ルキウス関連の事件報告~ドミナス王国の内情~
梢はレオとルキウスの問題行動のあれこれを話す。
そうしていると、クロウがやって来てルキウスがやった行動のオチを補足し──
「すみません、品定めの材料にするようなことをしてしまって」
「いいのよ、まぁルキウス君がそれだけ問題児ということに頭が痛くなったけど……」
レオ君と話していると、かつてのルキウス君の行動がよみがえる。
問題行動が。
音彩に対してしつこすぎる程の行動が。
そのせいであの大人しい音彩がキレてしまったこととか。
結果ルキウス君は始祖の森には入れなくなったとか、まぁ色々ありすぎた。
未だに音彩はルキウス君の事嫌ってるし、まぁカイル君に一途なのもあるけど。
「ルキウス様とシャルル様の後継問題はそんなに深刻なの?」
「はい、ルキウス様は愛し子様の御息女と女性が関わらなければ問題ないのです、ですが結婚などになると──」
「私の音彩の話で女性達への対応が最悪になると」
「はい……」
「あーもーどうしてこうなったのかしら?」
「ご息女様はきっぱりと拒否なさっていたのですよね」
「うん、してたわ。何なら婚約する時に、音彩が文面に『だからルキウス王子貴方の妃にはなりませんし、なれません。関わらないでください』とまで残していたわ……」
「……これはもうルキウス様が異常ですね」
「そうですよね……」
私とレオ君ははぁとため息をつく。
あそこまで拒否しているのに、何故。
俗に言う「いやよいやよも好きのうち」って奴と思ってたりするの?
残念、あの子は完全に拒否してたわ。
音彩にあそこまで拒否された子はルキウス君、貴方だけよ。
「ネイロ様と話をして魅力的で賢い女性だと思いました……が、私にはメルディ様がいますので、姉の様な存在にしか見えません」
「そうだとルキウス様もよかったんだけどね──」
私は盛大にため息をします。
「ところで、ここに来るまでトラブルなかったかなぁ?」
「ありました」
「どんな?」
「ルキウス様とシャルル様とマルス王太子殿下とエリザ王太子妃殿下だけ残ると言われた際、ルキウス様が暴れ出したと」
「あちゃー……」
「癇癪を起こしたと思われても仕方ないと言われる程だったそうです」
「ルキウス様、何か言ってた?」
「『何故カーリャとメルディは良くて私はダメなのだ! 何故私は始祖の森から拒絶されるのだ!』とわめいてたとか」
「ん? 始祖の森から拒絶?」
何のことだと首をかしげるとクロウが通りかかって口を開いた。
「ある日、ルキウスが脱走して始祖の森に来たが拒絶するように我が森に言った。結果ルキウスは拒絶された所を追っ手に捕まり強制送還された」
「いつ頃」
「あー……カイルとの婚約を報告したあたりかな」
「大分前じゃん」
私は頭が痛くなった。
「なんで教えなかったの」
「婚約の件で忙しそうだったから」
「デスヨネー」
私は盛大にため息をつく。
「……まさか、ルキウス様脱走事件の真実をここで知るとは……」
「脱走事件?」
私は嫌な予感がするが尋ねた。
「はい、ルキウス様が宝石などで見張りを買って、教会から脱出して国外へと逃亡成された事件です」
「わぁ」
「その事件以来ルキウス様の護衛と監視は王族の血筋を引く騎士団からなる者に変えられたそうです」
「クロウ……」
「いやぁ五月蠅く騒いでいたぞ『ネイロさん! 私はネイロさんに会いに来たのです! 話をしましょうネイロさん! 婚約なんて嘘だと言ってください』とかな」
「これ完全に音彩に会いに来たんじゃん」
「音彩も厄介な輩に好かれたな」
「あの、も、もしかして貴方は?」
「我か?」
レオ君が顔色を青ざめさせながら問いかける。
「エンシェントドラゴン様?」
「その通り、今は人の姿を模倣しているが、我がエンシェントドラゴンよ」
「ぶ、無礼な態度お許しください!」
レオ君が頭を下げた。
「よいよい、気にはせん」
「で、ですが……」
「今の我はこの森の住民であり、守人よ。お主は客人、ならばもてなすだけよ」
「こ、光栄の極みです!」
そういや、エンシェントドラゴンって神々の使徒なんだよな。
すっかり忘れてたけど、神々の言葉を直接ではなく間接的に伝えたりすることもあるしね、確か。
「そういえば、クロウって神々の使徒だもんね」
「その気になれば世界を滅ぼせるぞ」
「おい、やめろ」
マジで止めろ、冗談でも止めろ。
本気で止めろ、世界滅ぼすなんて言うな。
「お前が世界に絶望しないかぎりは大丈夫だ」
「止めてください、私に世界の命運を託さないで」
私に命運を託すな、重い!
