17年目の春の訪れ~11度目の誕生日~
17年目の春がやって来た。
それは子ども達の11回目の誕生日がやって来た事を示すもの。
梢は夫たちと共に料理し、子ども達にご馳走をだしてお祝いをする──
冬の雪が少しずつ溶けていく頃。
妖精達と精霊達が飛び交っていた。
『もうじき春ですよー』
『春ですよー』
つまりだ。
「カーリャ、メルディ。帰りますよ」
「はーい!」
「はい、お母様」
「レオ様帰りましょう」
「アレス様も帰りましょう?」
「はい、分かっていますよ」
「勿論です」
「カナン、マリーローザ。帰りますよ」
「「はい、おかあさま!」」
皆帰って行くのを私は見送る。
騒がしかったのが静かになって少し寂しい。
でも、言わない。
そういうことは。
そして、17度目の春が訪れた。
『春ですよー!』
『春ですー!』
そしてあの日がやって来た。
6度目の春に生まれたのだから、17度目の春は11歳。
来年は12歳。
それにしても若い子の成長は早いなぁ、私の世界でもそうだったけど。
まぁ、精霊と妖精の愛し子&私の子どもというのが成長を加速させてるけど。
「今日は早く帰って来てね」
「はい、分かってます!」
「勿論です!」
「ええ、分かっています!」
クロウの所へ行った我が子を見送り料理の方は私が担当する。
クラフトや前日の調理で、なんとかした。
ご馳走を並べ、苺のケーキを隠しておく。
子ども達が帰ってきた。
「「「ただいま帰りました!」」」
「「「「お誕生日おめでとう!」」」」
戻って来た子ども達を、アルトリウスさん達とそう言って出迎える。
「わぁ、ご馳走だ!」
「お母様、ケーキはあります!」
「苺のケーキを作っているから、テーブルの料理とかを食べ終えたら出してあげる」
「「「はい!」」」
ご馳走の量は普段の倍だったが、子ども達は美味しそうに食べて行く。
そして、苺のケーキを出す。
大きいケーキを子ども達用にカットしてチョコレートの板をいつものように乗せる。
子ども達はうれしそうな表情で食べて居た。
普段は大人びているけど、こういう所は子どもらしいなぁと微笑ましくなる。
「「「ごちそうさまでした!」」」
満面の笑みでそう言う三人が愛おしかった。
「じゃあ、またクロウおじさんの所行ってきます」
「行ってきます!」
「何か言づては?」
「特にないわ、行ってらっしゃい」
「「「はい!」」」
三人は家を飛び出すように出掛けていった。
「まだまだ子どもな所があるな」
アルトリウスさんが言う。
「いいじゃないですか、普段は大人びているんですから」
「こう言う時子どもらしくてほっとします」
アインさんの言葉にティリオさんが言う。
「そうですね、普段は大人っぽくなってるからこう言う時こそ子どもらしくしてほしいですね」
私は笑う。
それから数十分後、クロウがやってきた。
まぁ、予想はつく。
ケーキが目当てなのだろう。
「はい、ケーキ」
「おお、分かっているではないか」
クロウはうれしそうにケーキを食べる。
私は我が家を出て散歩を始めると、訓練をしているらしい子ども達を見た。
みんな真剣な表情で精霊や妖精と対話し、力を行使している。
が、音彩が私に気付いた。
「お母様!」
音彩は訓練を中断し、私に抱きついた。
晃や肇も訓練を中止し、抱きついてきた。
「わわ、どうしたの」
「お母様が無理をしてないか心配でしたの!」
「ええ、私達はいつも心配してます!」
「だって昔から母様は無理していますし!」
頭痛がする。
其処まで心配されとったんか私は。
「大丈夫よ、今は無理して無いでしょう?」
「そうですけど……」
「ご馳走、つくるとき無理したんでは?」
「大丈夫よ、ケーキは私一人だけど、他のはお父さん達が手伝ってくれたわ」
「ならよかったです」
「もしお父さんが手伝わなかったら軽蔑してました」
「そうそう」
やはり多感な思春期なのか君達。
「大丈夫よ、お父さん達は私に無理させるようなことは一切しないわ」
「本当ですか?」
「本当よ」
「……ならよいのですが」
おやおや、思春期特有の複雑さ。
これは困ったものだ。
でも、思春期ということは成長の証、見守ろう。
「お母様、お父様達が無理させたら言ってくださいね」
「それはないかなー?」
寧ろ、私が久々に無理して棺桶にぶち込まれる方が確立高い気がする。
「本当ですか?」
「本当よ、だってお父さん達が私に無理させてきたのってないでしょう? 私が無理して棺桶に引きずってぶち込むのはあったけど」
「……そうですね」
「お母様、無理はしないでくださいね」
「分かっているわ」
晃は納得し、肇は不安そうな顔をする。
いかんいかん、そんな顔をさせたら。
「明日はフルーツゼリーを作ってあげるから皆で食べましょう?」
「「「! はい!」」」
そう言ってまた訓練に戻っていった。
私はそれを見てから畑仕事に戻り、一息ついて家に戻った。
アインさんと、ティリオさんはもう寝ていた。
アルトリウスさんと、晃と肇が話しをしていた。
「ただいま。音彩は?」
「カイルさん所に行ってるよ」
「婚約者だから大事にしたいってさ」
「なるほど」
そう言って私は問いかけた。
「何の話をしていたの?」
「父さんはカイルさんのことをどう思っているかって」
「そうそう」
「悪くは思っていない、良い存在だと思っている」
「ティリオさんには聞かないの?」
「ティリオ父さんに聞いたら『ルキウス殿下に比べると遙かに良い存在だ、だが嫁にだすにはまだ早いと私は思うのですが』だって」
「そうねぇ、私もお嫁に出すのはもう少し後でいいと思うわ」
「私もそう思います」
「私もです」
音彩はいつか、お嫁に行くのだろうか。
なら、その時は笑顔で送り出してあげたい。
そして幸せを願ってあげたい。
あの子の幸せは、私の幸せの一つでもあるんだから──
晃、肇、音彩の三名11歳になりました。
そして思春期的なものにも突入ですが、ちょっと母親思いが強い様子。
もうちょっと父親達の心配もしてあげてと思います。
梢は無理はほとんどしてませんが、たまーに「コレ無理して無いかな」と振り返ってみたりすることもしています。
梢は無理は本当にしなくなりました。
子ども達のためもあるのでしょう、見本となるべき自分が無理をしてはいけない、そう思って居るのでしょう。
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