秋が終わり、15年目の冬来たりて~予想外の来訪者達~
ドミナス王国の件から三日後、梢はクロウからの報告を聞く。
ルキウスに同情しつつも、早く改善して欲しいと思いながら梢は秋の村でのスローライフを満喫する。
そして冬になり──
ドミナス王国に行ってきてから三日後。
クロウから報告があった。
教皇一派は全員処分され、権力を剥奪。
王族の血を引く枢機卿の派閥の長が新しい教皇になり、二度とこのような事を起こさないとエンシェントドラゴンであるクロウに誓い、そして新しい教育係の神官がルキウスにつき、かなり厳しく教育されることとなるらしい。
可哀想だと思うが、自分の地位を理解した上であのような輩と協力しようとしていたのだ、これで少しは反省してほしい。
そうこうしながら秋を過ごしていた。
子ども達に畑作や畜産を手伝って貰いつつ。
織姫の布製品をレイヴンさんに王宮などに販売して貰いつつ、村の作物を販売、献上したりして秋の日を過ごしていた。
勿論、収穫祭はやった。
私一人ではなく、子ども達やシルヴィーナと盛大に。
色んな食べ物を作り、甘味も提供した。
スイートポテトね、サツマイモが豊作しまくって今も余りまくっているから。
一番食べたのは言うまでもなくクロウ。
普段はのんびりしたり、子どもの面倒みたりしているけど、それ以外の時はいつも以上に頼ってるからこれくらいはね。
無理をする頻度は大分減った気がする。
一応気がするだけにする。
断定していえる勇気がまだない。
でも、クロウやシルヴィーナに叱られることはないし、アルトリウスさん達にも叱られることはない。
たまに「音彩が私じゃなくてティリオさんに似て美人になったらならなぁ」と呟くと三人がかりで褒めちぎられる。
これは慣れない。
三人に一回鏡とかで自分の顔見ろといったら「コズエ (コズエ様)こそ鏡を見ろ (見てください)」と言われれた。
見ても、若い頃のお祖母ちゃんによく似た顔しか映っとらんがな。
まぁ、多少はお母さんにも似てるけどね。
あーあ、美人なお母さんに似たかったなぁ、若い頃のお祖母ちゃんは愛嬌あるけど、私は愛嬌ないし。
そんな風に黄昏れていたら、冬がやって来た。
『冬ですよー』
『雪ですよー』
相変わらずの雪だ、と思って居たらドミナス王国の馬車がやって来た。
あれー何かあったのかなぁと、思ったらマリア様達とマルス君達がやって来た。
エリザさんの腕の中にはシャルル君がいる。
「何かあったんですか?」
不安になって私はマリア様に尋ねる。
「いや、何もない。が、ここ数年ルキウスの件でカーリャとメルディがこの森に来られなかったことがこの前の件で溜まっていて冬になった途端爆発したのだ、森に行きたいと」
「秋になら寒くなくてよかったのに……」
「全くだ、だが秋は収穫で忙しい時期というのを二人は知っていたから我慢していた、だが冬ならすることがほとんど無いだろう、と暴れたのだ」
「あははは」
笑うしかないや。
「寒いでしょう、皆さんどうか来賓の館にお入りください」
「ああ、そうさせて貰う」
「クロウ! エリザ様たちが寒くないようにして」
「わかった」
クロウは何かバリアみたいなのをエリザさんの周囲に張ってそのまま来賓の館へ案内した。
メルディちゃんとカーリャちゃんはキャッキャとはしゃいでいた、うん子どもだね、やっぱり。
「メルディ様、カーリャ様は確か婚約者いるわよね」
「はい!」
「ええ!」
「……随分と早いわね」
「これくらい王族ならふつうですわ!」
「ええ、ふつうですわ!」
「へ、へぇ」
シャルル君もこの位の年になったらご令嬢と婚約するのだろうか。
しかし、ルキウス君の問題がどう転ぶかで話しがかわるだろう。
それ位、色々とドミナス王国はちょっと今危うい。
「ここに来るのはルキウス様には内緒?」
「勿論!」
「だって未だにネイロ様に夢中なのだもの!」
「は、はぁ」
そろそろ懲りてくれ頼むから。
「おとうさまもおじいさまも、シャルルを王太子にしたほうがよいかも、って」
「シャルルもまだあかちゃんなのに、かわいそうよね」
「……」
まぁ、シャルル君にも同情する。
生まれて間もないのに、兄のしでかした事を自分が拭わねばならぬ未来が待っているのだから。
「カーリャ様! メルディ様!」
「「ネイロ様!」」
来賓の館でくつろいでいるのを私が眺めていると音彩がやってきて、カーリャちゃんとメルディちゃんを抱きしめた。
「こんな冬になりたての時期にどうしたんです⁇」
「今までおにいさまのせいであえなかったから、あいたくて!」
「はい!」
「そう……ごめんね?」
音彩はばつ悪そうな顔をした。
「ネイロ様はわるくありません!」
「わるいのはおにいさまです!」
「おにいさまがネイロさまのいやがることばかりするからいけないんです!」
「おにいさまが、ネイロさまのたちばをかんがえずこうどうするからいけないんです!」
「……気づかってくれてありがとうございます」
「「いいえ! だいすきなネイロさまのためですから」」
カーリャちゃんとメルディちゃんを見て思う。
ルキウス君、恋は盲目なのかね?
