冬の宴と、王族の悩み事
天気が晴れているため、梢は宴をすることを決める。
寒い冬だからこそ、温かい食べ物を皆で分かち合いたいという願いから。
作業を分担し、そして料理を作りあげる。
料理ができあがると、宴が始まった──
「……明日は宴会でもするか、今日は雪、降ってないし。アインさんの予報でも雪は降らないらしいい」
天気の予報を聞いておいた私は、宴を明日しようと思い口にした。
「宴をするの⁈」
「宴‼」
「温かいご飯皆で食べる‼」
「そうよ」
キャッキャとはしゃぐ子ども達の頭を撫でて笑いかけると子ども達は嬉しそうにしてくれる。
「鍋の準備とか村の皆とするから、よかったら手伝ってくれる?」
「お母様のお手伝い!」
「する!」
「します!」
なんと素直でいい子達だ。
だからやっぱり反抗期が怖い。
それはそれとして、村のヒト達や、アルトリウスさん達、子ども達の手を借りて明日の宴の準備をしました。
無理はダメ、分かっています。
だから分業で色々と作業をこなしました。
そして次の日の夕方。
ジャガイモのポタージュと豚汁とブラッドフルーツのスープ、おにぎりとパンを村のヒト達と作りました。
「はい、どうぞ」
私とシルヴィーナ達が料理をよそいました。
「このおにぎりってとてもおいしいわ!」
「なかになにかはいってるわ! おさかな?」
「ええ、キングトラウトって言って川で頻繁に釣れるんですよ」
「そんなのいたんだ……」
「良く善狐の方々が釣ったり、捕ったりして干したりしてますよ」
「なるほど」
そう言いながら具無しのおにぎりを食べる、所謂塩むすびだ。
キングトラウトも結構美味い。
交代交代しながら私は豚汁とおにぎりを食べた。
「うん、今年の米の出来も上々ね」
「梢様が作ったお米ですもの、当然です」
一二三ちゃんがニコニコと笑いながら言う。
「さて、次はスープとパンだな」
そう言ってスープとパンをよそってもらい、食べる。
「うん、スープとパンも美味しい」
「いものすーぷがここまでおいしいなんてすごいわ!」
「ほんとうすごい」
やはりジャガイモもとい、芋類は庶民の食べ物なんだろうな、基本。
「お母様お母様、あれやってください!」
晃がジャガイモとバターを持ってきた。
「ああ、あれ、ね」
私はにこりと笑い蒸し器をとりだし、ジャガバターを作り始めた。
ジャガバターを作って渡すと、晃ははふはふといいながら美味しそうに食べ始めた。
音彩達も所望したので作ってあげた。
「それはなんですの?」
音彩のカーリャちゃんが声をかける。
「ジャガバターですよ」
「おいしいんですの?」
「とても!」
それを聞いたメルディちゃんとカーリャちゃんごくりとつばを飲み込んで私の所にきた。
「あのジャガバターを……」
「いいですか……?」
「ええ、勿論です」
そう言って私はジャガバターを作り始める。
ほかほかに蒸されたジャガイモにバターをのせて紙で包んで渡してあげる。
そうすると、二人は恐る恐る食べていたけど、すぐに目を見開いてはふはふとしながらジャガバターを食べて居た。
「やっぱり、王宮の冷めた料理より、温かい料理の方が魅力的だものね」
クレア様が温かい物を食べて居る孫二人を見て目を細めている。
とてもじゃないが孫が二人もいるようには見えない。
「あ、やっぱり毒味とかしてるうちに冷めちゃうんですか?」
「愛し子様の食材をつくった料理には必要無いってアルフォンスに言うのだけども、マリアも私も、その習慣が無くなり、食料も愛し子様から買い付けた物でなくなったら大変なことになるって」
「それじゃあ仕方ないですね」
「ええ」
私は苦笑し、クレア様も苦笑する。
「だから此処で温かい料理を食べて行って欲しいの、それがどれだけ恵まれているかをちゃんと知ってほしいの」
「なるほど」
そうこうクレア様と話していると、やつれたクロウが戻って来た。
