夏の終わり~17年目の秋突入~
夏のトラブルは一件でおわり、秋が近づいて来た。
ドミナス王国とムーラン王国の王族とその婚約者達が帰って少しすると秋になった。
ますます収穫が盛んになるなか梢は──
夏のトラブルはあの一件だけで、特に無かった。
いつも通りの夏を過ごした。
イザベラちゃんとロラン君は色々とクロウとレイヴンと話しているようだった。
その間のカナン君とマリーローザちゃんの面倒はお付きの人と、音彩が面倒を見ている。
お付きの人は恐縮しまくってるけど、音彩は普通に接していた。
双子ちゃんも、音彩のことを慕ってしるようだった。
マリア様もマリア様で、クロウ達とお話をしていた。
まぁ、色々あるんだろうなと思うだけで私は深入りはしない。
イマジナリークロウも深入りするなと言ってるし、現実のクロウもお前はお前の仕事だけやっていろって言ってるし。
なのでいつも通り、畑仕事に家畜の世話、果樹園での果物の採取などを行う。
季節関係なく実る作物達。
それは私の加護と精霊と妖精の力によるもの。
特に私が神々の愛し子だからというのもある。
まぁ、今更な話だが。
それにしても、17年か。
この世界にやって来て。
25歳の時にやって来て17年。
……40過ぎてるがな。
でも年をとらないのは吸血鬼だからか、ティリオさんとアインさんが年をとらないのは契約したからか。
契約は我が儘かもしれないけど、私は一人になることには耐えられない。
例え子ども達が支えてくれたとしても。
だからこれでいいんだと、常々思う。
少しの罪悪感はあるけど。
夏は宴や祭りで盛り上がり、皆が楽しく過ごせた。
宴は私主催だが、祭りは皆が主催。
屋台をこしらえて、村中回って食べ歩くのは楽しかった。
その際、ハイエルフの魔導具を作る方と相談して綿飴を作るものを制作した。
上手いこといき、綿飴は砂糖が高価ではないこの村では子ども達が楽しんで食べられた。
まぁ、少しだけべとつくことになるのはお約束なのでお手拭き場を作っておいて良かった。
マリア様がその道具に興味を示して、クロウと話をしていた。
きっと貴族の子達向けのパーティかお茶会で出してみたいと思ったんだろう。
珍しいものだしね。
そして高価なはずの砂糖でできているからね。
まぁ、予想だけど。
そんなこんなで夏が終わりに近づいた。
「おかあさま、おとうさま、またこれるよね?」
「またきたいです!」
「勿論よ、カナン、マリーローザ。貴方達がいい子にして村の人達に迷惑をかけないようにし続けていればこれるわ」
「ほんとう⁈」
「うん、いいこにする!」
イザベラちゃん先手打って村の人に迷惑かけないよう言い聞かせている。
「カナンとマリーローザは近いうちに婚約者を見繕う予定です。ルキウス王子の件を聞きましたので……」
ロラン君が私に言う。
「それがいいと思いますよ?」
私はそう答える。
「ルキウスおにいさま、ネイロさまにめいわくかけたからこられないのにそれをりかいしないのはだめよね」
「ええ、だめよね」
カーリャちゃんとメルディちゃんが言っている。
「このむらのひとたちはとくべつなの、わたしたちおうぞくでもてだししちゃだめなの、どうしてわからないのかしら」
「しかたないわ、おにいさま、こういうことにはあたまがはたらかないのだもの」
おおう、辛辣。
「カーリャ、メルディ。アレスとレオは乗っているお前達も乗りなさい」
「ちょっとまってマリアおばあさま」
「まって」
そう言って音彩と私の所にくる二人。
「ことしも、ありがとうございました、どうからいねんもうけいれてください」
「おねがいします」
「お母様」
「ええ、勿論よ、歓迎いたします」
二人はぱぁっと笑顔になり、再度頭を下げて馬車に乗り込んだ。
ちなみにレオ君とアレス君は先にお礼を言って馬車に乗り込んでいる。
王族の方々と婚約者達は馬車に乗り、走り去って行った。
すると、夏の終わりを感じさせる風が吹いてきた。
「ああ、もう直ぐ秋ね」
「そうね、お母様」
音彩はにこりと笑った。
『秋ですよー』
『秋ですよー!』
精霊と妖精が秋を告げた。
収穫で大忙しになるが、子ども達や村の人達が手伝ってくれるので私は手をほどよく抜ける。
「梢も、大分無理をしなくなったな」
