イザベラ達とクロウ~カナンとマリーローザの為の釣書選別作業~
イザベラたちと話していると、ロランがいないことに気付いた梢。
ロランの居る場所にいくと、何故かクロウが釣書選別作業をしていて──
「コズエ様!」
「コズエ様!」
「コズエ様!」
イザベラちゃんと、カナン君と、マリーローザちゃんが私を呼び抱きついてきた。
大きくなったなぁカナン君とマリーローザちゃんは。
えっと、確か今は6歳で、もう直ぐ7歳か。
「あれ、ロラン様は?」
ロラン君の姿が見当たらない。
来たはずなのに、どこかへ行ったのか?
「実はこの子達の婚約者の選定をクロウ様に手伝って貰いに行ってるんです」
「あー……」
クロウへの神託があれば、確実に見抜けるだろうしなぁ。
まぁ、それ以外でも見抜きそう。
「改革で色々と変わりましたが、子どもが婚約者になるという事は王家とつながりができるという事なので、結構重要ですし」
「確かに……」
「それに早い内に婚約者を決めないとルキウスのようになりかねないとマリア義母様から言われてて……」
「あ゛ー……」
ルキウス君悪しき例えとして使われているぞ。
まぁ、しょうがないが。
「大丈夫ですよ、お母様!」
「私達、自分の身はわきまえているつもりです!」
カナン君とマリーローザちゃんが言う。
君ら本当に子どもかね?
六歳児はわきまえるなんて言葉使うような記憶はないぞ?
やはり、やんごとなき、もとい王族の方達は違うのかなぁ?
と一人脳内で悩む。
「取りあえずクロウの所行く?」
「はい、勿論です」
「「はい!」」
元気よく返事をするカナン君とマリーローザちゃん。
こういう所は子どもなんだけどなぁ。
「此奴の親は王家につながりを持って色々やらかそうと考えているのでダメ」
「此奴は既に婚約者がいるのに親が婚約破棄させてくっつけようとしてるからダメ」
「此奴は成長の見込みがないからダメ」
クロウの居る屋敷に向かうと大量の釣書?
だっけか、お見合いの時とかに見せる奴。
それ見てダメだししまくってるよ、クロウ。
「な、なんか大変そうだね」
「む、コズエか。神々のお力も借りて相手の情報を得て色々やっている所だ」
「は、はぁ」
よくできるなそんな事、私には無理だよ。
「お前にはできなさそうだから我がやっているのだ」
「思考読むのやめい」
思わずツッコむ。
「取りあえず、釣書の方が終わったら一休みしたいから甘味を作ってくれないか」
「はいはい、フルーツゼリーでいい?」
「うむ」
私はそう言ってでようとすると、カナン君とマリーローザちゃんがにこにこと笑って私の服を掴む。
「どうしたのですか、カナン様、マリーローザ様」
「「コズエ様、フルーツゼリー作りたいです!」」
「へ?」
予想外の言葉に間抜けな声が出る。
「そうね、私も作りたいですわ」
イザベラちゃんも参加したいと意欲を見せる。
私は仕方ないな、と思って保管庫へと向かった。
シロップ漬けなどの果物をもって来て、フルーツゼリーを作る。
ゼラチンの粉は現在私を経由してじゃないと手に入らないものなのでそこを注意点として伝える。
ただ、極東の国に、クロウから聞いた寒天、そう私の世界にもあった寒天というものがあり、それを使うと少し固い食感になるが、色々と料理の幅が広がる事を伝えた。
イザベラちゃん達が料理している後ろで、料理人の方が必死にメモとってる。
そんなこんなでできた一人サイズのフルーツゼリーに皆歓喜。
私は巨大サイズのフルーツゼリーを自宅の冷蔵庫に冷やした。
後でクロウが来た時出すようにだ。
それと子ども達とアルトリウスさん達用に。
「教えてくださりありがとうございます、コズエ様」
イザベラちゃんは綺麗に微笑まれた。
イザベラちゃんは出会った頃は可愛らしい子どもだった。
でも今はとても美人な女性だ。
色々苦難があり、くじけそうになっていたこともある。
それでも今は立派に王太子妃として、母としてカナン君とマリーローザちゃんと接している。
凄いなぁ。
私は逃げちゃったからなぁ。
辛くて、苦しくて、ほとんどの人に理解されなくて。
でも、だからこその今がある。
今は子ども達と向きあってるし、アルトリウスさんやアインさん、ティリオさん達とも向きあっている。
クロウにも言われたら色々なおしたりするようにしている。
自分に向きあっている、スローライフを通して、村の皆を通して私は成長したんじゃないかと思う。
臆病なのと怖がりなのはどうしようもないが。
そこもどうにかしないとだめかなぁ?
なんて、色々考えていると、イザベラちゃんが声をかけて来た。
「コズエ様、コズエ様は昔から本当に変わらない御方でうれしく思います」
「え、それはその……」
「私を助けてくれて、お父様とお母様のように無償の愛情を注いでくれて、ずっと身を案じてくれていたのを今も覚えています。今もそのコズエ様は変わっていません」
「そ、そうですかね?」
少しこっぱずかしい。
「ええ、だからコズエ様。どうかこれからも末永く私達とお付き合いください」
「勿論です、イザベラ様」
そう言うと、イザベラ様は無邪気な子どもの様に笑って私に抱きついた。
カナン君とマリーローザちゃんも抱きついてきた。
なんだか心がくすぐったい。
うれしいな。
そして家に帰るとクロウが待っていた。
「クロウ、選別作業というか選ぶの終わったの?」
「ああ、面倒だったが終わらせた。イザベラの子達だからな、悪用されるのも悲惨な目に遭うのも好ましくないから優良物件探し当てたぞ」
「逆に言うと優良物件がほとんどなかったの?」
「まぁ、そうなるな」
大丈夫かムーラン王国。
また心配になってきたぞ。
「それよりも甘味だ」
「はいはい」
私はゼリーを置く。
巨大フルーツゼリーを。
「おお、これよこれ!」
クロウは嬉々として食べ始めた、すると晃たちがやって来た。
「あー! クロウおじ様だけずるい!」
「ずるいですよ!」
「私も食べたい!」
「貴方達の分もあるから」
「「「わーい!」」」
子どもたちは無邪気に喜ぶ。
それをみて微笑ましく思いながら、私は三人のフルーツゼリーを取り出しておいた。
「私もクロウおじ様と同じくらいがいいなぁ」
「ご飯が食べられなくなるからダメよ」
「はぁい」
クロウと同じだけ食べさせたら胃拡張になってしまう。
色々と心配をしながら、私は子どもたちの顔を見て安堵の息を吐き出した。
よかった、年相応だ、と──
クロウはよほどのことがない限り最後まで面倒をみます。
釣書選別作業もそのひとつです。
そして、無事に終えたクロウ、甘味の前ではいつもどおり、威厳はありません。
梢の子ども達はクロウと同じ分は流石に食べられません。
クロウと同じ量を食べたら胃拡張になるだけではすみません、下手すると吐きます。
それくらいクロウは食うんですよ、ドラゴンだから。
精霊と妖精の愛し子ですが、一応ダンピールと吸血鬼。
食べられる量は一般の子どもより多い程度です。
そして梢。
梢も地味に成長はしています、何せ18年も経っているんですから。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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