食べてね」

「もちろん」


 音彩が言うので、椅子に座り手を合わせて──


「いただきます」


 そう言って食べる。

 やさしい味だった。


「ああ、美味しい」


 息を吐く。


 白米は甘くて美味しく、たくあんは塩気が優しい、味噌汁は油揚げと豆腐の相性が良かった。


 お祖母ちゃんは死んでしまった。

 でも日常は続いていくのだ、悲しい気持ちはあるけれど。

 悲しい気持ちだけではなく、今も見守っているという思いで前に進んでいくだけだ。


 お祖母ちゃん、今日も私は元気だよ──







はい、ちなみにまだ終わりません。

これで終わると勘違いしてしまった人は申し訳ない、まだまだ続くんですよ。

あと梢は魂の状態で向こうに一時的戻ったので血縁者には見える幽霊のような感じの状態でした。

鞠子もとい前神々の愛し子であるマリーは神界で今後梢を見守り続けることになります。

梢は少し寂しいけれども、見守ってくれてるのが分かるから安心しているのです。

あともちょっとシリアス?的な要素も続きます。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
シリアス展開かと思いきやただただ感動しただけだった。作者様のせいで涙腺ゆるゆるです。どうしてくれるんですか。この話もお気に入りに登録案件ではないですかぁ!?活動報告でシリアスの皮をかぶったシリアルだと…
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