「と、まぁお前をからかうのはさておき」
「おい」
たちが悪いぞお前!
「ルキウスは自らの欲故に我はこの森には入れぬようにした、何せ梢の娘、音彩のことだ。自分で解決すると言って余計事態を悪化させるのは目に見えている」
「事態を悪化させるのってどういうこと?」
「分からぬか、ルキウスは音彩に会うだけで正気でいられぬ」
「え」
何ですかソレ。
うちの娘はどこぞの這い寄る混沌とかそういう類いの生き物と同類扱いですか?
いわゆるSAN値ピンチ!
って奴なの?
「何を想像しているかしらんが、お前の思うようなものではない、恋の熱よ。恋とは古来から人々を狂わせる熱病よ」
「へ、へぇ」
「ルキウスはそれにかかっている、冷めることのない恋の病にな」
「普通なら冷めません」
「だからルキウスは異常なのだ、冷めることがないから」
「……」
「だから音彩の会話はルキウスにはするなよ、お前達も敵対者と思われるからな」
「は、はい!」
レオ君は何度も頷いた。
「愛し子様のご息女様は、本当にルキウス様に愛されているんですね……気持ち悪いくらい」
レオ君本音が出てるぞ。
だが、まぁ仕方ない。
だって事実だ。
音彩はガチで拒否しているんだもの。
どうしようもない。
アレをどうにかしないと生涯独身どころか、次期王太子の座も危ういぞ本当。
いや、もう危うくなってるか。
シャルル君も可哀想に。
あんな兄もっちゃったから幼いうちに婚約とか色々しておかないとって思われているんだよ。
きっとマルス様はもっと年をとってから婚約してたからルキウス君もそうするはずだったんだろうなぁ。
ところがどっこい、蓋を明けてみれば私の子どもである音彩に一目惚れ。
他には目が行きませんって感じに。
修正しようにもできない。
結果、マルス様もシャルル君の件は苦渋の決断だったんだろうなぁ。
ルキウス君に関しても。
じゃないと次期国王なんてやってられないしねぇ。
色々とレオ君から事情を聞いて、私は畑仕事に戻った。
音彩達が色々ともう収穫してくれたので、種まきし直しとかそれ位だけど。
いやぁ、子ども達には申し訳ないよ。
「お母様」
「ん? どうしたの音彩?」
「さっきの話聞いていたのだけれど……」
げ。
やべ!
「ルキウスの野郎、そんなに人に迷惑かけてるの?」
「こら、音彩。そんな言葉遣いはいけません」
「でも……」
いくら何でも野郎は不味いぞ音彩。
「私、行ってぶっ飛ばすのはダメ?」
「ダメダメダメダメ! ダメに決まってるじゃない!」
「音彩、お前話を聞いていたのだろう? ダメに決まっている」
クロウも姿を現し、音彩の頭をグリグリする。
「お前があちらに行って何かすればドミナス王国との縁が切れる恐れがあるんだぞ?」
「え、それは嫌。カーリャ様やメルディ様やマリア様やクレア様と会えなくなるのは嫌!」
「だろう、だから大人しくしておれ、何かあったら我が出るからな」
「はぁい……」
「音彩、貴方が私達思いで、友人思いで、婚約者思いの優しい子だと知ってるわ。だからこそこう言う時は大人達である私やクロウに任せて頂戴。貴方は私の子どもなのだから」
「うん……」
しょんぼりする音彩。
しかたないのだ、現状維持の為には。
取りあえず、早くシャルル君が大きくなることを祈る──
ルキウスに振り回されるドミナス王国と梢の村という感じです。
特にドミナス王国。
ルキウスもいい加減音彩を諦めればいいのですが、多分生涯諦めることができないでしょう。
ただ、問題行動だけは落ち着いて欲しいのが両者の願いです。
梢は、シャルルが早く大きくなって王太子として立派に育ってくれれば言うこと無しという風に感じています。
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