梢の仕事、クロウの仕事
フィリアとファルスの結婚式が夏の間に行われることが決まる。
梢はそのためのドレスなどをクラフトでつくりあげる。
そして試着してもらったあと──
フィリアちゃんとファルスさんの結婚式は夏の間に行う事が決まった。
なので、私はドレスとスーツを作る。
クラフト能力で。
二人のサイズは寸法済みなので、作るだけ。
フィリアちゃんの「おひめさまみたいなどれす」を再現する。
プリンセスラインのドレスでいいだろうか。
某テーマパークにいるお姫様の姿をした方々のドレスを思い出しつつ、私はクラフトで縫い上げる。
「できた!」
純白のプリンセスラインのお姫様のようなドレス!
コレで満足してくれなかったから、縫い直そう。
ファルスさんのスーツは司祭風の模様を編み込んで入れてある。
「フィリアちゃん、ファルスさん!」
温泉帰りの二人に声をかける。
「おや、コズエ様、どうなさいました」
「こずえさま、どうなさいました?」
「ドレスとスーツが完成したので試着してくださればと」
「もうできたのですか⁈」
「ほんとう、こずえさま!」
「気に入らなかったら手直しだけじゃ無く色々しなきゃいけないから試着して貰えると嬉しいです」
「ファルスさま、いこう!」
「はい、フィリア」
仲良く手を繋いで二人は工房へやって来た。
「こちらがドレスとスーツになります」
「まっしろ……! でもおひめさまみたい!」
「良く見たらデミトリアス神の描いた紋様が編み込まれている! コズエ様、本当にこのような素晴らしいものを来ても宜しいのですか?」
「うん、いいですよ」
「ありがとうこずえさま!」
「ありがとうございます、コズエ様」
「いえいえ」
問題は無かったので、ついでにもう一着を見せる。
お色直し用だ。
「わー! きれいなみずいろ!」
「神官風にしてくださるとは……」
「まぁ、お色直し用だから結婚の誓いが終わったらこっち着替えて宴会って流れですので」
「何から何まですみません」
「いえいえ」
そうして出て行く二人を見送ると、私はドレスをマジックボックスにしまった。
万が一誰かの手で汚されては鳴らないからだ。
そんなヒトいないだろうが、子ども達が汚れた手で触りかねない可能性もある。
しっかりとドレスを保管して外に出るとクロウが現れた。
「うわぁ⁈」
「何故そこまで驚く」
呆れられるが、ドア開けていきなり誰かいたらびっくりするよこれ!
「だって、開けたらいきなりクロウいたんだもの」
「そうか」
「それより話がある」
そう言って私のあの小屋を指さした。
ああ、つまり、内緒話か。
私は頷き、そのまま小屋に向かった。
「──で、話って何?」
「ガネーシア王国だ」
「ああ、ファルスさんとアンドリューさんとフィリアちゃんの祖国?」
「そうだ」
「どうなったの?」
「我が警告したのにもかかわらずこの森に向かって進軍を開始している」
「へ⁈」
「聖女は王太子と結婚するのが慣わし、だがこの王太子ド屑」
「oh……」
クロウがド屑と言うなら相当なんだろうな。
「ついでに国王と王妃もそこそこの屑だ」
「oh……」
マジか、屑しかおらんのか。
というか前処分したとか言ってたのに、まだ隠れての?
本性隠すのうまいね、褒めてないけど。
「ただし王弟──公爵はまともだ、我の言葉を信心深い者達伝え、森に手出しをしないようにしているが、国が屑過ぎる」
「はぁ……」
うーん、公爵様に国ついで貰えないかなぁ?
「なので、今公爵と交渉し、ドミナス王国とブリークヒルト王国とムーラン王国の軍達と協力して城を攻めている最中だ」
「行動が早い」
「そうだろうな」
「で、国はどうなったの?」
「国王、王妃、王太子達一同を捕縛、幽閉処分にした」
「幽閉か……」
「一時的にな」
「アッハイ」
つまり、これから本番の処分があるんですね、分かりました。
聞きません。
「ただし、まだ国の情報は軍には届いていない」
「なるほど」
「と言う訳で我が軍を一掃してくるから、褒美の甘味を所望する」
「あーはいはい、分かりました」
それが欲しかっただけじゃないんか?
と首をかしげる私。
小屋を出てクロウを見送る。
軍関係者の人達、可哀想だけど無能なトップに従った結果だと思って諦めて。
とだけ思って私は家に帰る。
そしてクロウ用のホールケーキをいくつか作る。
ついでに子ども達やアルトリウスさん達の分も。
「お母様どうしたの? 何かお祝い事?」
音彩が帰ってきて私に言う。
私は苦笑して──
「クロウが甘味所望してきたから家族の分も作ってるのよ」
「クロウおじさま、ズルい!」
「今日は苺をたっぷりのせた苺のケーキにしたわ」
「わぁ、大好き。ありがとうお母様!」
「おおっと」
こけないように、音彩を抱きしめる。
「こーら、料理中のヒトに抱きついたらだめよ」
「あ……ごめんなさい」
「次は気をつけるのよ」
「はい!」
「何、この甘い匂いは……ケーキ⁈」
「本当だ! ケーキだ!」
晃と肇も戻って来た。
それに続くようにアルトリウスさん達も戻って来て私達はご飯を食べてから苺のホールケーキをカットして食べた。
それが終わると私はクロウの元へと行った。
正確にはクロウの屋敷に。
鍵は予備のを預かっているので持って行く。
屋敷に入るとまだいない。
しばらく待っているとクロウが戻って来た。
「全く馬鹿共の相手は疲れる、救いようがない」
あ、これ相当色々あったねぜったい。
「クロウ、ご所望の甘味持ってきたけど、食べる」
「寄越せ、食わぬとやってられん」
私はケーキやタルト類を広いテーブルに並べた。
クロウは齧りつくようにケーキやタルトをバクバクと食べていった。
一応カットは入れておいて良かった。
でも20個は食いすぎだと思う、作った私が言うのもアレだけど。
食べ終えたクロウに紅茶を渡すと一気の飲み干した。
「ふぅ」
「そんなに酷かった?」
「酷かったな」
「行かなくて良かった? 私」
「当然」
クロウがそう言うならそうなんだろうな。
「処理が色々と大変だった」
「ああ、そうなんだ……」
クロウはため息をついた。
私は行かなくて良かったと安堵した。
「コズエ、気にするなよ」
「はーい」
私はそう返事するしか無かった──
本性を隠していた連中が本性出したようです。
クロウは本性を隠しているのを薄々感じていたので実はちまちまガネーシア王国に行っていました。
結果このような事態に。
軍を動かすのはちょっとブリークヒルト王国、ドミナス王国、ムーラン王国とやりとりしていたので時間を消費してしまったので、軍がこっちに来ちゃったという感じです。
伝書鳩なりなんなり飛ばせばいいのですが、クロウは面倒なので潰しました、軍を色んな意味で。
ちなみに話を聞いて逃げ出した兵士達は追っていません、戻って捕まるか、何かあるかのどっちかでしょうし。
梢は甘味を作ったり、裁縫したりが仕事の一部に見えますが、クロウがそうしています。
梢の手を汚す必要は無いと思っているからです。
梢はスローライフが仕事、汚れ仕事は自分の仕事がクロウの考えです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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