17年目の冬~王族達の休息~
秋が終わり冬が来た。
17年目の冬が。
のんびりしていると、クロウが事後報告と言ってきたので緊張する梢。
しかしその中身は──
収穫祭や宴を繰り返していると、あっという間に秋は終わった。
『冬ですよー!』
『雪ですよー!』
精霊と妖精達は変わらず元気で飛び回っている。
冬はハウス栽培しているもの以外収穫することはない。
代わりに雪かきで忙しくなる。
「今年もドカ雪⁈」
雪で木などが折れることはないのだが、それでもこの雪には滅入る。
「全く、何もなければいいんだけど……」
「梢」
「どうわ⁈」
クロウが話かけて来た。
「な、何⁈ 問題が発生した⁈」
「事後報告だ」
問題の事後報告⁈
「イザベラ達が冬も来たいというから許可した」
ずっこけそうになった。
「どうしたそんな顔をして」
「問題が発生したかと思ったの!」
「まぁ、問題が発生したと言えばしたな」
「はい⁈」
私はすっとんきょうな声を上げてしまった。
問題が発生したってどゆこと⁈
「まぁ、簡単に言えばな、ムーラン王国に外部から来たものがカナンの命を狙うという行為をしたので安全の為、冬の間はイザベラと、マリーローザ、カナンがやって来ることになった」
「おい、かなりの問題じゃない」
「その解決を依頼されたので、度々ムーラン王国に行くことになる」
「さっさと解決してちょうだいな」
「分かっておる」
全く、ようやくムーラン王国の内部での問題が解決したと思ったら、今度は外部か!
いい加減にしてくれ!
「ストレスで十円ハゲできそう……」
思わずため息を吐く。
このままじゃ、本当十円ハゲできるよ。
向こうの世界でも十円ハゲできた事あるのに勘弁してよ。
十円ハゲできたっていう事実はダメージでかいんだよ?
「何、それはいかんな。早々に解決しよう」
クロウがそう言ってくれた。
十円ハゲがストレスでできることを心配したのだろうか?
「で、ドミナス王国は?」
こっちにも問題あったら本当十円ハゲができるぞ。
「こっちは子ども等が冬も来たいと言い出したのでな」
「それならいいよ」
「婚約者達もまた来るようだぞ」
「へぇー」
「ルキウスは監視でガチガチに固められている」
「マジか」
「マジだ」
ドミナス王国は平常運行か、良かった。
ルキウス君は相変わらずか。
可哀想だが考えが変わらない限り森には出禁のままだよ。
音彩とカイル君にも会わせられないよ。
音彩はともかくカイル君は吸血鬼の弱点満載だろうからだめだね。
命が危険になる可能性が高い。
なのでルキウス君は出禁だ。
悪いね。
「まぁ、愚かな考えを持っている者は森から拒絶される、馬車から自動で追い出されるからな」
「何その便利機能」
初めて知ったぞ。
「そうでなければ、馬車に乗って入ってくるだろう」
「ごもっともで」
言われてみればそうだよな。
「もし馬車に乗っている者達全員がそういう思考ならば森には入られぬ、無理に入れば迷宮をさまようこととなろう」
「ほへー」
「これは前も説明した気がするが」
「これはね」
私は頷く。
「もう直ぐ来るぞ」
森の入り口で馬車の気配がした。
「では我が出迎えてくる、お前は着替えて待っていろ」
「あ、うん」
私は冬用のそういう服を身につける。
タイツを履いて、足が寒くならないようにする。
村の中に来た馬車二つを出迎える。
「ようこそいらっしゃいました」
「愛し子様、相変わらず素晴らしいお召し物を着ていらっしゃる」
「そう言っていただけると光栄です、皆様の前でいつもの格好をするのは出迎えの場合失礼ですから」
「本当に、生真面目ですな」
マリア様は厚手のコートに身を包み、微笑んでいる。
カーリャちゃんとメルディちゃんはそれぞれの婚約者の手を取ってニコニコしている。
別の馬車から降りてきたイザベラちゃんがカナン君とマリーローザちゃんの手を握っている。
「コズエ様!」
「お久しぶりです、イザベラ様」
「コズエさま、おせわになります」
「おせわになります」
カナン君とマリーローザちゃんがそう言って頭を下げた。
「どうかゆっくりしていってくださいね」
「はい!」
「はい」
「私達の件で、いつも心を砕いてくださり、感謝いたしますわ。コズエ様」
イザベラちゃんがそう言って頭を下げる。
「気にしないでください、クロウがやってる事ですしお礼はクロウにでも言ってください」
「わかりましたわ」
私何もしてないから、クロウがやっている事だから。
「カーリャ様、メルディ様、マリーローザ様、カナン様、ようこそ!」
「「「「ネイロ様!」」」」
音彩がやってくると、子ども達は音彩に群がり、遊びたいと言い出し音彩が連れて行った。
「ご息女は本当に我が孫達に好かれているようだ」
「ええ、私の孫達、ネイロ様がお好きみたいね」
「まぁ、ルキウス様のとは違いますが……」
婚約者の子達もカーリャちゃんとメルディちゃんに呼ばれて遊びについて行った。
「ルキウスはアレはダメだ、王家でも王太子として育てるのは現状は無理だと判断している」
まだ子どもなのに其処までか。
「改善の余地が見えたなら王太子扱いできるが、みえそうにないからな」
「何か申し訳ない……」
「愛し子様が謝罪する必要はない、ルキウスは王族でありながらその義務を怠ったのだ、幼くともカーリャとメルディは王族の義務を果たしている。まぁその分この森で子どもらしく遊ばせたいのだがな、マルス達たっての願いだ」
「なるほどそうですか」
マルス様達がそういうなら森でゆっくりしていって貰おう。
そんなことを考えながら、ソリで雪山を滑っている子ども達を見た。
子どもらしく遊べるのは良いことだ。
そんなことを考えた──
ムーラン王国、一難さったのに、また一難やってきやがりました。
カナンとマリーローザがムーラン王国の王位継承者ですからね。
特に長子のカナンは色々と狙われるでしょう。
まぁ、そんな物騒な状態から、穏やかで安全な始祖の森に来ると子ども等は本来の子どもらしさを見せて遊び回ります。
梢はそれが嬉しいのです。
一方ルキウスは改善の余地なしと見られ、王太子にはなれないだろうと言われています。
梢は罪悪感を抱えていますが、本性がアレなのはルキウスが悪いので仕方ないかと。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




