梢の服とコート作り
梢は服作りをしながらふと思ったことを神様に尋ねる。
何故下級神の呪いが自分に通じたのかを──
チクチクと服を作りながらふと思った。
スマホを取りだし、神様に連絡する。
「もしもし神様ー?」
『なんじゃー?』
「私下っ端の神から衰弱の呪い貰ったじゃないですか、下っ端なら通じないと思ったんですが……」
『いや、それがのう……』
話を聞くとこうだ。
元々、衰弱の呪いの判子があるらしい。
神様が作った。
しかし、頻繁に使わないように保管し、鍵を司る神様に鍵を預けていたそうだ。
が、この神様酒癖がめちゃくちゃ悪い。
酔って酒をより欲して、そして最期には寝てしまう。
その時、鍵束を拝借して合う鍵を見つけて保管庫から出し、私の背中につけたという。
ただ、神々の愛し子で、神様の命令がない状態だから衰弱はあの程度で済んだそうだ。
「鍵の保管神様がやりません?」
『そうすることにしたわい、この鍵に関しては』
神様は盛大にため息をついた。
「ところで鍵を司る神様は?」
『10年は飲酒禁止令を出したの』
「わーお」
酒好きなのだとしたら、これは苦行だ。
『速攻で苦行過ぎるー! とぶーたれたので100年でもいいんじゃぞと行ったら受け入れた』
「でしょうね」
私は苦く笑う。
『全く、儂が毎日口酸っぱく梢の事に関しては手出しするなと言うておるのに』
「まぁ、私吸血鬼ですからね、仕方ありませんよ」
『梢は寛大すぎるんじゃよ』
「まぁ、神様達が色々手を回してくれるからいいかなって」
『本当寛大じゃの……』
神様はため息をつく。
『そんなだから苦労してきたんじゃろうなぁ……』
「あー……そうかも、しれませんねぇ……」
『前の世界はさぞや生き辛かったじゃろう』
「ええ……」
十年以上経っても未だあの世界での苦しみはまだ私の内側にある。
『だが、こちらの世界にお前に無理強いする輩はおらん、のんびり過ごすと良い』
「ありがとうございます」
そう言って神様との通話を終える。
再度ちくちくと裁縫に勤しむ。
「できたっと」
晃達のお出迎え用の服だ。
気に入ってくれるといいが……
「晃ー、肇ー、音彩ー? いるー?」
「います!」
「いますよ!」
「いるわ!」
ぴょこんと顔を出す三つ子達が可愛らしい。
「今までは、王族の方のお出迎えにいつもの格好をしてたけど、良かったら今度からコレ着てくれるかな? 作ったの」
「本当ですか?」
「良いのですか?」
「着てみたいわ!」
「じゃあ、着てみて」
「「「はーい‼」」」
三人は元気よく返事をして、服を着替えに行った。
しばらくして戻ってくると、私は声を上げる。
「わぁ! 似合ってる!」
「ちょっと照れますね」
「そうですね……」
「お姫様みたい!」
キャッキャとはしゃぐ音彩と、照れる晃と肇。
でもうれしそうだった。
「ただいま帰りました……おや、肇素敵なお召し物を着ていますね」
アインさんが帰って来て我が子を褒める。
「本当ですか、父さん」
「勿論ですよ」
アインさんに言われて、肇はうれしそうにはにかむ。
「晃と、音彩も素敵なお召し物ですね」
「ありがとうございます、アイン父様」
「ありがとう! アインお父様!」
アインさんは二人を褒め、二人もうれしそうにする。
「ただいま帰りました、コズエ様……おや、音彩、素敵なお召し物ですね」
「お母様が作って下さったの! 似合う?」
「ええ、似合っていますとも」
ティリオさんが帰って来て、音彩を褒めて抱き上げる。
音彩はうれしそうにアインに抱きつく。
「コズエ、今戻った……晃か、いい服ではないか」
「父様、母様に作っていただいたのです」
「似合っているよ、大事に着なさい」
「はい」
帰って来たアルトリウスさんは晃をそう褒めると、頭を撫でた。
「わぁ、コズエ様の御子様のお召し物、素晴らしいですわ!」
「イザベラ様、有り難うございます」
新しい服で、イザベラちゃん達に会いに行くと三人がいったので、ついて行くと、イザベラちゃんは目をキラキラさせた。
「うむ、よい代物だな」
「そうね、素敵なお召し物だし、本人にも似合ってるわ」
マリア様とクレア様も褒めてくれた。
ありがたい。
「ふぁあ……!」
シャルル君が目をキラキラさせている。
「そのおめしもの、よくみせてください!」
「いいですよ」
晃が近づき屈む。
「ぬいめも、でざいんもすべてすばらしい! いいなぁ、ぼくもこんなふくきたいです」
「シャルル様はお洋服に興味がおありで?」
「はい! いろんなふくにきょうみがあります。きのうせいをじゅうししたあのじゃーじなるふくもすばらしいと!」
「あ、あはは、そうですか」
Oh、まさかジャージにも興味を持つとは。
「それに、こーともしゅるいがたくさんあっておどろきました!」
「シャルル様はどのコートがお気に召しましたか?」
「だうん? のこーとです!」
「よろしければおつくりしましょうか?」
「いいのですか⁈」
「いいのですか愛し子さま?」
シャルル君のお母さんのエリザさんが聞くので私は笑って。
「ほんのお気持ちだとおもってくだされば」
そう言ってシャルル君をお借りして、ダウンのコートを作った。
シャルル君はファー付きのがお気に召したようなので、ファーもつけ、ダウンコートを作った。
シックな色のダウンコートを。
「わぁ、ありがとうございます! うれしいです!」
「しゃるるしゃま! いいなぁ」
「しゃるるしゃま、うらやましいでしゅ」
「しゃるるさま、すてきです」
シャルル君の婚約者の子達がやって来たので──
「はい、どうです」
「「ありがとうございましゅ! いとしごしゃま‼」」
「ありがとうございます、いとしごさま」
三人のコートも作って上げた。
「さて、少し疲れたし、一眠りするか」
私はそう言うと、欠伸をして寝室に向かい、棺桶に入って目をつぶった──
下級の神様が作った呪いではなく、神様が作って普段は絶対使われないように鍵をかけていたけれども、鍵をくすねられてこうなったのは分かりました。
梢は判子の管理神様がやった方がいいと言っていますが、ぶっちゃけると壊した方が世の中のためかもしれませんねこの判子。
神様が酔っ払って失態犯すのはあるあるエピソード。
梢は我が子たちに服をプレゼント、王族の出迎えをする用のお洋服を。
貴族服に近い服だと思っていただければ幸いです。
そしてコートをシャルルたちにプレゼント。
興味もたれたら梢は嫌とは言えませんからね。
よほどのことでない限り。
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