あんな小さい……六歳位のカーリャちゃんとメルディちゃんが音彩の嫌がる事を理解し、立場も理解してるんだぞ。
君の頭はカボチャかね?
「やれやれ、ルキウスの件は頭が痛む」
マリア様はそう呟かれました。
「アレでは利用されてしまうぞ、それでは王とは呼べぬ。早い内に矯正しなければ」
「ああ……実際利用されかけてましたもんね」
「うむ」
私はため息をつく。
「ルキウス君がこのままなら、シャルル君が次の王太子の可能性が高いですよね」
「そうだな、だがそれも仕方ないことだ。王族に生まれ、その意味を理解できぬなら廃嫡して臣籍降下したほうが良い」
「マリア様……」
どこか苦く苦しい表情で言っている。
「こんな場所で立ちっぱなしもなんですから、お茶にしましょう」
「良いのか?」
「ええ」
私は一度家に戻った。
私は作り置きのタルトを持っていき、お茶も持って行った。
そしてタルトを切り、紅茶をいれる。
小さい子達には砂糖を入れてあげる。
「はい、どうぞ」
「では頂こうか」
マリア様は何の躊躇もなく食べた。
普通毒味が入るんだけど、信頼関係を築けているからかな?
「うむ、美味い。皆も食べよ」
「わぁい!」
「わぁい!」
子ども達ははしゃいでタルトを貰いあぐあぐと食べ始めた。
音彩もちゃっかり食べて居る。
「うん、お母様のタルトは美味しいわ!」
「しばらくは三時のお茶用のお菓子の準備が必要ね」
「私手伝うわ!」
「ありがとう、でも余分に作らないといけないのよ」
「どうして?」
「シルヴィーナならともかく、クロウが提供するなら余分に作らないとふて腐れるのよ」
「あー……クロウおじちゃん、お母様の料理大好きだもんね」
「でも、冬場だからシルヴィーナ達に任せるわ、クロウに任せると色々面倒だもの」
「面倒で悪かったな」
「うぎゃ!」
クロウが背後に立っていて、私は奇声を上げる。
「驚かせないでよ」
「ちょっと、報告だ、我はルキウスの矯正のために協力を求められた、なのでしばしば村を留守にする、何かあったらシルヴィーナとアルトリウス達に出るよう言っておいた」
「エンシェントドラゴン様申し訳ない……」
マリア様が頭を下げる、続いてマルス君も頭を下げ、シャルル君を抱いたままエリザさんや、アンネさん、マーガレッタさんも頭を下げた。
「努力はするが性根が代わらぬようだったら諦めよ、我にもできないことがあるのでな」
「いえ、ご協力感謝致します」
マルス君はそう言った。
王族も色々複雑だなぁ。
こりゃ、うちの子や村の子を嫁や婿に外に嫁がせるのは無理だろう。
うん。
一人納得する私だった──
ルキウスに改善の兆しが見られないからエンシェントドラゴンであるクロウが頼まれたのですが、クロウでもできない事はあります。
流石にねじ曲がった性根をまっすぐにするのはかなりキツいので基本はそういう輩は脅して近寄らせないようにするのが普通です。
カーリャと、メルディは秋は忙しいと覚えていたので冬になった途端欲求爆発しました。
音彩たちがいる村に行きたいと、二人には色々我慢させたので親達はそれを了承するしかなかったのです。
あと、梢は自分の顔に自信が全くありません、なので子ども達が夫達(美形or美人)に似て欲しいと思って居ます。
が、夫達である、アルトリウスやアイン、ティリオからすると梢は充分美人かつ愛らしく愛嬌もあるので女の子である音彩は似て欲しいし、なにより梢には自覚して欲しいと思ってます。
多分無理でしょうが。
最期に、梢は色々トラブルが起きるのが分かっているから村の外にはうちの子ら出せねーやと思って一人納得しています、ルキウスの件が相当だったので。
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