祭りの後~梢が思う事~
祭りの翌日後片付けに皆が追われるなか、梢はいつも通り畑仕事などをやっていた。
そこへ、子どもたちが帰って来る。
土臭い匂いに気付き、問いかけると──
お祭りの翌日、みんな片付けに追われていたので、畑仕事とかはアルトリウスさんやアインさん、ティリオさん達と収穫などを行った。
子ども達はクロウの元で勉強して同じ吸血鬼の血を引く子らと遊んでいた。
「「「お母様!」」」
遊びから帰って来た子らを抱きしめる。
ちょっと今日は土臭い。
「土の匂いがするけど何をしてたの?」
「小さな畑を作ってブラッドフルーツの種を植えたの!」
「僕らで大きくするからお母様は手を出さなくていいよ!」
「寧ろ手を出しちゃだめ!」
「はいはい、分かっていますよ。それより土埃で汚れているからお風呂に入って、服は魔道洗濯機の中に放り込んで、着替えは持って行く、いい?」
「「「はい!」」」
三人は元気よくお返事をして自室に戻ってから風呂場へと向かった。
「七歳にしてはしっかりしてると思ったけど子どもっぽいところもちゃんとあるのね」
私は微笑ましくて笑ってしまった。
「微笑ましいものでもないぞ?」
「うわ⁈ アルトリウスさん⁈ びっくりした……」
ぬっとアルトリウスさんが声をかけて来たのでビックリした。
「あの子達は君がいなくなった時の事を考えて行動しているぞ?」
「うぇあ⁈」
なんと言ったアルトリウスさん⁈
私がいなくなった後の事⁈
「生き飽きた後に神の元へ帰ってしまったらこの森は立ちゆかなくなる。そうならないように今から精霊と妖精の力を借りつつ独自に畑の作物を育てたりしているようだ」
「な、なるほど」
予想外の言葉に私は頷くだけだった。
「まぁ、君がいなくなるということは本当に生き飽きるということだろうからな」
「多分相当生きると思うけど」
「確かに」
アルトリウスさんは笑った
私もつられて笑う。
「何の話をしているんですか?」
「子ども達の話が聞こえたような」
アインさんとティリオさんもやって来る。
私とアルトリウスさんは説明した。
「……子ども達にそう言った心配をさせてしまうとは」
「愛し子って便利ですけど厄介ですよね」
「確かに」
確かに、愛し子の能力は便利だ。
神々に愛されている故の利便性はある。
だが、それは私の記憶があってのもの。
もし、記憶を失えば──
「……ちょっとクロウに相談してくる」
「分かった」
「遅くならぬように」
「行ってらっしゃいませ」
アルトリウスさん達、夫達に見送られ、クロウの屋敷に向かった。
「クロウ居るー?」
『なんじゃー梢』
「ちょっと相談事ー!」
と言うと扉が開いた。
私は中に入る。
ちっちゃいドラゴンの姿をしたクロウがそこに居た。
『今日は何か貰えるんかのう?』
「はい、アップルパイ」
『おお、有り難いのう』
切り分けてないアップルパイをそのままペロリ。
クロウ糖尿病とかならないのかなぁ。
『儂は病気にはならんよ』
「ああ、そう……」
だから思考を読むのやめーや!
『それで、話したいことっていうのはなんじゃ?』
「聞いたかどうか覚えてないから確認、歴代の愛し子は記憶を持ち越すの?」
『あーそれは持ち越すことは可能じゃ』
「そうなのか」
『というか、歴代の愛し子は記憶を持ち越して生まれておる、だから産まれる場所も選べる』
「そうなんだ」
『誰の子どもで生まれるかも決められるが、そこまで細かく決めた愛し子はおらんの』
「なるほど」
取りあえず、知りたい情報は得た。
「クロウ遅くにありがとう」
『これ位だったらいつでも歓迎じゃ』
「……ところで、伴侶達はどうなるの?」
『契約までした伴侶なら同じように場所などを選べるし、記憶を持ち越せる』
「そっかぁ」
何故か凄く安心した。
生まれ変わっても、また貴方達と。
そんな気持ちがあったのだ。
強欲な私だからそうなってしまう。
私は家に帰った。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「お帰り」
「お帰りなさいませ」
三人が出迎えてくれた。
「悩みは解決したか?」
「うん!」
「そうか、ならよかった」
「ええ、本当に」
「そうですね」
何か三人とも安心してる。
どうしてだろう?
「コズエ、貴方の悩みは私達では解決できないことも多い、だから安心しているのです」
「ああ、そうなんだ」
「だからクロウ様には感謝しております」
「ただもどかしい事もある、君の悩みを私は解決できないのだと」
「……」
まぁ、仕方ない理由がある。
私はこの世界に生まれた者じゃない。
別世界から来て吸血鬼になった者だから。
それを知っているのはクロウと神様達だけ。
他の人達は知らない。
だから──
「うん、ごめんね。相談できる内容だったら相談するから」
「そうか」
「それを待ちましょうか」
「待ちますとも」
良心が痛むが仕方ない。
今は相談できる内容はないのだ。
「コズエ」
「何ですか、アインさん」
「私たちに相談できなくとも、一人で抱え混まないで」
「……はい」
アルトリウスさんとティリオさんも頷く。
私も頷き返した。
私には勿体ない位良い夫達。
来世でも、と思って居るのは私だけかもしれない──
「なんとコズエがそのような」
クロウの屋敷でアイン達は驚いていた。
『で、お主等はどうするんじゃ?』
「勿論来世でも私達はコズエの側に」
「ええ、共に生きますとも」
「当然です」
『それなら安心じゃの』
クロウは梢の夫達の言葉に安心したように目を閉じた。
梢の生に区切りがついた時、また再び歩みだそうとする時。
梢はきっと、愛する夫達を選ぶだろう。
夫達は梢を求めるだろう。
それはきっと、始祖の森で行われるだろう、きっと。
梢は外の世界を知らない、知ろうとしない、だからきっと森でまた、畑を耕し、畜産に追われ日々を過ごすだろう。
良い生かと聞かれれば分からないが、クロウは梢が次の生がもしあった場合再び幸せになるのだけは確信していた──
梢の悩みの話です。
まだ梢は色々バレてるの知りませんからね。
だから知らないと思って色々悩んでしまうのです。
生まれ変わる話が出ましたが、クロウの予想通りだとおもいます。
梢は始祖の森で生を終え、始祖の森で産声を上げるでしょう。
その際は、夫達もともに。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




