音彩の推理~大人びている我が子~
ドミナス王国から帰ってきた梢たち。
梢はドミナス王国でのことで頭が痛くなり休むことに。
その後、アルトリウスに起こされ、マリアと話をすることになり──
「ドミナス王国はどうだった?」
「ルキウス王子が相変わらずだった、アレで諦めてくれればいいんだけどねー」
ドミナス王国から帰って来た私はアルトリウスさん達と話をしていた。
「音彩は王族には嫁に出しませんよ」
「だろうねぇ」
「しかし、音彩の言葉で凹むなら以前から大人しくなってるのでは?」
「そこが心配」
ティリオさんのいつもの発言と、アインさんの不安にさせる発言に私はため息をついた。
「ちょっと頭使って疲れたわ、休んでるから何かあったら呼んでね」
「分かった」
「分かりました」
「ゆっくり休んでください」
ゆっくり休めるかどうかは分からないんだよなぁ、と思いながら棺桶に入った。
「コズエ、正妃マリアが君に話しだそうだ」
「んあ?」
アルトリウスさんに起こされて、私は下の階に降りる。
マリア様が椅子に座っていた。
「どうなさったのです?」
「ルキウスが誠に申し訳ないことをした、愛し子様のご息女のことでは悪いこともいいことも検討がつかなくなる癖があるのではないかと予想していたが、此度の件は申し訳なかった」
そう言って頭を下げられた。
「いえ、マリア様のせいではありません。マルス王太子やエリザ王太子妃のせいとも思ってません、皆様音彩のことについては諦めろと何度も言い聞かせているのを知っていますから」
「あのような愚行をとるような連中がいるのも問題だ、私は戻り次第、アルフォンスと改革を行う、ルキウス派のもの達には厳しく接する」
「あの……シャルル様は?」
「あの子はまだ幼い。だが、いずれ婚約者をこちらで選定する、同じ失敗は起こさないようにする」
「はぁ」
シャルル君、まだ幼すぎるのに大変だなぁと思った。
ルキウス君がもう少しまともならこんなことは起きなかったのに。
音彩にあそこまで執着しなければ……
「何で音彩にあそこまで執着するんでしょう?」
「ルキウスが言うには『神の使いに見えた』『それほど美しく見えた』との事だ」
「神の使い、ははは……」
実際の神の使いはそんなんじゃないんだけどねー。
と、思っても言わず。
「まぁ、実際の神の使い──クロウを見てきた私からすると、笑っちゃう案件なんだけど」
とからからと笑う。
確かにクロウは有能だ。
だがそれを相殺するほどの食いしん坊だ。
「笑っちゃう案件、とは?」
「あーまぁ食いしん坊なんですよ、クロウは。作るこっちが困る位の」
「我が食うだけで働いてないような言い方は止めろ」
「言ってないじゃん、ただ働いたらその分かその分以上に食うじゃない」
クロウが家に丁度いいタイミング?
