王族来訪
梢の元にイザベラ達がやってくることに。
王族にびくびくする梢。
イザベラの婚約者ロランと、正妃マリア、王子マルス、そしてイザベラ達を相手になんとか会話をすることができていた──
『おーい、梢やーい』
夕方クロウおじちゃんの声で目を覚ました。
サクッと料理をして、食事を取って外にでる。
「なに、畑は荒らされてないけど」
『そろそろイザベラ嬢ちゃんが乗ってる馬車がくるぞー』
「ちょー⁈」
慌てて着替える、ブラウスにスカート、ヒールの低い靴。
レトロガーリーともレトロクラシカルとも言える格好になる。
流石にジャージで王族を出迎える勇気は私には無い。
「コズエ様、わー! 綺麗な服! 御姫様みたい!」
「イザベラちゃん……イザベラ様が来るからね、王族の人の前でいつもの格好はちょっと」
「コズエ」
「あ、アルトリウス」
「似合ってる、肉は後で持って行く、では」
そう言って姿を消した。
「その服は」
アインさんとティリオさんがやって来て私を見る。
「自分で作った服なんです」
「お似合いですよ」
「有り難うございます、お世辞でも嬉しいです」
「いや、お世辞ではなく……」
『おーい、梢やーい、入り口まできとるぞー!』
「ああ、今行くから! では、失礼します‼」
私は一瞬で入り口まで走った。
そしてスカートを整え。
やって来た馬車の御者に挨拶。
「ようこそ、始祖の森へ。案内をさせていただきます」
「お出迎えですか、有り難い」
顔を出していた少女が馬車から降りた。
「コズエ様‼」
「イザベラ……様‼」
イザベラちゃんが抱きついてきた。
「イザベラちゃんで良いのよ? コズエ様、だってコズエ様は愛し子なんですもの!」
「い、いやぁ、王族の方に様つけないと……」
睨まれてる、護衛の兵士にめっちゃ睨まれてる‼
「睨まないの‼」
それに気づいたイザベラちゃんが怒っている。
やめたげて兵士さん困ってるから!
「イザベラ、愛し子がお前に様をつけるのは王族の立場を気遣っての事だ、分かってあげなさい」
「そうだぞ、イザベラ。愛し子様を困らせてはならない」
一人はマルス王子だけど、あと一人は誰だ。
二人が馬車から降りてきた。
マルス王子と、ドレスではなく、騎士が着るような服を着た女傑が立っていた。
「初めまして、コズエ様。私はドミナス王国正妃マリアだ」
「は、初めましてマリア様。梢です」
マリア様はにこりと笑うと、声を上げた。
「ロラン王子! 貴方も出て来てはいかがか⁈」
そう言うと褐色肌に、黒髪の少年が出て来た。
「初めまして、愛し子様。私はムーラン王国のロランと申します」
「ロラン様ですね、ど、どうも……」
「それにしてもコズエ様、今日のお召し物素敵だわ!」
「有り難うございます、イザベラ様。イザベラ様のお召し物も素敵ですよ」
「本当⁈ コズエ様が作ってくれたお洋服がとても素敵だったから似せて作らせたの! よかったわ!」
「そうなんですね……あ、ではそろそろ行きましょうか。ご案内します」
そう言って下りてきた方々全員に馬車に乗っていただき、村へと案内する。
「ここが私の作った村です」
「まぁ、ここに来た時はドワーフのおじさま達のお家と、リサおば様のお家だけだったのに!」
イザベラちゃんがめっちゃ驚いている。
「あ、ルフェンー! ミズリー! ラカンー!」
「イザベラだ! あ、この匂いミーアとリーゼも居る!」
「ほんとう、ルフェン⁈」
「そうだぞ、この匂いいるぜ」
流石ルフェンとミズリー、獣人族なだけある。
馬車を来賓の館の前に止めてもらうと、皆が下りてくる。
「今日はこの場所にお泊まりください」
「コズエ様、私達が来ると知って立ててくださったの?」
「そうですよ、イザベラ様」
「コズエ様……」
「あと、あんまり婚約者様を放置しちゃだめですよ」
と小声で言うと、はっとしてイザベラちゃんは婚約者をみる。
微笑んでいるが少し寂しそう。
「ロラン。ごめんなさいね、コズエ様は私達を助けてくれた恩人だからつい」
「いいんだ、分かっているよイザベラ。コズエ様、イザベラを助けてくださり、有り難うございます」
「いいえ、助けたのは私だけじゃないですから」
「どういうことです」
「実は行商をしてる方々が、奴隷を保護したと言って連れてきてくれたんです」
「なんと」
「その行商は?」
「明日辺りに来るかと」
「礼をせねばならぬ相手がまた増えたな」
マリア様はそう仰ると、何か考え事。
「コズエ様ー、作物を収穫できるものはしておきました!」
と、山のように作物を抱えてくるご婦人方。
「あ、イザベラ。コズエ様のサクランボとラズベリーとブルベリー食べたいか?」
「勿論よ!」
「ちょっとまってろよ……ほら!」
貯蔵庫からサクランボとラズベリー、ブルーベリーを持ってきた。
「おお、イザベラ。お前が持ってきた苗と侍女達が持ってきた苗の果物とよく似ている、が、こちらの方が粒が大きいな」
「コズエ様が作ったんですもの!」
「いや、妖精と精霊がいたから……」
『違うよー僕らは手伝い』
『大きくなるように手伝っただけ』
『効能とかは全部愛し子様が耕して水と肥料を上げたからだよ』
いや、それ大きくなったの君らの所為というかおかげでしょ。
とは言わない。
「コズエ殿は流石愛し子。妖精や精霊と対話ができるのですな」
「ま、まぁそれなりにです……」
『謙遜しなくて良いのにー』
『いいのにー』
王族相手なんだからへりくだった方がいいの!