「いま、戻ったぞ」
「おおう⁈ お、お帰りなさい! クロウどうしたの⁈」
「あの小童の脳みそをいじくってやりたい」
「怖い事言うのやめーや!」
思わずツッコんでしまう。
今日も今日とて、ルキウス君はかたくななままだったそうな。
おつきの神官達も頭を悩ませる程。
「このままだと、確実にシャルルを王太子に選んだほうが良さそうだぞ」
「どうして普段は頭が良いのに、ネイロ様のことになるとこうなのかしら……」
クロウの言葉に、エリザ様がシャルル君を抱っこしたままため息をついた。
「その節はうちの娘が申し訳ない……」
何となくだが謝ってしまう。
「音彩は悪くないだろう」
「いや、でも何か謝らなきゃいけない気がして」
「そうですよ、愛し子様、ネイロ様は悪くないですよ」
「ありがとうございます」
もし音彩のせいにされたら、ドミナス王国とのやりとりも考えないといけないと思っていたから、杞憂ですんでよかった。
「おにいさまが、いけないんだわ!」
「そう、おにいさまがいけないの!」
ジャガバターを食べ終わったカーリャちゃんとメルディちゃんは抗議した。
「おとめごころがわかってないのだわ!」
「そうよ、おとめのせんさいなきもちをわかってないおにいさまがわるいのだわ!」
「お、乙女」
音彩は乙女心というか、少女心というものがあるのだろうか?
いや、あるからカイル君と婚約したんだしな。
カイル君は、音彩の乙女心を大切にしたから音彩はそれに応じた。
一方ルキウス君はそうじゃなかったから音彩はルキウス君を拒否した。
多分そういうことなんだろう。
音彩はカイル君を一緒にいる。
仲良くおしゃべりしている様子だ。
ティリオさんも見守っている。
晃も肇も見守っている。
アルトリウスさんにアインさんも見守っている。
皆に見守られ、二人は仲良く会話している。
「「はぁ……」」
それを見てエリザ様とクレア様がため息をついた。
「どうしてルキウスはあのような態度を他のご令嬢にも、好いた相手にもできなかったの」
「ご令嬢やネイロ様にあのような態度を取れないのあの子は」
「本当、誰に似たのでしょうか……アルフォンス陛下でもマルス様でもない……」
「つけた教育係がいけなかったのかしら」
「ですが、マルス様の教育係と同じと」
「そうよね……どうしてかしら」
と、頭を悩ませていた。
「お母様」
「何、音彩」
話を中断したらしく、私の元にやってきた。
「クロウおじい様、ルキウス王子のことで大変なのでしょう?」
「え、ええ……」
「もう、そういう所が嫌いなのよ! 他のヒトに迷惑ばかりかけて、自分の我が儘を押し通そうとするのが! 王子様ってそういうものなの⁇」
「いいえ、違うと思うわ。マルス様も、ロラン様も違ったでしょう?」
「ええ、違ったわ」
「多分、アレはルキウス君の個性になってしまったんだと思うわ」
「直すのが大変ね」
「ええ、そうね……」
「まぁ、マルス様やロラン様みたくなったところで、私はカイル兄様以外の方とは結婚する気ないのだけど!」
「そうなのね」
完全に脈なし。
ルキウス君、はよ気付け。
じゃないと君の人生は色々と大きく変わりかねないぞ⁈
皆で温かいものを食べて居るなか、王家の事情を聞く梢。
確かに、今は良くても、もし梢の作物が供給されなくなったらという問題もあるので、王家では相変わらず毒味を通して少し冷めた料理を食べがちらしい。
そしてクロウ、ルキウスの頭の硬さというかアレさ加減に嫌気がさしている様子。
梢はどうにか考え変えないと大変なことになるぞと思ってますが、既になっていますし、ルキウスは変わる気配はないので、まだ赤ん坊のシャルルが王太子になること確定状態にあります。
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