「かなり気にしてるのよ?」
「いつもだったら秋だし無理しなければ! と言う発想だったのに」
「まぁ、それは否定しないよ」
クロウの言葉に息を吐きつつ言う。
「否定はせんのか?」
「秋の収穫量は半端ないの、だから多少の無理はしなくちゃとは思っていた、でも今は子ども達も増えた村の人達も居る、私一人で頑張る必要があるのは畑に種を蒔く位かなって思ったの」
「それはしかたないな、種を蒔くのはお前でなければならないからな」
「それと巨大作物の収穫」
「そうだな」
「巨大作物だけは村の人複数でやる必要があるし、それでも抜けないのもあるから私がやらなきゃならないの。何であんなでかい作物ができるのやら……」
私に付与された神々の加護でたわわに実るならまぁ納得だ。
だが、それに合わせて巨大な作物になってしまうのだ。
調理するのが大変なので村では私が切り分けている、勿論土がついてたら落として。
農薬がないと大変なはずだが、そこは私の加護と精霊の妖精の力で何とかなってるらしい、便利だなー。
「クロウもやってほしいけど、別の仕事たくさんあるんでしょう?」
「まぁな」
「だからできるヒトがやるしかないじゃない」
私は盛大にため息をついた。
「やれやれ、秋は実りの度合いが益々早いから結構大変よ」
「だが、あまり無理はするなよ」
「無理は昔ほどしてないよ、子ども達がいるし」
「そうか」
クロウはふっと笑った。
「何?」
「あの子ども達にもダメだしされていた梢が今では、余裕を持って生きるようにしているのに歓心しているのだ」
「何かうれしくねー」
私は嫌そうに顔をしかめた。
そりゃそうだ。
私は無理をして治らないからいつも棺桶にぶち込まれてた。
でも、今はその回数も減っている。
疲労感や疲弊感は元々感じづらかったが、今は人並みに感じるようになった。
それも大きい。
きっと、社会の苦しみから逃れたかったから、麻痺していたんだと思う。
この世界に来た当初は。
会社にいかなくてもいい、自分のペースでスローライフをエンジョイできるのに、麻痺したままだったから結果無理してたのかなぁ、と今では思う。
「それにしても17年か」
「長いようで短いね」
「確かに、お前や我の生では短すぎるだろう」
「……そうだね」
契約していない村人達で老人の方は死んでもおかしくない……のだが、何か年数を経つごとに元気になっていってるのは気のせいだろうか?
「ねぇ、最初来たご老人方。よぼよぼだったのに、何か若々しく年々なってるのは気のせい……?」
「まぁ、気のせいではないな」
「……やっぱり」
気のせいではなかったのだ。
が、イマジナリークロウが言う。
詮索するな、と。
「梢、余計な詮索はするなよ」
「うん」
現実のクロウにも言われた。
我ながらイマジナリークロウの再現率高いな。
「明日あたりに、ドミナス王国とブリークヒルト王国、ムーラン王国をレイヴンが回って作物などを王室と交易する予定だ」
「そっか」
「今年も実りがよいな、お前のお陰だ」
「ありがと」
少し考えて私は言う。
「レイヴンさん達が帰ってきたら収穫祭やろ」
「いいな、それは」
「色んなものを沢山作ろう、勿論私一人じゃやらないからね」
「それならいい」
クロウは笑みを浮かべた。
まぁ、一人でやったら確実に家族に怒られ案件だからね。
無理はしないしない。
私は再度そう誓った──
イマジナリークロウと結構会話している梢。クロウは知りません。
ドミナス王国のカーリャとメルディは異母兄にダメだし、ルキウスのダメな所が二人にはよく分かっているのでしょう。
そしてルキウスの件をみたイザベラとロランは、マリーローザ(娘)とカナン(息子)に婚約者を探そうと決意、それ位ルキウスの行動が問題に見えた様子。
さて、今後ルキウスは、もしくはその周囲はどんな行動をするのでしょうか?
また秋になり、梢は年数を数え自分が40超えているのに気付きます、今更ですね。
それ位毎日が楽しくて忙しいのでしょう。
でも、無理はしないようです、収穫祭も周囲の人の手を借りてというのを考えているようです。
進歩しましたね。
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