梢の心労~今回のストレス発散方法は……~
梢が家でのんびりしながら、アルトリウスと話していた。
そこへ肇がやってきて、ティリオから薬の作り方を教えて貰ったと言う。
ただ、その薬が問題で──
子どもたちをだっこし終え、一息ついた私は屋敷でミルクティーを飲んでいた。
ミルクティーは美味しくて、ほっとする味だった。
「コズエ、随分疲れているな?」
「あ、分かる?」
アルトリウスさんが声をかけて来た。
「音彩がシャルル君達ちっちゃい子を『可愛いー!』って抱っこしたのを見て嫌な汗が出たわ、不敬罪にならないかって」
「なるほど、コズエらしい」
そう言ってアルトリウスさんは笑っていた。
「私らしい?」
「ああ、子どもの事を常に考えて気が気でないところがだ」
「褒められているのかな?」
「褒めている」
アルトリウスさんはそう言って頭を撫でてくれた。
「晃と肇はどうしているかしら?」
「晃は個人的な外出、肇はアインに薬の事を聞いているはずだ」
「個人的外出……」
私は晃の個人的外出という単語が気になった。
「今はそっとしておいてやれ、いずれ自分から明かすであろう」
「そっか……」
アルトリウスさんも何かしっている感じだけど、晃の事を考えて喋らないんだろうな。
早く晃が教えてくれるようになるといいなぁ。
「母さん!」
バン!
と、扉を開けて肇が入って来た。
「ついに教えて貰えたんです!」
「何を? その前に扉は静かにあけましょうね」
「あ、ごめんなさい……」
肇は少し落ち着いて扉を閉めた。
「ようやく父さんから自白剤の作り方を教えて貰ったんです!」
「アルトリウスさん、今すぐティリオさんとっ捕まえてきて」
「了解だ」
嬉々として言っている肇とは正反対で無表情で私はアルトリウスさんにお願いした。
十秒もしないうちに連れてきてくれた。
「ティリオさん」
「はい」
「私言いましたよね、毒薬関係は子どもたちには教えないと」
「はい」
「何で自白剤なんてもん教えてるんです?」
思わずティリオさんに圧をかける。
「いえ、コレには深い事情がありまして」
「良いでしょう、その事情とは」
私は椅子に座り正座するアインさんを見下ろす。
肇はなんかおろおろしてて、晃が肩ポンしてるけど。
「肇に相談されたんですよ」
「なんと」
「『もし悪い奴が来てクロウおじさんもお父さん達も母さんも居なかったらどうやって悪い事を自白させればいい?』って」
「……そもそも悪さ考えていたらこの森に入れないでしょう」
「はい、そうなんですが……森の外からこちらに危害を加えようとしてきた場合、とっ捕まえて自白させるにはどうすればいいかと聞かれて……」
「自白剤の作り方を教えた?」
ティリオさんは頷きました。
私は盛大にため息をつき。
「肇」
「な、何ですか母さん」
「本当に自白剤だけね?」
「はい!」
「ならいいの、それ以上毒薬系統は教えないこと! ティリオさん分かった⁈」
「はいわかりました……」
どこかしょんぼりしているティリオさんだが、私はまだ怒っている。
「肇もこれ以上毒薬の作り方は教わらないこと! いい⁈」
「は、はい!」
私は気分転換がしたくて自室へと戻った。
『なんじゃお主達、そろいもそろって』
クロウは梢を除く梢の家族達がそろって神妙な顔をしているのを指摘する。
アルトリウスが扉を開くと、音彩が口を開いた。
「どうしようクロウおじ様、お母様にティリオお父様から毒薬の作り方全部教わったなんて言えない!」
『ティリオ、お前さん教えたのか?』
「そのー……もしもの時、妖精と精霊にそんなばっちぃ仕事させたくないと子どもらに言われまして、悩んだ結果……はい……教えました」
『お前さんのぉ』
「私達が知ったのは教えきった後だから後の祭りでした」
『じゃろうな』
アインの言葉にクロウはため息をつく。
『しゃーない、内緒にするんじゃ、この事を知ってるのは他にいるか?』
「いえ、居ません」
『なら良い。よいかお前さん達、くれぐれも梢にこの事を伝えるなよ、ひっくり返って寝込むなんて可愛いもんじゃないぞ絶対』
「と、いいますと……」
ティリオの言葉に、クロウがこたえる。
『全員説教の上当分引きこもるぞ、どこかに。妖精と精霊に口チャックさせて儂もしらん場所に』
「「「「「「えぇ⁈」」」」」」
6人はそろって声を上げた。
「ど、どこかって何処です⁈」
『儂もしらんて! くれぐれも漏らさんように! 以上!』
「「「「「「は、はい……」」」」」」
全員居なくなってからクロウはため息をついた。
『全く梢の手を汚させないことに関しては全員思考がそろっとるんじゃからなー』
と、呆れの言葉を吐き出した。
「……!」
私は手を止めた。
大量の服ができていた。
「やべ、この服使い所ねーや」
色んなサイズの服を作ってしまったので、ため息をついてアイテムボックスに入れてクロウの元へ向かう。
「クロウー!」
『お、どうしたんじゃ梢? 菓子か?』
「はいはい、ありますよ」
と、アイテムボックスから、アップルパイをとりだし、置く。
『いつもすまんのう』
「別に、それよりも相談に乗ってほしいの」
『なんじゃ?』
「実は……」
私は大量の衣服を見せた。
「村で着るにはちょっとアレでしょう?」
『ふむ、どちらかというと貴族が着るような服じゃの』
「そう?」
『ならば答えは簡単じゃ、今の時間帯なら来賓の館に全員そろってるはずじゃ、それを持って行くぞ』
「う、うん」
私はクロウに言われてもう一度しまい、来賓の館へ一緒に向かった。
「正妃よ、ちょっと見せたい物がある」
「なんでしょうか」
「梢、先ほどのものを」
「うん」
そう言われて私はさっき見せた衣類を見せる。
「これはどれも最上級の代物です、これをどうしろと?」
「買ってほしい、梢が作ったがいいのだが村で着るには少々な」
「なるほど」
そう言ってやりとりをしているのを私は眺めた。
かなりの値段で衣類は全部売れた。
早速着せて貰っている子達を見て私は少しほっこりした。
「次は気をつけるように」
「うん」
そう言って私はクロウと別れ、家へと戻った。
なんか家の中がどんよりしてたけど、私が声をかけると元に戻ったから気のせいと思うことにした──
はい、梢の知らぬ間に、ティリオから子ども達は薬関係の事は全て学びました、毒薬も。
バレたら梢は何処に行く? それは勿論ユグドラシルの木の中です。
梢しか知らない入り口があります、頭頂部に実は。
クロウも知りません。
だからバレないようにしないと行けない梢の家族たち。
そして梢はストレスで物作りに熱中し、村で着るのにはちょっとどうかと思う貴族用のコートを作ってしまい、クロウに相談してマリアに販売し、金銭を得ます。
クロウは同じことを繰り返さないように苦言を呈していますが、同じ事をやったらレイヴンに販売させればいいかと考えさせています。
そこら辺は梢に甘いです。
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