収穫祭~クロウの隠し事~
秋になり収穫祭をやろうということになった。
が、梢は何か変化がほしいと言い出す。
するとクロウが現れて──
「収穫祭やりたいから準備を手伝って」
「「「お任せ下さい!」」」
秋になったので収穫祭をやりたいと思ってシルヴィーナ達に相談すると即座に返事が返ってきた。
「どんなスープになさるおつもりですか?」
「それに悩んでいるの、いつも通りだと飽きてきそうだから変化が欲しいなぁと」
「難しいですね」
「収穫祭の話か?」
「クロウ!」
「「「クロウ様!」」」
クロウが役場に入ってきた。
「クロウに何か策があるの?」
「まぁな、外へ出ろ」
そう言われたので役場の外に出る。
すると、黒い巨大な蛇をクロウは自分のアイテムボックスから取り出した。
「オゥイエ⁈」
思わず奇声を上げる私、なんじゃこりゃ⁈
「こ、これはブラックサーペント!」
「ブラックサーペント……黒い蛇?」
「超が付く高級食材ですぞ!」
ロッズさんが興奮したように言う。
「見つけたダンジョンに大量にいたのでな、つい狩って来た。取りあえず……」
そう言ってクロウは同じサイズの巨大なブラックサーペントを捕りだした。
「二匹もあれば足りるだろう、今回は梢は作物提供だけでいい、スープは我らがやる」
「え、いいの?」
「いつも収穫祭で無茶しているんだ、たまには良かろう」
うぐ。
無茶してるつもりは無いんだけどなぁ。
そんなこんなで作物提供をするだけで料理には今日は関わってこなかった。
「ブラックサーペントですか、聞いた事くらいなら超高級な分捕まえるのも大変だとか」
「そうなんだ」
「ええ、王族でも食べられる事が少ないと」
「クロウ……」
なんてもの狩って来たんだクロウは。
「此度はクロウ様に任せればいいだろう」
「そうね、作物は全部貯蔵庫から取っていくって言ってたし……吸血鬼組にも配慮していつものスープは作るって言ってたし」
「それなら大丈夫そうですね」
と、アインさんが言うが、私は心配だった。
なぜなら、私はクロウが料理したところを全く、見たことがないからだ。
だからクロウが料理をすると聞いて心配で仕方なかった。
「ねぇ、三人とも。クロウが料理している所、見たことある?」
「……ないな」
「ないですね」
「言われてみるとないですね」
「……凄く不安になってきたんだけど」
げんなりと私は呟いた。
「「「お母様!」」」
遊びから子どもたちが帰ってきた。
「あれ、なんでげんなりしているの?」
「何かあったの?」
「教えてください!」
子どもたちの教えてコールに私は息を吐いて説明した。
子どもたちは最初はぽかんとしていたが、笑顔になっていった。
「大丈夫ですよ! クロウおじ様は料理できます!」
「この間ブラックサーペントご馳走になったよね!」
「うん美味しかった!」
「ちょっと待って聞いてないのだけど?」
私が驚愕して言うと、三人はしまったと言わんばかりの表情で口を手で覆った。
「そうだ、これお母様には内緒だったんだ!」
「何で内緒なの? 怒らないから教えて?」
「……料理ができると思われると、お母様が料理の差し入れしてくれなくなりそうだってクロウおじ様が」
「言ってたの」
「ははははは、クロウめ。よし後で軽く説教だ」
私の感想、何じゃそりゃあ。
である。
なんだ、クロウの奴。
私の手料理欲しさに今まで料理できるそぶり見せなかったのか?
子どもならともかくクロウがやると可愛くないぞ。
そんなこんなで祭り当日。
ブラックサーペントを使ったスープと、ブラックサーペントで出汁を取ったブラッドワインのスープは大好評だった。
ブラックサーペントの肉の焼き肉も大好評だった。
「初めて食べるけど、凄く美味しい……!」
スープを飲み、お肉を食べながら私は呟いた。
「ああ、そうだな。初めて食べるがこんなに美味いとは……」
「まさかこんな美味しいものを食べられるなんて……」
「コズエ様のスープにも引けを取らない……!」
いやいや、ティリオそれは言い過ぎ。
私のスープはコレには勝てない。
それ位、スープも肉も美味しいのだ。
野菜が美味しいのは当然だけど。
ちょっと色々悔しい。
「むー……来年やる時は私も美味しいもの探さなきゃ」
「コズエ、君は無理をするな」
「貴方がそういう時は無理をする時です」
「だったら、肉などはクロウ様に仕入れて貰いコズエ様が調理すれば良いでしょう」
「むぅー……」
でも納得いかない。
こんな隠し球もっていたなんて。
なんか許せない。
私は再度スープをスプーンですくってのみ、肉を囓った。
「……来年はそうする!」
すると三人は安堵の表情を浮かべていた。
「「「お母様ー!」」」
子どもたちがやって来た。
食べ終わったのだろう。
「美味しかったみんな」
「うん美味しかった!」
「でも母様のビーフシチューが食べたい!」
「私も!」
この食いしん坊ちゃんたちは。
「仕方ないわね、これが終わったら作ってあげる」
「「「やったー!」」」
「全く、晃達はあれほど口酸っぱく喋るなといったのに……」
クロウは盛大にため息をついた。
「クロウ様? どうしました?」
「我が料理を得意なのが梢にバレた」
「まぁ」
「おかげで『当分デザートとか作らない』と言われたんだぞ全く」
「それは黙っていたクロウ様にも非があるのでは」
「むぅ」
クロウは面白くなさそうな顔をする。
「最初からどうして言わなかったんですか?」
「……言ってたら梢は一々我に料理を提供しようとしないだろう」
「そうでしょうか?」
「そうだとも」
クロウの言葉にシルヴィーナは何となく納得がいっていない顔をするが、クロウの渋い顔をみて、思い直しているようだった。
「後で私と一緒に謝りに行きましょうクロウ様」
「……そうする」
クロウとシルヴィーナが私達が家に帰った時に謝りに来たので当分作らないのは無しにしてあげた。
反省してるみたいだしねクロウが。
実は料理が得意だったクロウのお話。
そりゃそうですよね、愛し子がいたときは二人や複数で旅をしていたのですから料理はできてある意味当然です。
ただ、甘い物はあまり作らなかったので、梢に作ってほしくて料理できないふりしてました。
他の料理も梢の料理は美味しいので。
子どもって言っちゃダメな事も言っちゃったりしますよね、たまに!
梢は梢でふてくされましたが、クロウが謝罪したのもあり溜飲を下げました。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
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