と言いたいが、言う訳にもいかず。
「ところで普段からその格好を?」
「いいえ、イザベラ様達が来るのに、いつもの土に汚れた格好で出迎えるのは失礼だと思い着替えさせていただきました」
「ずいぶん美しいデザインの服だ、何処で購入を?」
「あ、自分で作りました」
「なんと」
マリア様は驚いている。
「ううむ、貴方が愛し子で無ければ我が国の、我が王室の服飾職人として声がけをしている所だ」
「有り難うございます」
デザインを評価されたのは嬉しい。
まぁ、元々好きだった某ブランドの服がレトロガーリーで、レトロクラッシックな服だから良かったのだろう。
その後、村の皆やドワーフの職人を交えて立食会を行った。
外でだが、蟲とかは来ないようにして灯りは前もって買っていたLEDライトでどうにかした。
リサさんとシルヴィーナさんは参加してくれたが、アルトリウスさんと、アインさん、ティリオさんは参加してくれなかった。
ちょっと悲しい。
大人達の大半がワインや焼酎、ビールでぐでんぐでんになってる中、マリア様は平然として私に近づいてきた。
私は秘蔵の梅酒を飲んでいた、だって苺ワインとかは平気だけど、普通の葡萄のワインは苦手だしね、いや自分で作ったのは飲めるんだけど。
ビールと焼酎はドワーフさん用に作った物だし。
ちなみにビールに関しては村の大人達も嬉々として飲んでいる。
貯蔵室でキンキンに冷やしているから温いエールよりも美味しいんだって。
「このような盛大な歓迎感謝する」
「そう言っていただけて嬉しいです」
「だが、参加してない者がいるようだな」
ぎくり
「聞いた話ではダンピールと、帝国に誘拐されてこき使われていたのを逃げてきた者達だと」
私は冷や汗がだらだらと垂れる。
すると、マリア様は笑った。
「何、咎めているわけではないぞ。コズエ様、其方は懐が広いな」
「そ、そうでしょうか」
「ああ、後。私も驚いているがとてもじゃないが吸血鬼には見えないぞ其方は」
「……どなたからそれを?」
「イザベラだが?」
イザベラちゃーん!
頭を抱える私。
「そう悩まなくてもよいではないか、貴方は吸血鬼だが愛し子、それだけだ」
「はぁ……」
「見ていて分かる、コズエ様。貴方は荒事はできるが向いてないぞ」
「……でしょうね」
「そんなコズエ様だからこそ、神々は加護をお与えになったのだろうな」
「それどこ情報です?」
「この国ともやりとりをしているのでな、始祖の森へ行くと言ったら教えてくれたよ」
「はぁ……」
「それにしても、良い村だ。皆が生き生きとしている」
「そうですか……」
「その村を作ったのは貴方だ、誇りに思うといいでしょう」
その言葉に、私は少しだけ自分が誇らしく思えた──
王族だからと萎縮しちゃってます。
ちなみに、梢が来ている服はレトロガーリィ、レトロクラッシックで有名な某ブランドの服をイメージしています。
もし、何のブランドか分かったら拍手を送りたいです。
そして、梢は自分の村を完全な外部の人に評価されて良かったと漸く思えたようです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。




