14年目の冬~他の村について~
秋が終わり、貯蔵庫が増え、作物だらけという状況になっていた。
冬に貯蔵庫の中身を少しでも減らそうと梢が画策していると──
「お供え物、お供え物っと」
最近忘れていたお供え物をしてから部屋を出て畑に戻る。
実りの秋だから収穫物が無数にある。
しかし、問題が一つ。
貯蔵庫が増えていく一方という現実。
どうしたものかと頭をひねるが、こう言う事が苦手な私では思い突かない。
「もうちょっと売りさばく?」
と、提案してみた。
「そうですねぇ、このままだと村中が貯蔵庫だらけになってしまいかねませんしね」
「確かにそうですなぁ」
シルヴィーナとロッズさんが頷く。
「ムーラン王国と魔族の国に掛け合ってみるか」
「ブリークヒルト王国にももう少し収める量を増やしていいか掛け合ってみましょう」
などなど色んな会話が飛び交って、私はクロウにつまみ出される。
そして畑に戻り収穫する。
「さてどうなる事やら」
そして販路なども拡張したりしていると──
『冬ですよー』
『雪ですよー』
14年目の冬が訪れた。
この時期は私も基本農作業はしない。
ほとんど雪かきと畜産に追われる毎日だ。
あと子ども達の育児。
子ども達はまだ7歳なのにしっかりした性格をしている。
大人顔負けな所もある。
が、子どもといったらまだ子ども。
そんな子ども達はクロウの元で勉強中。
他の子ども達もクロウの元で勉強中。
してあげられることはこれ位だ。
「クロウ、今休憩入る?」
「入る所だが?」
「皆にお菓子を持ってきたの、良かったら食べて」
各種類のケーキをアルトリウスさん達と運び入れる。
「「「「わー!」」」」
「お母様、誕生日じゃないのにいいの⁈」
「お父様、これ食べていいの⁈」
「一人二切れまで、食べていいわよ」
「「「「わーい‼」」」」
子ども達は歓声を上げてケーキをねだる。
私はケーキを配りながらクロウにもケーキを配る。
「クロウはショートケーキとチョコケーキね」
「分かっておるではないか」
「そりゃね」
と返しておく。
子ども達はケーキを頬張り、嬉しそうに食べながら言う。
「冬の間は持ってきてくれるの? コズエ様!」
「皆が頑張っているならたまにはね」
「わぁい!」
「嬉しいなぁ……!」
「後でお家の方用のケーキも配るから」
「「「「わーい‼」」」」
また、歓声が上がる。
「いいのか梢」
「こうでもしないと、食料庫もアイテムボックスもいつまで経っても減らないのよ」
クロウに対してそう返事を返した。
実際問題そうなのだ。
販路を拡大しようが、国に献上する量を増やそうが、年々収穫量が何故か増えていくので減らすにはこちら側も消費するしかないのだ。
後で、役場で冬祭りもとい鍋祭り企画して貰おう。
そんな事を考えて帰る子ども達にケーキが入った箱を手渡した。
「貯蔵庫の中身が減らない」
役場に来た私は気まずそう言った。
「確かに減りませんね」
「そうですなぁ……」
「なので、鍋祭りを開催する」
「鍋祭り」
「鍋に合う作物をぶち込んで煮込む祭りよ」
「そ、そのままですね」
シルヴィーナは苦笑した。
「飢え死にするよりはマシだけど、貯蔵庫が満杯なのが増えるのはどうにかしないといけない!」
「確かに……」
「と言う訳で、鍋とかの準備宜しく、鍋に合う作物と肉集めてくる」
私はシルヴィーナ達の返事を待たずにそう言って役場を出た。
その五秒後、クロウにとっ捕まった。
「全く、お前はそうやって動くから心配なのだ」
「なんじゃいクロウ」
「肉も、合う食材も我が見繕う料理も我が行う」
「え」
クロウの言葉に驚く私。
「もう我が料理することがバレたのだ。隠す理由がない」
つまり料理しない理由がないってこと?
「分かったらお前はしばらく家でのんびりでもしてろ」
首根っこを掴まれて、家まで運ばれる。
「クロウ様! と、コズエ? どうしたんです?」
アインさんが出て来た。
「妻が何かやらかさんように見張っていろ」
「分かりました」
ぺいっと投げられ、アインさんにお姫様抱っこされる。
「取りあえず部屋に戻りましょうか?」
「お願い」
そう言ってリビングに戻り、ソファーに座らせて貰う。
私はつかれてたので横になった。
「全く、クロウの過保護っぷりには困ったよ」
私はため息をつきながら述べました。
するとアインさんが──
「コズエが心配なのですよ、前の愛し子の件もあって」
「うん、分かってる分かってる」
前の愛し子の件はクロウに影をのこしているのは知っている。
でもさ、私比較引きこもりで、森の外にもあんまりでないのにここまで過保護なのはどうかと思う。
むしろ、私より、私の子ども達を心配して──
私は立ち上がり、村の外へと向かった。
「コズエ⁈」
アインさんが何か言ってたが、それどころじゃない、村の外へ──
「アインの奴、止め損なったな」
「どうします、この方々」
クロウとシルヴィーナが賊っぽい人達を簀巻きにしていた。
「クロウ、その連中は?」
「この森の噂を聞きつけてきた少し離れた場所の村の連中だ。どうやら村が不作だったらしく食うに困って来たようだ」
「話合いならともかく奪っていこうとするので流石にそれは見過ごせずボコボコにして簀巻きにしました」
私は屈んでじっと見つめる。
するとリーダー格らしい男が声を上げた。
「やるなら俺をやれ! こいつらは俺に従ってきただけだ!」
「うーん、ねえクロウ。お鍋の準備は」
「これからだ」
「じゃあ、この人達村の中に入れてあげて」
「「は⁇」」
シルヴィーナとクロウがすっとんきょうな声を上げたが私には私のやり方があるのだ。
だから、平和主義とは行かないが──
事情次第では鬼にも仏にもなろう。
森の外の村から作物の略奪に来た者たちが現れました。
クロウとシルヴィーナはやっちまうか、モードでしたが、梢の出現でできなくなりました。
梢は事情を聞いて対応することに、次回どんな判断を梢は下すのか──
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