夏が終わり18年目の秋
夏が終わり、王族の者達が帰っていくと秋が訪れた。
収穫の秋だが、梢の畑は豊作に豊作を重ねており、収穫してもしても終わりが見えない状況に梢は匙を投げて一回休憩に入った。
すると──
風が涼しくなるころ、王族の方たちが帰る準備を始めた。
「もっといたいです」
「おかあさま、わたしもです」
「だめよ、カーリャ」
「メルディ、立派な淑女になるのでしょう? ならお休みはまた今度まで」
帰りたくないと駄々をこねるカーリャちゃんとメルディちゃんをお母さん達が宥めている。
「今度これます?」
「ええ、勿論よ」
「じゃあ、かえりましょう。メルディ」
「うん、帰りましょう。カーリャ」
同時期に生まれた事もあり、母親が違えど姉妹のようにこの二人は仲がいい。
仲良し異母姉妹に婚約者くん達は振り回されてたけどね。
と、心の中で苦笑いを浮かべる。
「コズエ様、また来ますね」
「はい、また来て下さい。イザベラ様」
私はイザベラちゃんと握手をした。
そして帰って行くのを見送った。
また次の休みに来て下さい。
そう思いながら──
そして、秋が訪れた。
『秋ですよー!』
『秋ですー!』
精霊と妖精達が飛び交っているいつも通りの景色。
同時に収穫が最盛期を迎える時でもある。
「とっても、とってもおわらねー! 休む!」
あまりの収穫量に、私は匙を投げて家に一度戻って一休みした。
ホットミルクに砂糖を入れて飲む。
「あー美味しい」
そう呟くと、視線を感じた。
「……アルトリウスさん、アインさん、ティリオさん、なんですか?」
隠れていた三人がでてきた。
「いや、ちゃんと休憩しているなと」
「これでしてなかったら強制休憩させましょうかなと」
「そういう話がでていまして……」
「おい」
いくら何でも私だって不服申し立てするぞ?
18年もだってるんだ、えっと来たのが25歳の時だから43⁈
そしたら嫌でも色々とこちら側に合わせるようになって慣れるわ。
というか、改善もするわ。
子ども達ももう12歳だし。
あまり心配かけたくないからね。
ちょっと病むというか不安定になると察知するからうちの子等。
なんなの?
「晃も、ここ数年のコズエは無理をしてなくてほっとすると言っていた」
「ちょっと晃」
「肇も、ここ数年の母さんは面倒くさいことはクロウ様達に放り投げていらっしゃると」
「ちょっと肇」
「音彩も、疲れたら仮眠とったり休憩したりするから安心といっていましたね」
「ちょっと音彩」
いや、マジうちの子何処から見てるの。
ちょっと怖いんだけど……いやそのねぇ……
「コズエは出会った当初は酷かった」
「そんなに?」
アルトリウスさんの言葉に、アインさんとティリオさんが頷く。
「コズエ、君は無自覚に無理をし、畑を耕し、収穫し、ブラッドフルーツ丸かじりで過ごすことも結構あったろう」
「あ、アハハ」
空笑いしかできない。
かつての自分やっちまったな。
と、反省するも遅し。
「クロウ様が三人がかりでも苦労するぞとおっしゃった意味がわかる」
「ええ、その通りですね」
「大変でしたから……ええ」
「ちょ、ちょっと怖いんだけど?」
私はちょっとおっかなびっくりになる。
「取りあえず、今は休んでください」
「休んで大丈夫そうなら続きを。明日収穫するものはできるだけ私達も収穫しますので」
「ごめんねー夜型で」
デイウォカーのはずだが、自分は夜型になってしまった。
吸血鬼はそれが基本なので問題無いが。
人である、アインさんとティリオさんには迷惑をかけてしまっている気がする。
「コズエ、私は迷惑なんて思ってませんよ」
「何故バレたし⁈」
考えてたことなんでバレた⁈
「ええそうです、コズエ様貴方の負担を軽くするためなら私達は頑張ります」
「……ところでさぁ、アルトリウスさんに、アインさんに、ティリオさん。貴方達こそ無茶してない?」
今まで疑問だったこと。
「残念ながら、無茶をしたのはここへ逃亡する時と帝国時代だけで、今は一切無理をしていませんよ」
「本当?」
「ええ、私もアイン様と同様です、無理をしたのはその頃だけです」
「私もだ、無理をしたのは母と逃げて来た時だけだ」
「……」
嘘は言ってない。
全くいってない。
だからこそ──
「……」
ちょっと後ろめたい。
無理をするのが当然の社会にいたから、気がつかなかった自分が悪いんだけど。
「いま、こうして休んでくれている、それだけでいいんだ」
アルトリウスさんが手を握ってくれた。
すると──
「「母様/母さん/お母様‼ 収穫残りの終わりました!」」
と、晃達が入って来た。
「え、あんなに残ってたのやってくれたの? 大丈夫? 無理して無い?」
「それはこちらのセリフです!」
「まぁまぁ、母さん休憩しているようだし、そうかっかとならないようにしようよ晃」
「そうよ、晃は過保護なんだから」
と、話す子どもたち。
何か、大人びているというか……うーん。
「とにかく、母さんはこれからも無理しないこと!」
「そうだね、母様は無理しないほうがいいね」
「お母様、無理だけはしないでね?」
子どもたちからの圧。
うーん、結構辛い。
「わかってるわ、無理はしないわよ」
「ならいいの!」
音彩がにっこり笑う。
私の子どもの時の面影を残しつつ、おそらくティリオさんの面影も残している顔はとても愛らしかった。
「音彩は私と違って美人になるわね」
と呟くと、視線を感じた。
「コズエ、君も美人だぞ」
「可愛らしいし美人ですよ、コズエ」
「コズエ様も美人ですよ」
鼻で笑いたくなるがぐっと我慢。
こんな元陰キャが美人なわけないだろう!
と、思って居ると──
「お母様は美人よ? そうよね」
「ええ、母さんは美人です」
「母様は美人だ」
その後はお察しの通り。
家族全員から褒められっぱなしで頭を抱える私。
余計な事いっちゃった。
けど、後の祭りだった。
でも、美人じゃないと思う!
いや、本当!
美人なのは、美形なのはアルトリウスさん達!
これは譲れない!
けど、言っても通じないので心の中で思うだけだった、とほほ……
梢が無理しなくなっている一面です。
そして梢の畑の異常な収穫具合に、梢自身が匙を投げて休んでいるのも立派になった一面です。
畑がどんだけヤバいかと言うと、牧場シュミレーションゲームで名高いあのゲームの野菜がほぼ全部連作で植えたら冬まで収穫できるという状況です。カブとかダイコンとかは連作ではないですが、種を植えればすぐでかく育つので、そのため保管庫がいつも圧迫されており、レイヴンたちが売りさばいても、困らないという状況です。
あと、梢の容姿は可愛いよりの美人さんですが、まぁ好きな子ほどいじめる奴らが多かったので梢の自己肯定率が低いのはその性です。
社会人時代はボロボロでクマができて美貌もかなり衰えていましたから、今が健康で美しく可愛いんです。
で、そんな梢の良い所と、ティリオの良いところをもらった音彩は可愛いし美人だし、大人になったら美人になること間違い無しです。
梢は、夫達が美人で美形と言ってますが、それも事実です。
が、梢も美人なので、いつかはありがとうと喜んでくれる日がくることを祈りましょう。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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次回も読んでくださるとうれしいです。