いやそれは分からないけど、やって来てそう言うから言い返してやった。
クロウは事実なだけに口を閉ざした。
「お母様ただいま! 正妃マリア様ごきげんよう。クロウおじ様、どうしたの?」
「ちょっとルキウス様のことで色々とね」
「え、アレでダメだったの?」
「いや、分からないのよ。だからマリア様と相談していたの」
「ネイロ様、ルキウスが申し訳ない」
「今は実害がそんなに出ていないけど、これから実害が出たら私は困ります」
「実害とは?」
「この森に誰かを派遣して私やカイルさんに危害を加えようとするとか、直接来て、昔みたいに私にいやという程同じ事をするとか……」
音彩は心底嫌そうな顔をしている、それほど嫌いかルキウス君が。
まぁ、これまでの行動を見るとそうなるか。
「音彩、前者はともかく、後者はないから安心しなさい。ルキウス様はこの森に出禁になっているから」
「そう、じゃあ心配するのは前者の方ですね」
「前者を起こさないよう、国でルキウスへの監視を強めなければならないが……上手くいくかが問題だ、此度もルキウスはどうにかして依頼をしたのだから」
「ねぇ、マリア様。ルキウス君の側に側近らしき貴族の子息はいらっしゃる?」
「ん? まぁ、いるが……まさか」
「その貴族のご子息達に問いただしてください」
「分かった、エンシェントドラゴン様。アルフォンスへ手紙を送るので届けていただけますか」
「構わん」
「感謝します」
音彩頭働くなー。
私はもういないものだと思い込んでたからねー。
「音彩頭いいねー」
「お母様は人が良すぎるのです」
「そうかな?」
「そうです」
「私もそう思います」
音彩とマリア様が言う。
個人的には普通だと思うんだけどなぁ。
マリア様が手紙を送って調査結果が帰って来た。
結果は黒。
真っ黒。
ルキウス君が監視がついてこない場所……トイレとかで子息達に命令していたのだとか。
次期国王になった暁には重鎮に置くと約束して。
ルキウス君も、貴族の子息もダメだわこれ。
と言う訳で貴族の子息達も外され、監視は更にギッチギチにされたそうな。
哀れ、とは思うが自業自得だししょうがないよねこれは。
マリア様は眉間を押さえていた。
マルス様とエリザ様は頭を抱えていたそうだ。
こうなると、シャルル君に国の未来を託すしかなくなりそうだ。
まだとても幼いが頑張れシャルル君!
「音彩はルキウス君のこう言う側面を理解してたから嫌がっていたのかしら」
私はふと呟く。
「それもありそうですな」
マリア様が頷く。
音彩は昔から村で暮らしている方々にはなついていた。
誰かを拒否したことは一度もなかった。
が、初めて拒否する相手が現れた。
ルキウス君だ。
しつこいのが嫌いと言っていたが、もしかして子どもながらルキウス君のもう一つの側面を理解していたのではないか?
手段を問わないという、子どもらしからぬ行動をとることを何となく察していたのではないか?
「音彩、ルキウス君をどう思ってたの」
「しつこい、うっとうしい、それから……」
「それから?」
「……人の話を聞かない、自分が正しいと勘違いしてる」
ある意味今のルキウス君を象徴している。
人の話を聞かないから、あのような指示をだした。
自分が正しいと思い込んでいるから、あのような内容で命令した。
音彩は分かっていたのだろう。
「そっか、教えてくれて有り難うね」
「もう二度とルキウス王子には会いたくないです」
多分会うことはないだろう。
マリア様から、森にルキウスは出禁されていることと、ルキウスは王家の影と普通の監視両方で見張られている。
今後あやしい行動をしたら即座報告が行く。
森にシャルル君がこれるようになった時はルキウス君は教会で監禁……という名の教育をビシバシ受けることとなる。
その間も監視はつく。
願わくば、シャルル君がルキウス君のようにならないことだ。
まぁ、ならないだろうけど多分。
神様にお祈りしてるから。
「それにしても」
「?」
「こんなトラブル起きるとか不穏すぎる」
「お母様は心配症ね」
「仕方ないでしょう」
「でも、それがお母様のいいところよ」
音彩はにこりと笑った。
まだ十歳だと言うのに大人びている。
というかしっかりしている。
もう少し子どもらしくあってもいいんだけどなぁ。
と、思う私だった。
梢は色々心配症です。
ルキウスの件でまだ不安を持っているようです。
ルキウスを国王にして好き勝手したい輩もいるでしょう。
梢は実はそれを心配してます。
音彩は音彩なりに、いろいろと考えてます。
梢の心配を無くすために。
正妃マリアと、王太子マルスと王太子妃エリザは頭が痛いでしょう。
何せ愚息のルキウスがやらかしてるんですから。
同時に大事な跡取り候補のルキウスを候補から外すのはかなり覚悟がいるはずです。
国の為に、と若干諦めても居ます。
シャルルに負担がかかるのがマルスとエリザの心配毎でもあります。
何せ愚兄がやっちゃったんだからシャルルの場合。
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