16年目の春~梢の子ども達の十歳の誕生日~
冬の終わりが近づき、ドミナス王国の王族たちは帰って行った。
そして春がやってきた。
春がやってきた、つまり梢にとって、子どもたちの誕生日がやってきたというのと同じだった。
誕生日の日、梢は盛大にお祝いをする──
ドミナス王国の王族の方々の相手をしていたら冬はあっという間に過ぎ去っていった。
我が子達はカーリャちゃんとメルディちゃんと遊んで楽しそうにしていた、特に音彩が。
音彩は二人と遊びつつも、カイル君との交流やデートとかきっちりやっていた。
どれだけ要領がいい子なんだ、私に似てねぇな。
そして晃と肇は相変わらず不明のまま。
隠すのが上手いのか、それとも私は鈍すぎるのか、はたまたいないのか全く分からないのだ。
「春ももうじき訪れますし、帰りますよ」
「「えー⁈」」
クレア様の言葉に不満げなカーリャちゃんとメルディちゃん。
「あんまり我が儘ばかりだとルキウスのように教会で謹慎処分になりますよ」
「「わかりました、かえります」」
エリザ様の言葉に手のひら返し。
ルキウス君みたくはなりたくないのだろう、特に人に迷惑かけるような人には。
「夏も来られるのだから、我慢しましょうね」
「そう、我慢我慢!」
「「はい! お母様‼」」
元気よく帰る準備を始めていく。
「今年の冬は大変お世話になりました」
「いいえ、こちらこそ」
「すまないな、我が儘を言って」
クレア様とマリア様が謝罪しますが気にしません。
楽しかったですから、私も子ども達も。
「もうあの小僧には付き合いきれん!」
あーあ、あのクロウがルキウス君の件さじを投げたよ。
「王太子よ、次期王太子はシャルルとし、婚約者が見つかってからシャルルは森に来るようにさせよ! 良いな!」
「畏まりました、エンシェントドラゴン様」
あー、これはもうシャルル君が次期王太子確定か。
あのクロウがさじを投げるんだもんしゃーないか。
「ルキウスは廃嫡し、臣籍降下する」
マルス様が重く暗い表情で言う。
「マルス、まだ早いのでは?」
エリザ様が言うと、マルス様は首を振った。
「そうだが……エンシェントドラゴン様が手をつけられぬとなると何をしでかすか分からぬ」
「……そうね」
「子どもだからという理由で大目にみていたが、ルキウスの愛し子様のご息女への執着は異常だ、森にも入れぬようにしよう」
「ええ、分かったわ……」
エリザさん複雑な表情。
そりゃそうだよね、お腹痛めて産んだ子だもんね、ルキウス君も。
シャルル君同様。
それがまだ10歳なのに廃嫡とか決まっちゃうんだもん。
まぁ、音彩に異常な執着したのが悪かったと思う。
本当。
その後、帰って行くのを見送り、白亜に護衛でついて行って貰った。
無事白亜が帰宅、そしてクロウも行ってきたらしく、帰って来た。
ルキウス君の処遇だが、他の貴族の子と同様に学校には復帰させる。
だが、大人になったら廃嫡、臣籍降下を言い渡すこととなる。
廃嫡、臣籍降下の件はまだ言わないらしいが、学校復学と、始祖の森には立ち入り禁止とし、連れて行くことはないと言われるとルキウス君は大いに荒れたそうだ。
何故、自分だけと。
クロウが、音彩の婚約者に危害を加える恐れがあるものを森には入れられぬ、と言うとぐうの音もでない感じでまぁ、ルキウス君は監視がつけられることになった。
四六時中。
これからの人生別の意味で大変だぞ、ルキウス君。
と、思ったが言わなかった。
王族の皆様が帰ってから少しして春が訪れた。
『春ですよー』
『春ですー』
精霊と妖精が飛び回る。
さて、畑と畜産とか色々やることはあるがリザードマンさんが冬眠から起きたので料理を沢山食べてもらってから働いて貰うことに。
そんなこんなで働いていると、そう、あの時期。
我が子達の誕生日が訪れる。
私はアルトリウスさん達と協力して料理を作った。
まぁ、ケーキだけは完全に私の担当でクラフト能力で作ったけどね。
そしてクロウの授業とかから帰って来た三人を出迎える。
「お母様! わぁ、ごちそう……! もしかして」
「今日は貴方達のお誕生日よ、だからご馳走を用意したの」
「ありがとうお母様、クロウおじさんの護身術のやりとりでお腹空いてたんだ」
護身術って何教えてるんだろう?
「それと力の使い方、あれ本当疲れるよ!」
「分かる分かる!」
「大変だったわね、取りあえず手を洗ってうがいをしてきなさい」
「「「はーい‼」」」
子ども達はばたばたと洗面所へと向かう。
そして子ども達は着替えもしてやって来た。
所謂ハレの日とかに着るのに近い服。
「では、いただきましょうか?」
「「「いただきます!」」」
「「「いただきます」」」
「いただきます」
みんなそろって頂きますをしてから、料理に齧りつく。
鶏の香草焼きも美味しい。
ティリオさんが切り分けてくれたが、あっという間になくなった。
他の料理も、どんどん消えていく。
年々料理の数を増やしているのに、早いな。
と内心焦る。
「お母様、ケーキは?」
「ケーキはまだですか?」
「早く食べたいです!」
こう言う時は子どもらしい子ども達。
十歳の誕生日。
大人になるのは基本十六位。
後六年。
本当は二十歳まで見てあげたいけど、ここの世界の常識は守らないと。
じゃないと過保護過ぎると思われてしまう。
いや、実際過保護だけれども。
「はい、ケーキね」
魔道冷蔵庫からケーキを取り出していく。
そしてカットして皆によそう。
「さぁ、食べていいわよ」
「「「わぁい!」」」
美味しそうに食べる子ども達。
ゆっくりとケーキを堪能している。
「「「ごちそうさまでした!」」」
時間をかけてケーキを堪能したあと、三人は手を合わせた。
「美味しかった?」
「お母様のケーキとても美味しかったです」
「勿論お父様と一緒に作った料理も!」
「全部美味しかったです!」
あら、この子達には言ってないはずなんだけど、気付いていた?
内心驚きつつも、私は微笑んだ。
「お母様、私カイル様の元に行ってきます」
「気をつけるのよ」
「はい」
歯磨きをした音彩は家を出て行った。
「私達もクロウおじさんに聞きたいことがあるので出掛けます」
「わかったわ、クロウが無茶振りしたらすぐに私に言ってね」
「大丈夫ですよ、お母様」
「じゃあ、行こう肇」
「ああ、晃」
そう言って晃と肇も出て行きました。
「少しずつ親離れしているようで、寂しいわね」
「そうだな、だからこそ、今この時間を大事にしよう」
「はい」
「そうですね」
「ええ」
私とアルトリウスさん達は微笑みあった。
いつか巣立つ時、どうか幸せでありますように、そう祈りながら──
ドミナス王国は今後夏冬、来そうな予感がしますね。
カーリャとメルディは兄という、模範にしては行けない存在がいるので、兄の事をだされると大人しく言うことを聞きます。
二人は音彩を姉のようにしたっているので、兄のせいで来れなかったときは内心大荒れでしたから。
ルキウスも荒れましたが、自業自得です、もしかしたら一生一人身になるかもしれませんね。
そして春、梢の子ども達の誕生日。
子ども達が子どもらしい一面を見せる瞬間でもあります。
梢はちょっと不安になりつつも、温かく子どもたちのことを見守るでしょう。
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